第10話〜【王族の円契約】

サーラ王女が習い事の時間になったことで、ようやくエンドレスお着替えが終わった。


もう一生分のドレスを着た気がする。


護衛としての仕事があるのに何をやってるのかしら。


まぁ精神的な疲れしかないので、切り替えていこう。


と言っても、サーラ王女の周りには戦える侍女が何人もいるし、部屋の外には騎士もいる。


正面から戦えば正攻法じゃ勝てないような実力者揃い。


さすが王族。


それに常にサーラ王女の動向はチェックできるので目を離しても大丈夫。


もともと四六時中護衛として張り付く話じゃなくて、暗殺者とかの動向を探るために単独行動に出てもいい許可はもらってるし。


暗器の類は確認してるし、悪意や殺意を持つ人はこの中にはいない。


ここは情報収集がてらちょっと話を聞いて回ってみようかな。


幸いなことに(残念なことに?)私は彼女達にとってお気に入りというかオモチャのような立ち位置のようだし。


…………。


「王族を害することは出来ないわ。これまでも何件か暗殺者が侵入したことってあるみたいだけど、全部失敗したって話よ」


「そうなのですか」


「それは強い護衛がいるからとか、毒などを含めた暗殺に対しても魔導具で対策してるからだけじゃないのよ」


「そうそう、【王族の円契約】という王家に代々伝わる魔導具によって王家の方々は守られているの」


仕事の手伝いをしながら何人かに当たり障りのない話をしながら、話題を誘導していくと面白い話がいくつか聞くことができた。


その一つが【王族の円契約】という伝説級の魔導具。


形は不明らしいけれど、3つで一対になる魔導具らしく、それが王家には計12個あるらしい。


それらが序列順に王族に分配されているんだとか。


その効果は王家の秘宝なだけあって破格。


例え瞬時に首を切り離されようが、燃やされようが、ミンチにされようが、魔導具が破壊されようが、三つ同時に壊されない限り死ぬ直前にまで時を巻き戻すことができるんだとか。


…………。


基本的にその三人の王族が同じ場所に揃うことはない。


例え国葬であろうと、必ず三人のうち一人は城にいなければならない。


これは国法に定められた決まりらしい。


しかも誰の持っている魔導具が他の誰と対になっているのかは王様以外には不明。


だから誰か王様1人を確実に殺したければ12の王族全員を集め、同時に殺害及び魔導具の破壊を行わなければならないらしい。


魔導具は王家の血筋にのみ反応し、さらには正式な儀式を行うことで効力が現れる。


こうやって王族は王族の血と歴史によって守られている。


だから私の任務は、王女様を暗殺のトラウマやショックから守りつつ、犯人を仕留めることが求められている。


…………。


けど。


私なら同時に離れた場所にいる王族を仕留めることはできる。


むしろその方が証拠が残りにくい分、暗殺には適している。


離れた場所にいようが、魔力を登録した相手は把握できるし、それに結局同時に暗殺されればどうかなるのであればそれは万全の守りとは言えない。


暗殺成功イコールで即王家断絶だし。


この世界には魔法やスキルがある。


100%安全なんてあり得ない。

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