第4話 今日から始める 自己紹介

 じゃ、先ずはこれからいやでも顔をつきあわせる奴らの名前を覚えとけよ。

という言葉と共に始まった自己紹介は、


「では私から、私の名はアイリス・オーランド、アイリスとお呼び下さい」


 オーランドとはこの国の名前だ。

このオーランドを名乗れるのは辺境伯、公爵及び、元王族もだ。

つまりはそれなりの貴族ならば誰でも名乗れる。

しかし名前・家名・オーランドとつくのが一般的で有り、ただオーランドだけならば、それは現王家の──


「我が父ユリウス・オーランドの好意により私はこのような機会をもらいました。故にその好意に尽くし学生生活を全うすることを第一としています。皆様何卒よろしくお願いします」


 直系以外有り得ないのだ。

事実彼女もそうらしい。

続けて、恐らく護衛と思われる二人が自己紹介して、注目されるであろう四人目は無難にこなしていく。

そうして、三段目のラストまで終え、次のオリエンテーリングのための移動をする気の早い者を抑えながら、


「これで全員……ってわけじゃあない自己紹介頼む」


 その言葉聞いて彼に気がついていた五人すらも驚く、まああたりまえなのだが、


「では、自分から。辺境の村出身のアレンです。ギフトは友情召喚フレンドサモンです。世間知らずなので何かご不快なことがあるかもしれませんが、何卒よろしくお願いします」


 続けて、魔術を解いて起立したイリスがまるで恋人の親に挨拶するかのようなお辞儀をし、


「皆さん初めまして、イリスと申します。アレンさんの求めに応じ馳せ参じました。学生ではありませんが、マーリン様のご厚意により共に学ぶ事となりました」


 どうぞ、よろしくお願いします。

とお辞儀をして着席する。


「イリス?……まさかね」


「誰だよ、あの美少女」


 もはや、収拾がつかないほどの騒ぎとなっている。

それを止めたのは、


「はいはい、質問は後々。次はオリエンテーリングだ、各々訓練着に着替えて訓練室Ⅲに集合な」


 担任だ。

むしろ場を支配するための一環としてやった可能性すらある。

狡猾なようで、しかし油断するなと忠告するかのような迂遠な気遣いという物だろうか。


「着替えは、それぞれ男女に分かれてだぞ。誰か、イリスを案内してやってくれ」


「あの、えっと?」


(大丈夫だから)


(はい……)


力なくうなだれながら女子達について行くその様は、まるで騙された子供のようなそれだった。

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