第14話〜暗殺者の末路

…………。


目の前を走っていた仲間の首が切断され、絶命したのを見た男は即座に立ち止まり後方へと飛び退いた。


事前に気配を察知できず、唐突に仲間が絶命した状況。


見破れないほど巧妙な罠か、事前情報にない手練れの存在か。


前者の場合、罠の種類によってはすでに男たちの存在が伝わってしまっている可能性がある。


その場合は撤退か、速やかな暗殺を選択しなけれざならない。


後者ならば、無謀な特攻など無駄なことはせず、とにかく情報を持ち帰らなければならない。


あくまで男たちは雇われているだけであり、事前情報に誤りがあった以上、失敗の先を問われる筋合いはない。


現段階ですら気配を察する事もできず、それが罠か、人為的なものかも判断できない。


とにかく一旦距離を取らねば…


瞬時の思考。


僅かな逡巡。


これが一流の暗殺者ならば即時撤退を選んでいただろう。


事前情報との差異があった以上、この先にもさらなる想定外が待ち構えている可能性が高いのだから。


しかし男は迷ってしまった。


その時点で、ほんの数パーセント程度は存在していた、男が生きて逃げられる可能性は潰えたのだった。


「………っ?」


男の目の前で、仲間の死体が動いた。


すでに絶命し、心臓も停止したことで噴き出る血液も穏やかだが…


首から流れ出た血が飛び散ることなく一箇所に集まっていく。


まるで血液そのものに意思があるように、宙に浮かび上がった血液はまるで生き物のように蠢き、そして次の瞬間、消えた。


「がぼっ!?」


そして同時に男の体の中で異変が生じる。


まるでいきなり水の中に移動してしまったかのように、¨溺れた¨。


同時に舌と鼻に感じる鉄錆のような刺激。


混乱する男は、しかし、苦しむままに数分後、生き絶えた。


音の消えた城内。


そこにまるで滲み出すようにして、メイド服姿の少女が現れた。


…………。


さて、侵入者の排除は完了。


私は廊下に仕掛けておいた糸を外した。


引っ張れば千切れるような糸でも、ピンと張って、触れる瞬間に超振動させれば立派なギロチンになる。


もちろん直前の音に気付かれても回避できないように、念力で後ろから押して、切れ込みの入った首も綺麗に切断できるように工夫した。


飛び散った血液も有効活用することで痕跡の除去もできて掃除いらず。


液体の操作は固形物に比べて操作するのが難しいけど、人1人分の血液くらいなら問題なかった。


男の肺に直接送り込まれた血液は瞬間移動、テレポーテーションの一種である、アスポートによるもの。


念力によって肺の血液を吐き出すこともできず、男は血液に溺れて息絶えた。


(さて、情報が少しくらい得られるといいんだけど)


まずは頭部だけの男、次に溺れた男の頭に手を触れる。


魔法だと生きてないと情報が引き出せない。


けれど超能力なら、脳が腐る前なら詳細に知る事ができる。


私は目を閉じて集中した。

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