第25話〜超常と幻影⑥
…………。
「見えてるのと、対処できるのは別だよ、ね!」
じわじわと距離を詰めてきていた毒糸が、一斉に迫ってくる。
正直強度は大した事ないけど、魔導具で出された毒だから切っても切ってもきりがない。
どうも2本で一対の魔導具みたいで、切ってもどちらか一方から糸が伸びて繋がってるんだよね。
ちょっと厄介かも。
今の所ナイフ2本につき毒糸が一本だけど、最初に投擲してきたやつ以外にも至る所に仕込まれてる。
たぶん慣れた頃に一気に手数を増やしてくるのかな?
それとも予備、か。
何はともあれ暗殺者は予備手段を何個も用意しておくもの。
下手に様子見して手の内を探るより、一気に仕留めておくのが鉄則。
隙を見て距離を取るか、障害物の影に入って空間越しに切るのが早いかな。
でも…
「どうせ、さっきの技は見られてただろうからね」
空間を越えた斬撃は見たからって簡単に避けられるものでもないんだけどね。
念の為別の初見殺しを仕掛けさせてもらうよ。
…………。
ここはいわば私のホーム。
攻めと守り、どちらが有利かって言ったら圧倒的に後者。
だっていくらでも備える事ができるから。
もちろん城で働く人はいるから、限定的になるけども。
何日も前からここで働く私が、何の仕込みもしてない訳がないよね?
「んなっ!?」
私が投げたナイフが石畳の脇に並ぶ柵の一つに刺さる。
すると網目状に、無数の艶消しされた黒いナイフが私たちを囲い込むように発射された。
そしてそれらのナイフはそれぞれがぶつかり合い、連鎖して、不規則に飛んでは弾ける。
これは予め城の至る所に仕込んであった罠の一つ。
というか連日続く着せ替え人形のストレス発散に、夜鍋して作りまくったピタゴラスイッチ的なやつ。
無駄に凝ってて効率的じゃないけど、だからこそ予測不能で避けづらいでしょ?
「くっ!この!なんだこれ!?」
さすがの反応速度で飛んでくるナイフを避けてる。
でも不規則に飛び回るナイフ、それもこんな灯りもまともに届かない庭で避け続けるなんて難しいよね?
けど、それはただの目眩し。
本命は足元だよ。
「うわぁ!?」
乱れ飛ぶナイフに誘導されて追い込まれた先は庭に生えた並木。
そしてそのすぐ足元を踏み抜いた刺客は、一瞬の浮遊感を感じた次の瞬間には網に包まれてぶらぶらと吊り下げられる。
モンスター捕獲用の網を改良して作った捕獲罠。
普通の刃物じゃ傷一つ付けられないよ。
「くそ!なんだよこれ!こんな罠……くそ!」
うーん、ストレス発散の為とはいえ本気で作った罠にこんなに綺麗に掛かってくれると気持ちいいね。
作った甲斐があったね。
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