第13話〜超越者と暗殺者

…………。


「……んっ」


私の中の複数の意識のうち、王城の中の動きをモニターしていた意識が知らせてきた。


侵入者だ。


それも2人。


「……よいしょ」


サーラ殿下を起こさないようにそっと抜け出す。


寝る時は抱き枕のようにがっちり抱きつかれていたけれど、なんとか起こさずに拘束を解くことができた。


頭の中を切り替えて脳内モニターを観察する。


情報の伝達と切り替えが早過ぎる。


複数の毒が使われていることに気付いて報告したのが昨晩。


早朝から秘密裏に調査が始まって、まだ実行犯は泳がされている。


まだそのことを知るのはほんの一握りの人間だけのはずだけど。


毒殺がバレたら即座に実力行使だなんて、性急すぎると思うけど、警戒が強くなって隙がなくなる前に行動する判断と行動力はさすが。


相当な手練れみたい。


探知の他にも千里眼を使ってこっそり覗き見をしてみる。


いかにもな黒装束。


王城の至る所にいる見張りや巡回中の兵士のいる場所を避けたり、隠れてやり過ごしながら最短距離でこの部屋まで近づいてくる。


侵入者対策に複雑な構造をしているはずの王城内を迷わず進んでいる様子からして、事前に入念な調査をしてきたのか、はたまた…


これは事前に情報が、それもかなりの精度で漏れてる。


内通者は、結構な立場のある人物かな。


「同業者とやり合うのは久しぶりね」


さらに脳内を切り替える。


侍女ニーナから、ニーナ=D=マグダイヤへ。


暗殺者はその存在を認識された時点で実力は半減する。


真っ向勝負からは遠い存在だからこそ、不意打ちや闇討ち、正面から以外の手段で相手を確実に仕留める。


どの程度の実力者かはまだ判断できないけれど…


ヒラヒラなだけでなんの効果もない、耐久力もない、暗器も仕込めてない今の現状だけど、やりようはいくらでもある。


先に存在を知る事ができるアドバンテージを活かすとしようかな。


…………。


月明かりと僅かばかりの燭台が照らす城内には、驚くほど濃い闇のような影が満ちている。


地球とは異なり日が沈めば、僅かばかりの人工の灯りを除けば月や星々の明かりのみが地上を照らすのだ。


光を取り入れるための天窓などや窓がなければ、建物の中など夜目が効く者でもなければ、手探りでなくては進むこともままならない。


王城やよほど裕福な者でなければ一晩中燭台に灯りを灯し続けることも困難である。


そんな僅かな光を避けながら、音もなく影の中を進む2人の男がいた。


男たちはいわゆる暗殺者だが、盗賊ギルドの人間だった。


罠や複雑な経路など、問題ではない。


それぞれが分担して役割をこなすため、スムーズに任務を達成することができるのだ。


侵入や潜入に特化した男が事前に頭に入れてある城内の経路と兵士の巡回ルート、時間に合わせて最短経路で王女の自室へと先導していく。


次に罠の発見や解除を得意とし、同時に毒物を用いた暗殺の得意な男が。


事前情報はあるが、漏れや知られていない仕掛けがある場合もある。


今回は急な作戦変更のため、万全とは言い難い。


念には念を入れて、2人できたのだ。


複雑な通路を進み、階段を上下し、目的の部屋のある階へと踏み入れる。


そして…


先頭の男の首が切断され、胴体と別れた頭部が宙をまった。

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