第26話〜超常と幻影⑦

…………。


さて、賊を全員捕獲したわけだけど、襲撃がこれで最後なのかはまだ分からない。


今の所、これまでに賊の頭から直接得た情報によると他国からの刺客はこれで全員みたいだけど。


けれど刺客が全ての情報を知っているかと言うと、必ずしもそうではないんだよね。


だって依頼者は全ての情報を話すわけがないから。


依頼や命令を出す時だって、あれがこれこれこういう理由だからどうこうしててだからこうして欲しい、なんて風には言わないよね?


とくに暗殺者なんて失敗した場合、依頼主を吐かせるために拷問されるから無駄な情報を知らせるメリットは一切ない。


現にリーダー格の男から取れた情報も他の人たちより多少詳しい程度。


今回とは無関係の有益な情報は手に入ったけど、それだけ。


根本的な問題についてはなんも解決しない。


いっそ、手を出してくる国の王族を全員暗殺してやろうか、なんて。


もちろんやらないけどね。


依頼もないのに殺して回るなんて、暗殺者じゃなくてただの殺人鬼。


あくまで私達は便利な道具であらなくちゃいけない。


「…………。」


さて。


ちょっと予想外だったのは、最後に捕獲した刺客の子。


多分雇われの別組織だろうから、他よりは色んな情報が出て来るかなと予想してたんだけど…。


持ってる情報は大差ないし、この子が所属している組織についてもほとんど分からなかった。


実力は高かったし、独特な武器とか技術も使ってたから期待してたんだけど。


…………。


とりあえず暗殺者たちの身包みは剥いで、逃げられないように念入りに捕縛しておくかな。


あの毒糸を生成するナイフなんかは便利そうだから後で全部回収しとこう。


最終的に生きてる刺客は12名。


あとで巡回の兵士にでも引き渡そう。


まだまだ目覚めないはずだけど、さっさと終わらせて睡眠を……ん?


「いない?」


最後に捕獲した子だけ、いつの間にか姿を消していた。


…………。


『ふん、精神に干渉しても無駄だよ。それくらいレジストできるって』


あの子がいた場所に手を置いて、過去を見てみたらそんな思念を読み取った。


同時に袖口から出したナイフでロープを切ってそっと脱出していったのも。


敷地内はくまなく確認して、もう侵入者はいないからって油断した。


脳の負担を抑える為に能力を切ってたけど、せめて報告が終わるまでは警戒を続けるべきだったね。


それにしても、透視で武器は持ってない事を確認したはずなのに。


それに脳波を読み取ったはずなのに、なぜ?


とにかく知覚範囲を全開まで広げたけど時すでに遅し。


あの最後の刺客の反応は見つけられなかった。

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