第12話「その男、学生を助ける 下」
シュムベルさんの話では一番ダメージを受けた公爵家があり、常識人だった為、実の子が事件に巻き込まれただけの女の子に対して虐めを主導していた事で反省させるために暫く軟禁状態だそうだ。
「その令息筆頭に半数の令息や令嬢も非常識な行動を興したとして半数が退学並びに爵位の継承の件は白紙になったそうです。その影響で縁切りとして農民が多く居て領主が居ないそんな村に移送されたそうですよ」
「残りの半数は継承剥奪はされたものの、ほぼ軟禁状態か監視付の者との登校なのか」
「えぇ、学生寮暮らしは早々に撤回させられたそうですよ。まぁ私が知る限りの情報はこんなもんだ」
取り敢えず間違いに気づいたさらにその半数の生徒は親同伴で彼女に謝罪と賠償金譲渡をしたそうだ。
「またの御贔屓に!」
「あぁ、彼女には体に気を付けるよう言っておいてくれ!」
ミューの元へ戻り、ダンジョン攻略の計画を建てる事にして宿を取った。
「えっ、暫くあの学園は留学生を多く集めるので?」
「あぁ、更に条件付きで商家持ちの学生は入学出来ない手続きになったそうだ」
時期的に学園側は王族の助力で留学生を多く集める事は容易い。
更に令息や令嬢の嫁ぎ先も確保出来る幅がさらに広がる可能性は大いにある。
彼らはミュレッタの兄の件で被害に遭っていた貴族からの嫌がらせや虐めをする貴族を否定し、それぞれの家訓を元に自ら行動をした。
「ダンジョンの件で騒がせてしまった彼らはどうなりました?」
「あ~、そうそう。彼らなんだけどね」
6人の貴族の子達はそれ程アダムズ国王からの𠮟責は多くは無かった。
ミュレッタの父、カッツマン殿の強い要望によりそこまでのお咎めは無かったそうだ。
「彼らは彼らで数少ない残りの商いの仲間として切磋琢磨に活動するかもな」
「ですね」
彼らはそこまでの処罰は無くいつも通りに学園に通う事になっているそうだ。
「そうだ、今回の目的って・・・」
「あぁ、今回は万が一の時に備えて強くなろうって事でダンジョン攻略をするのが第一だ。他はある程度の実力を身に着けてから教えるよ」
宿に戻った後は食事を済ませて就寝に入ろうとしたところ――――
食事場が騒がしい事に気付いてミューと起きた。
「俺が見て来る。少し待っててくれ」
「分かりました」
食事場に行くと―――周囲の人々は何かを取り囲んでいた。
近くにいた女将さんに聞いてみる事にした。
「何かあったんですか?」
「お客さん、いやね、店じまいにしようと思って暖簾を片付けに外に出たらあの子が倒れていたんだよ」
周りを掻き分けて進むと――――とあるエルフが居た。
「・・・!あっ、貴方は!」
「あー、落ち着こうか。女将さん。彼女を俺とアイツが使っている部屋に」
「分かったわ。面倒見てあげてね」
見覚えのあるエルフが食事を終えて一緒に俺とミューの借りている部屋に入る。
入った途端にミューは驚いて身構える・・・が、直ぐに誤解は解かれた
「えっ、エルフッ!?・・・の割になぜその恰好を・・・」
「話、してくれるか?」
「えぇ」
彼女はルーシャ、元は旅好きのハイエルフ。
【
彼女がなぜボロボロな格好で宿の前で倒れていたのかと言うと――――
「実は・・・とある貴族に狙われていたんです。前に一度会っている方で、婚約を迫られたんですが・・・」
「エルフってのは一人が好みなヤツが居るからな~・・・断った事が?」
彼女は頷く。
装備品は異空間の中にしまっている為、彼女は普段着でこの王都に居たそうだ。
「魔族の私でも分かりますが・・・エルフの位が高いハイエルフは高貴な職を身に着けている事が多く、人間の法に則っています。ですが、エルフやハイエルフは貴重な人脈。そんな貴重な方々・・・しかも御高名なお方に手を出したとなれば―――」
「えぇ、この国はエルフとの戦地になってしまうわ」
「身分は分るか?相手の」
俺がそう聞くと、ルーシャは「そう言えば」と言い
「その男から逃げる時にボロボロになったんだけど・・・運良くアイツが身に着けていたモノが偶然私の異空間にしまっていたの!」
「それ、見せてくれ」
彼女に見せて貰った物を見た俺は―――後日、王城にて
「公爵の一人息子がハイエルフを誘拐や監禁をしようとしていたのか?」
「えぇ、ラーバス宰相。これを陛下に」
ラーバス宰相にソレを渡した。
彼は眼を見開き
「誰か!デミルゴ公爵を呼びに行きなさい!」
「どうした?」
ラーバス宰相の騒ぎを聞き、バーデア国王が早足で駆けつけて来た。
宰相は手に持っている物を持ってバーデア国王に見せた。
バーデア国王はソレを見て絶句した。
「そんな、馬鹿な・・・何故あの者に渡した褒章のついでのモノが」
「分かりません、ですが・・・ジーク殿のおっしゃるとおりであれば―――」
二人の男は唾を飲み込み、俺は頷く。
数時間が経ち、身嗜みがなっていない公爵が来た。
「陛下、このような格好で申し訳ない。」
「デミルゴ、お主は近々何かモノを無くしていたりはしないかね?」
デミルゴ・ゴーゴン公爵は頷く。
「息子の学園でのイジメの件で慌ただしくしていまして、その時に陛下から貰った碧の指輪を何処かに無くしてしまいまして」
「もしや・・・コレか?」
「・・・!そ、それです!どこでそれを?!」
「実はですな――――」
ラーバス宰相は公爵の隣にいた俺を紹介し、俺の知り合いが若い男から逃げる時に偶然その指輪を異空間の中に入れてしまったそうだと言う事を話した。
「・・・そちらのお嬢さん、まさか、私の瞳の色をした男に会われたので?」
「えぇ、揉み合いの際にその指輪を奪ってしまいまして・・・」
ルーシャがそう言うと、デミルゴ公爵は深々と頭を下げた。
「軟禁状態の筈の息子が手を出してしまい申し訳ない。責任をもって王家に身柄を引き渡す事にする」
「デミルゴ公爵殿、確か商いの手伝いをした下の子が居たでしょう?その子は当主に?」
俺がそう聞くとデミルゴ公爵は頷き
「対等な指導や甘やかしをしてきたのに拗れた反抗期のような上の息子とは違って下の息子は物事の判断やその場の状況整理など、私より頭の回転が速いので。それに元から商いや領主の二つを任せるのは私を除いて部下達の判断で決まっていましてね」
デミルゴ公爵はそこまでやっていたのか・・・だったら安心だ
次の日のお昼に神々に近しい高貴な種族に手を出したと言う事で元ゴーゴン公爵家の長兄令息は死刑宣告を受けて城内にある処刑場で処刑執行されたと人伝いに知った。
「ホレ、コイツで顔を隠して活動しておきな」
「お気遣いありがとうございます。では私はこれで」
因みにデミルゴ公爵はあと数年で引退して山頂の麓に移り住むことが決まっていた。
「さてと、ダンジョンに行くか」
「ですね、私も頑張ります!」
朝の内にひと通りの騒動の鎮静化が終わった。
そして今からダンジョンに挑む事になった。
「こんにちは。ダンジョンですか?」
「えぇ。一通り収まったので」
職業のカードを渡して更新する。
特殊な素材で出来ているカードだから結構な長持ちで助かるよ、ホント
「では、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
「行ってきます」
二人の
「すまない、ちょっと良いか?」
「あっ、はい。なんでしょうか?」
覆面の男は傍の椅子に座り
「先ほどの男はもしや・・・」
「彼ですか?この国に来て色々と問題を解決した御仁ですよ。彼が行動していなかったらとある有名なご令嬢を助けれませんでしたから」
職員がそう言うと、男は
「そうか・・・分かった。呼びかけて済まない」
男はそう言ってその場を去るのであった。
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