第13話「勇者、ダンジョンに挑む準備をする」
※勇者ユウキ視点
勇者の家業は魔王を倒した事で解決―――をしたが、魔族が各地で暴れていると言う情報を得て勇者としてパーティーメンバーの女の子達二人と行動する事になった。
ここまでが自分の前提。
実は自分を召喚した国に所属した際に俺のネットの中の
やはりと言うべきか・・・テツだった。
「ただいま。やっぱり彼もこの国に来ていたみたいだよ」
「そうなんですか?」
寝泊りしている部屋に戻り、起きている子にそう話した。
彼女は飛鳥由衣。
賢者と言う職を持った女の子だ。
「彼はダンジョンで彼女を鍛えるつもりかもな」
「そう・・・ですか」
彼女は高校生ながら中々落ち着きがある。
まぁ、この世界に来て驚きと不安があるのは仕方ないが案外彼女は直ぐに慣れた様だった。
「彼に頼らず僕らだけで鍛えるのは骨が折りそうだけど・・・頑張ろう。ね?」
「も、勿論です。美咲の為にも頑張らないとっ!」
もう一人の・・・傍で寝ている女の子は守護騎士と言う職を持つ井河美咲。
根っこは真面目だがこの世界に来て少々周囲に飲まれ過ぎて周囲を信じ切っている子だ。
そんな彼女をパーティーで討伐の道中色々な出来事があったから逆に由衣ちゃんは冷静になったようだ。
だから由衣ちゃんにだけ俺とテツのやり取りを教えたのだ。
パーティーでの道中
「国王が怪しい?あの召喚を命じた国王が?」
「あぁ、魔導士数人程の規模だが・・・多分アレは俺の予想だと魔導士はグルでも捨て駒扱いだな」
彼の推理は大いに当たっていた。
宰相の元へ一人で顔を出しに来た時にお抱えの魔導士の事を言うと―――
「確かに、君の言う通りに裏で調べたら死に体の彼らは国王が用意した剣客だったよ。しかも選りすぐりだそうだ」
「やっぱり・・・」
こうして彼が目的を果たした暁には国王を訴える事にした。
宰相には信頼の置ける部下が何人かいて更にその中には王子とも手を組んでいる天才が居る。
彼らを使って国の徴収リストを洗い浚い調べるそうだが・・・多分時間は掛かる。
「・・・万が一の時は私は無理やりにでも聖女様の所に美咲を連れて行きたいです」
「そうだな、あのような男に魔族でも使って洗脳でもされたりしたら溜まったもんじゃないからな」
そうそう、魔王の娘はと言うと――――テツと二人で相談した事がある。
「先見的な予想だが・・・国王があんなんじゃ多分魔族でも内部分裂を起こす可能性がある。戦いの途中で魔王に念話をしてみたい」
「分かった。出来るだけ不便にならないようにサポートをする」
魔王は自分の死期を悟っていて亡くなる間際に自分の娘を預かって欲しいときた。
「宰相に?」
「あぁ、上手くいけばあの国王を騙せるかもしれない。宰相の家族はフレンドリーなの聞いた事があるだろ?その人たちに宰相も含めて話し合いをしておきたい」
こうして、例の魔族――――俺や彼女達などを召喚した国王と裏で手を組んでいる魔族を探す事にした。
幸いにもテツの事を知っているのは国王自身以外。
テツは協力出来るヤツを見つけたみたいだし向こうも実力を身に着けてその魔族を探す筈・・・
「美咲が起きたら僕らもダンジョンで無理しない程度に攻略しようか」
「分かりました。頑張りたいです」
机に置いてある新聞の一面が記載されてある。
"有名商会の長子子息、高貴な種族に手を出した事による犯罪行為により即日処刑"
と、そう記載されていた。
「しかしまぁ~エルフを我が物顔で手に入れようとする輩も居るもんだな」
「ですね・・・私なら眩し過ぎて目の前で拝み倒れてますよ」
「んぅ~・・・あれ、もう朝?」
美咲が目を擦って起きた。
その寝間着のまま顔を洗い、歯を磨いて化粧を始めた。
「寝癖、付いてるよ」
「あっホントだ・・・」
俺の指摘で気付いて髪型を直しそのまま食事に行く。
「―――って事で、三人でダンジョンに挑もうと思う。勿論無理しない程度で例の魔族も探したい」
「取り敢えず・・・どうします?ダンジョンに潜るのも良いですけどそれなりの資金も必要だと思うんですけど・・・」
「私もそう思います。今までの冒険では国の資金でやりくりしてましたし」
二人はそう言って困り顔で言う。
しかしまぁ・・・問題無い。
「その点に関しては問題無い。事前にちょっとした後ろ盾を得ているからそこに頼っていこうと思う」
「(もしかして・・・)」
由衣ちゃんが俺を見た。
何か気付いたようだ。
俺は黙って頷く。
「それじゃあ行こうか」
三人で準備を早めに終わらせて部屋を引き払う。
「女将さん、世話になりました」
「いーんだよ!またいつでもウチにおいで!」
そしてとある場所に着いた。
「勇者殿!お待ちしておりましたぞ!」
「どうも。エストール殿」
エストール・アダムズ・グルミア辺境伯、唯一廃棄された北方の辺境であるグルミア雪原を一人で開拓した超人である。
「このような極寒地方の辺境にようこそ。姉上と兄上からお聞きしましたよ。御三方の為に寝室を二部屋ご用意しました。また何かあれば部屋付きのメイドに声掛けを」
「ユウキ様の部屋付きメイド、アランと申します」
「ユイ様、ミサキ様の部屋付きメイド、ガラナと申します」
二人のメイドはカーテシーをして後ろに下がる。
「寒い辺境地方ですから、結構暖房の消費が凄いでしょう?」
「確かに・・・はぁ~実家を思い出すなぁ~」
「そう言えば、雪国出身でしたっけ?」
「あそこ、寒いのよねぇ~」
雪国、北海道の出身の俺はソーラーパネルと電波が届きやすく住み心地のいい所に住んでいた。
北海道にある実家から上京して色んなバイトを掛け持ちして面接を受けたりもした。
こんなご時世だからこそ、就職が難しい。
「ほう、でしたら極寒は経験済みで?」
「えぇ、我ながら無茶をして何度も熱を出したか」
何故か辺境伯と会話が弾む。
「アラン、ガラナ。こちらの御三方に暖かい飲み物と食事を」
「「畏まりました」」
食事もさせて貰った後、美咲だけガラナに頼んでお風呂に行かせて貰った。
「――――して、"彼"の事で兄上と姉上から聞いています。我々は他の国との交流する事もあるので情報が遮られる心配はないのですよ」
「そうなんですか?!よかったぁ~!!!」
俺は安心しきって心の底からガッツポーズをする。
翌朝――――
「御三方の現状では地下10階層までが限界かと。ただし、お気を付けて」
「お気遣いありがとうございます」
準備を終えて三人でダンジョンへ向かった。
「ダンジョンは地上から上層へ行くには下層・・・地下階層100階をクリアしなきゃいけないらしい」
「事前にギルドに聞いたんですか?」
ダンジョンへ行く道中でそう話をしていた。
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[ステータス一覧]
名前:神宮司 勇気
性別:男
職業:勇者(33/100)
所持スキル:
EXスキル:???(100/100)
EXスキル項目解放SP:無し
EXスキル解放条件:???
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あぁ、念には念を・・・ってね。あの人に言われた通り、ある程度の実力を身に着ける為に10階層まで行って鍛えようか」
「「分かりました!」」
寒い辺境の土地から通常気温を感じ、ダンジョンが目の前まで見えた。
「すまない、受付嬢は?」
「おっ、君らもダンジョン攻略かい?」
ダンジョン前のゲートを管理している騎士に挨拶をしてそのまま受付嬢の元へ行く。
「どーも、ダンジョン地下階層攻略をしに来ました」
「ようこそ!こちらへ記入を」
受付嬢から一通り説明を受けて―――ダンジョンへ入る。
「道中お気を付けて!ご武運を!」
彼らが10階層まで攻略するのにそれほど時間は掛からなかったのは言うまでもなかった。
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