第9話「その男、国の王と対談する」

「よく来てくれた!エルザよ」

「母の代わりにローザの代表として来ましたわ」


二人が挨拶をした。

その傍で―――ミューは俺の背中からおずおずと見ていた。


「あのお方がアダムズの国王ですか?」

「あぁ、バーデア・アダムズ・ゲムズで公爵家の家長でな。将来的には長男のマルス王子が次期国王になって次男のカムス王子が公爵家の跡取りになる予定らしいぞ」


魔王討伐の道中で助けた事で知り合ったが、国王とは名前を知る程度である。


「陛下、こちらのお方が勇者パーティーの一人であるジーク様ですわ」

「ほほう、貴殿が」


バーデア国王の午前で一礼し


「今宵のパーティーは無礼講・・・ですが、貴族の皆様方にお耳を拝借するよう発言して貰ってもよろしいでしょうか?」

「ふむ、何か伝えたい事があるのだね?分かった。私に任せなさい」


バーデア国王がそう言って貴族達の前に出る。


「皆の者、今宵のパーティーは如何かな?この私が皆の為に彼らと一緒に料理や飾りつけなどの手伝いもやってみたのだ。気に入ってくれたならありがたい」


「そして」と国王は言い


「姪と共に来て下さった方が居る。私の隣に」

「隣、失礼します」


バーデア国王の隣に並ぶ。


「自分はとなりますが・・・勇者パーティーのメンバージークと申します」


「勇者パーティーってあの・・・?!」

「まぁっ、あんなに若いお方なのね・・・!」


周囲が騒然とするが、国王陛下の咳払いで静かになった。


「私は今現在とある噓の情報により失ってはいけない命を奪ってしまった事をここに告白させてほしい」


俺がそう言うと辺りは騒然とまた始めた。


「一体どういうことかね?」

「陛下、ここ最近。もしくは去年かその前の年以降から国事で変わったと実感した事はありますか?」


俺がそう言うと、バーデア国王は「う、うむ」と驚きながら頷く。


「実は・・・とある国の一人がとあると手を組みすべての国を支配しようと企んでいる情報を得ました。いや、正確には――――」


一度、間を置き


「一国の主を裏切り人間を手駒にしようと企んでいる魔族と人間を傀儡としてしか扱わないとある国の王の情報を―――その国の宰相から得ました」

「そ、その話は本当かね?!」


俺は頷く。


「私はその魔族の行方を知る為に勇者達とは別行動をとっています。そして勇者のほうも――――私の耳打ちの後に他の勇者メンバーと共に行動をしています」


「そして」と俺は言い


「魔族を含むいくつかの亜人と差別されている種族を奴隷にしようと企んでいる貴族もここ最近増えています。その半数は――――そのとある国の王の派閥だった者達です。皆さんも気になる事があれば自分の配下を使うなりして調べて貰えないでしょうか?情報が多く集まればその国の王を降ろさせる事が可能と私は思います」


周囲の貴族は隣にいた別の貴族と小声でコソコソと話す。


「その王には確か二人の王子と王女が居なかったか?」

「えぇ、その国の王は王女を味方につけて王子は廃嫡して国から追い出そうと画策しているかと」


そう言い切ると食事会はあっという間に議論の場にもなった。


「騒がしくしてしまい、申し訳ない」

「いや、構わんよ。君のやり方でウチの騎士団に相談をする貴族が増えたら対応をするさ」


俺は一つ提案をする。


「その事についてですが・・・ラバース宰相」

「私か?」


ラバース・ハムナプス宰相に聞かれ、頷く。


「国の王が忙しい時もあります。その時に騎士団だけの判断となると後から混乱を招く場合が。なので、バーデア陛下の信頼のおけるラバース宰相殿の力添えを」

「ふむ、あとで騎士団と話をして纏まったら陛下に報告すると言う算段だね?」


俺は頷く。


「犯罪や一家の財政事情により奴隷となる人は居ても構いません。ですが欲に溺れたた者の所為で無実なのに奴隷に落とす卑怯で愚かな人間も実在はします。なのでそんな人間を減らす為に」

「・・・うむ、分かった。して、そのお嬢さんは?」


俺は傍に居た彼女のフードを外す。


「・・・!魔族?!」

「魔王の右腕であるお方の孫にあたります。魔族にだって平和に暮らしたい者も居ます。そこら辺の協力も陛下の信頼を置ける人物を使ってください」

「・・・分かった。キミに協力をしよう」


こうして必要な事を済ませ、ローザ子爵邸に足を運ぶことにした。


「やぁ、久し振りだね」

「えぇ、貴方もお変わりなく。エミル氏」


エミル・アダムズ・ローザ、アダムズの一族の長女で現国王であるバーデアの姉にあたる。


「娘からは話を聞いてるよ。よろしくね、ミューさん」

「よろしくお願いします・・・ところで、女子爵とお聞きしたんですが・・・」


ミューの眼が煌めいていた。


そう、エミル氏は美形でありながらボブカットでさらに肉体美が美しく輝いている程に有名であり――――子爵イチ最強の剣士である。


「―――旦那さんは戦争で亡くなったんだ」

「そう・・・なんですか?」

「あぁ、そうだよ。魔王軍の幹部の一人・・・彼が言うとある魔族の配下が襲撃してきたんだ。それらすべて魔王の指示による襲撃としてね」


その魔族は魔王にすべて罪を擦り付けたいような雰囲気を持っているように見えたらしい。


「私もできる限り部下を使って情報収集を徹底するよ」

「よろしくお願いします」


今回はローザ邸に一晩寝させて貰う事にした。


『ジーク様、少しよろしいかしら?』

「いいよ~、ドア空いてるから入って大丈夫だよ」


エルザがミューと俺が使わせて貰っている部屋に入ってきた。


「今日この国に来たのは他の別の理由がおありで?」

「気付いたか。とは言っても理由は変わらないし、そもそも今回はこの国で暫く資料を漁りたいのと・・・再会した時にも言ったけど俺のこの装備一式を用意した子に会いに来たってやつだ」


俺の装備品を見たエルザは首を傾げる


「今更なんですが・・・見た事のない装備品ですね?」

「俺の元居た場所で古くから飾りや実践とかで使われている武器にちょっとした異国のファッションなんだ」


見せびらかしている間に風呂から上がったミューが戻ってきた。


「ただいま上がりました~」

「おっ、良いねツヤが出て」

「ですね~」


さて、スキルをもう一回確認するか・・・


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

[ステータス一覧]

名前:ジーク/進藤 充

性別:男

職業:罠師(39/45)

所持スキル:罠召喚(5/5)

      鉄壁罠(3/5)

      罠解除(1/1)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


確認をしている最中にエルザが聞いてきた。


「何をしているんですか?」

「ん?あぁ、使用できるスキルを確認してたんだ。彼女に会いに行った後はどうするか考えておかないと・・・」


アダムズは元々ダンジョンで血気盛んな国で有名だからミューと一緒に行くか?


「レベル上限まであと数十って所なんだ。ダンジョンって入れる?」

「お時間が余った際なら時間厳守であればいつでも入れますよ」


明日から済ませるものをとっととやっておくか


「それじゃ、風呂行ってくる」

「分かりました!お気を付けて!」

「それじゃ、私もおいとましますね」


次の日から忙しくなったのは言うまでもない。

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