第24話〜超常と幻影⑤

…………。


「仲間になって欲しいならさ」


「お、興味ある?」


「これ、解いてくれない?」


そう言ってゆっくり迫って来ていた極々細い糸を両断する。


一本や二本じゃない。


私の事を繭状に捉えようと段々狭まってくる、先ほど切ったものと同じ毒の糸。


どうやら遠隔でも操作できるみたいだね。


出所はあの散らばったナイフの柄の部分か。


飛んできたナイフ以外にも、予め仕込んであったみたい。


合計30本のナイフから極細の毒糸が出てきてる。


切ればいいだけだけど、鬱陶しい。


「あはは、なんだ気付かれちゃったか。よく見えたね。それともやっぱエルフの血が流れてるのかな?」


これはおそらく魔導具だね。


予め魔力を込めておく事で起動する道具。


毒糸を出す魔導具なんてものあるんだ。


細過ぎて空間で把握してなくちゃ見落とす所だった。


毒の種類は?


出るのは一本だけ?


どれくらい離れてても使える?


これはちょっと欲しいかも。


「さてね」


エルフならこの糸も見えるのかな?


そういえばエルフって魔力の扱いに長けた種族だっけ。


生物に限らず万物に宿る魔力を見て本質を捉える、だったかな?


目に魔力を込めてよくよく観察してみれば…


なるほど、この毒糸は魔力で出来てるんだね。


魔力ごと空間で把握してなかったらやられてた可能性もあったんだ。


「まぁエルフだろうと何だろうと別に構わないんだけどさ。仲間になるなら大歓迎だよ。もちろんこのまま敵対するっていうなら、勿体無いけど排除させてもらうけど」


「悪いけど仲間になる気はないよ。こっちは最初から侵入者は全員排除するつもりなんだよね。もちろん無抵抗で投降して、背後関係から何まで洗いざらい吐いてくれるなら手荒な真似はしないよ」


分かりやすく敵対するために、改めてナイフを構えて、一緒に殺意を一瞬だけ放出する。


まぁさっきから隙あらば仕留めに来てるし、睡眠時間が刻一刻と削られてるからちょっとイライラしてたから強めに。


「っ」


うん、フードの下の顔が引き攣ったね。


けど、心を折るまではいかなかったみたい。


「……雇われとは言え、ここで無抵抗に捕まるなんて後でどんな目にあうか分かったもんじゃないんでね。最低でも、君の情報だけでも持ち帰らせてもらうよ」


さっきまでのふざけた雰囲気が消えて、気配が読みにくくなる。


なるほど、さっきまでも自身を弱く擬態してたから誤解したのか。


あと、どうも他の人たちと毛色が違うと思ってたけど、金で雇われた刺客だったのかな。


まぁいいや。


情報は死体からでも読み取れる。


無駄なくいこう。


もう、マグダイヤの時間は始まってるんだから。

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