第10話「その男、ダンジョン攻略の準備をする」
「―――んじゃ、行ってくるわ」
「また来る機会がありましたらいつでもお越しくださいね~!ジーク様ぁ~!」
早朝、予定よりだいぶ早めな気がするが・・・ミューと一緒に最初の目的を果たすために動いた。
「たしか・・・カインス学園だったな?」
「アダムズ王国の名称由来って・・・あの巨木ですよね?」
先にギルドに寄らないと・・・
「そう言えば・・・気になってたんですけど、魔王様を倒す旅の道中でアダムズ国王とどのような経緯で?」
「それか、確か――――」
話をしていると見覚えのある女性が同年代の女性と話をしていた。
そう、俺が会おうと思っていた子だ。
「よっ、久し振り!」
「ジーク様?!」
俺に気付いた彼女はその場から立ってスカートの埃を払ってカーテシーをする。
そう、彼女こそ―――アナスタシアン・リズリー、彼女の親しい周囲からはアンナと愛称で呼ばれている。
「装備特別に造ってくれたのを聞いたよ。ありがとうな」
「いえ、私のせめての恩返しですから」
学園の中身が気になったが・・・取り敢えず
「―――って事で、君の伝手でそこらに詳しい人いないかい?」
「そうですね・・・あっ、でしたら私の傍に居る彼女が詳しいですよ」
「どうも、ジーク様。私はエメラルド・グリーンティーと申します」
緑色の煌びやかなヘアースタイルで目立つその女性こそが俺の目的に近づく協力者らしい。
「私は魔物の習性を調べていまして」
「・・・あっ、そうか。魔物は元は魔族が管理していた動物。だからまだその魔物を扱っているヤツを探せば」
と俺は言い
「えぇ、所謂"魔物学"です。私はそっちの専門で
彼女の考えではその支配を企む魔族は魔物や同族である魔族を捨て駒のようにしか扱わない筈らしい。
「魔物は魔族の指示がなければ野良と同様に勝手に魔族以外の私達人間を含む他種族を襲ってしまう。ジーク様が仰るその魔族であればそう言うのを容易くやってしまうでしょうね」
「そんな事が・・・?」
「やはり、頼るべきは魔物の生態に詳しい学者だな。助かる!」
食事を奢り、話をしながら食べ始める。
「―――で、その魔物へ指示を出す魔族はその範囲に隠れてやり過ごすか隠れ家を用意する事が殆どですね。人間でいう所の盗賊などの道を外した犯罪者に該当します」
「~~~。成程、であれば魔物をけしかけるのは正解だな。ミュー、お前の方で魔物を放逐して逃げるような魔族は居るか?」
「一人だけなら心当たりが。でも私が思っているその魔族は罪を手に染めるような行為をする王族と関りを持ったりはしない筈です」
その場の四人で少し考え始める。
「となると・・・一度、その魔族に会わないといけないな」
「私が一度話をしてみます。無理な状態であれば倒しても構いません」
大体の話は纏まり―――
「先にギルドに寄るけど・・・二人は明日も休みか?」
「えぇ、学園の方でちょっとした設備の不良がありまして」
「学園からの連絡が来るまで暫く学生寮で待機に」
二人の予定を聞き、アンナがミュレッタの事を言ってきた。
「そう言えば、その前々日にミュレッタさんが来ていたわ」
「おっ、早速到着していたか」
ミュレッタの転入初日はとんだ災難だな
「・・・実はそのミュレッタさんが貴族間で糾弾を受けていまして」
「まさか、彼女以外に商人の貴族が?」
「・・・えぇ、何人か在籍を。ですがその貴族の半数が彼女の商家から被害を受けたとされる方々らしいんです」
もしかして・・・
「確かアダムズの国王に真犯人と実行犯が投獄されて挙句に謝罪行脚もしているはず・・・相当深く恨んでいるんだな?」
「・・・私が奴隷にさえなっていなければ」
ミューは唇を噛み、悔しがる。
そもそもの原因は気安く受け取った違法行為の奴隷商だ。
「・・・仕方ない。国にすべての奴隷商に規制を掛けるよう掛け合うしかないな」
「やはりその手しかないのでしょうか?」
「だと思うわ。現にどこかでエルフを狙ったりドワーフを攫ったり、ましてや家族に売られるなんて事もザラにあるのよ」
仲間に売られてしまうって事も過去には何度かある異世界だし、何ら問題が起きても行動をするしかない。
「すべての国に働き掛けるならやっぱり王族を動かさなきゃな」
二人とは別れてミューと共にローザ領主の元へ足を運んだ。
「―――成程、分かった。弟に対応しておくよう伝えておくよ」
「有難うございます!」
「助かります。結局ダメな所は嘗ての仲間に再会した後に伝えるなりなんなりするんで何があっても気にしないです」
数日後、アダムズの冒険者ギルドにて
「――――と、よろしくお願いします」
「此方こそよろしくお願いします。ギルドマスターは直ぐに対応しに来るので」
アダムズのギルドは広々としていてダンジョン探索にもってこいな情報誌や地図などが多くある。
「アダムズのダンジョンって確か地形変化したりするんですよね?」
「えぇ、変化ごとに幾つかの地図も用意しなきゃなので殆どの冒険者は余裕をもって行ける範囲内で活動するように呼び掛けています」
流石、このギルドはしっかりしている。
すると、一人の冒険者が走ってきた。
「受付嬢さん!ギルマスは居ますか?!」
「どうかしたんですか?エリックさん」
エリックと呼ばれているその青年は息を整えて話を進めた。
「数時間前に大人数の男女パーティーが入って行ったのを記録していますよね?」
「えぇ、ちゃんと記録に残っています」
エリックは顔を真っ青にして
「・・・そのパーティーの殆どが壊滅状態なんだ!しかも全員学生でだ!」
「そうなんですか?!学生はたしか浅い階層まで攻略するようにと学園側でも注意喚起されていますよ?!」
「どうやら、他の職員が受付を担当してダンジョンに勧めたようですね」
「・・・みたいだな。スマン、その記録見せてくれないか?」
受付嬢から受け取った記録名簿を見てみると――――確かに学生らしき筆跡と職業身分偽造をしているらしい。
学生ではなく成人に
もう片方を見てみると―――
「パーティーリーダー・・・アシックスか」
「アシックスってあの大公家のご子息じゃないか?!」
どうやら、訳アリなようだ
「大公は国に一人か二人ぐらいしかいないんだっけ?」
「確かそうですよ」
さて、とりあえず聞くものを聞いておくか
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