12.

~1年後~


エレミアはギルドカウンターに立って受付嬢に


「まだ、ロイス帰ってこないの? 国王陛下の依頼に何日かかっているのよ」


「エレミアはん、どうしました」 


「アルナ、今日は何するの」


「これじゃあ、疑似バディーパーティーですわ、なぁ、エレミアはん、これはまずいやろ」


(あかん、これは完全にやる気ゼロやわ、どうする、ここは、一旦仕切りなおした方がええな)


そう考え、アンナはエレミアに、提案する事にした。


「お城に行きまへんか、国王陛下にあんさんを帰してもらいましょ」


そう言うと、エレミアは渋々納得してくれた様でお城に案内してくれる事となった。

お城は王城の中にあるので馬車に乗り移動する事にした。

国王様のいる部屋の前で待機しているとメイドさんに呼ばれ中に入る事にする事にしたのだが、そこには、国王陛下がいた。

国王様が口を開く前に、お付きの騎士が、喋りだしたのだが、 何を言っているのか分からない上に、偉そうな口調だった。

だからつい、思わず言ってはいけない言葉を口に出ししてしまった。


「私らはそんな事は聞いてない、あんさんを帰して欲しいだけやわー」


そう、言うと国王様は、少し考えてから、こう答えてくれた。

しかし、その内容は、予想だにしないものであった。

まさか、こんな事になるとは思っても見なかったのだ。


「え、あんさんとエリーゼ王女が行方不明?」


それは、流石のエレミアも驚くしかなかった。

何せ今のロイスはもう優秀な、精霊術師だ、その彼がエリーゼ王女と行方不明だなんてあり得ない事だからだ。

一体どうなっているのかさえ、分からない状況であるので、私達は、エリゼのお父上である国王陛下にこう聞いた。


「エリーゼと何故バディーパーティーにさせたのですか? ロイスと彼女がどんな関係課は分かっているはず」


元婚約者同士だ、当然知っているはずだと思ったので聞いて見る事にしたのだ。

すると案の定答えは予想通りだった。

(やっぱりね、でも、何故そんな事を)

と思った矢先だった。

彼は、私にこう言って来たのだ。


「親として、彼らに仲直りさせてやりたかった、だからこそ、バディーパーティーを組ませたのだ」


「そのせいで、ロイスが死んでもですか」


この時のエレミアは感情的に成っていた。

きっとエリーゼの事だ、ロイスを前衛にするだろう?

そうなれば確実に死ぬ可能性があるからだ。

(もう、これ以上死人を出したくない)

そう思ったからこそ出た言葉だったのだが、国王には逆効果だった様だ。

何故なら、国王が言った言葉はあまりにも非道な言葉だったからだ。


「わがむすめのためにしぬのなら、元婚約者としても栄誉な事だろう」


何を言っているんでしょうか?

エレミアが殴りかかろうとすればアルナが


「エレミアはん、ダメや」


「この腐れ父親、ロイスが死んだら、なんていうな!!!」


エレミアは珍しく、吠えていた。

(私が、もっとしっかりと引き留めておけばよかった)

ロイスがエリーゼに認められたくて城に行ったあの日、もっと強く引き止めていればこんな事にはならなかっただろうと思っていたのだ。

(あの時、無理にでも、ついていけば良かった)

今更後悔しても遅い事は分かっていた。

それでも悔やまずにはいられなかったのだ。

そもそも、この事態に陥った原因は何なのか?

それは、この1ヶ月の事であった。


「ロイスの事で話がある」


エレミアはアルナに


「出かける準備をしておいて」


そう伝えるとお城に向かった。

エレミアが城につくと国王陛下が走ってきた。


「見つかったんだ、エリーゼとロイスが」


それは一瞬喜ばしい事だろうか?

私は不覚にもその知らせで舞い上がった。


「迎えに行きましょう、何方にいるのですか」


「それは無理なんだ」


それは、どういう事でしょうか?

この期に及んで、まだ隠し事をするつもりなの?

私の中で、何かがキレた音がした瞬間だった。

そして、気が付くと私は、国王の胸ぐらを掴んで、叫んでいた。


「おい、クソ親父、お前は、何を考えているんだ、私達を馬鹿にしてるのか、もういい、アンタなんか、ぶっ飛ばしてやる、今直ぐに、国王を辞めると言いなさい、そうじゃないなら、アンタをぶん殴ってやる」


そう言うと私は、国王から手を離し、思いっきり殴ってやろうとした、すると


「魔王ロイス・バルドアの使いとして、エリーゼ・シェヴェロウスキーが来たからなんだ」


今なんて言ったの?この人は……。

(私は耳を疑った、確かに、この人達は、エリーゼ様の仲間と言ったけど、何故?何でなのよ……意味が分からないわ)

そんな、私の心の声が届くわけもなく、目の前の人は、私にこう言ったんだ。


「ロイスは魔王に成った、だからエリーゼも、寄り添うそうだ」


……。

魔王にロイスが?!

一体どういう事よ……それに、あの気の強いエリーゼ様が、ロイスについて行った。

それはそれでショックだろう。

それよりも、


「魔王? ロイスが、あんな気の弱い、精霊術師が?」


そんな馬鹿な!

(有り得ない、あいつは、私よりも劣る、ただの無能でしょ)

それが私の本気で思っていた感想だった。


「それに、エリーゼ様はロイスを婚約破棄した張本人なのよ」


可笑しい、何かが可笑しい……。

婚約破棄した本人に罪の意識があり、ロイスの魔王化も全て自分のせいだと思っていたのなら、エリーゼがついて行くのも納得である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る