第8話「その男、目的地へ往く」

準備を終えて別れの挨拶を済ませて乗り込む。


「様々な属性を持つのは凄いです!」

「不適正が多いのか、魔族は」


普通、魔族は見た目判断で戦闘が強いって言う印象や認識が昔のゲームによく見かけていた。


この世界はそうなのだろうか・・・?


「我々は信仰する神は魔族の中でもバラバラなんです。でもそれでもどの神に属してもそれ程多くは扱えなかったんです」

「そうなのか」


元々、魔族も結構苦労しているらしい。


「・・・もしかして、君ら魔族の中で人間と裏で交流してる奴は居たりするか?」

「戦争状態であればそうですね」


今はどの国も停戦状態が続いている。

そんな中で種族問わず亡命する者が多く現れる。


「そんじゃま・・・旅の途中でもいいから助ける人は助けるか」

「ジーク様らしいです。フフッ」


ミューと一緒に途中でお昼を取る事にした。


「ホレ、新鮮な人参だぞ」

「ヒ~ン」

「良い子ですね」


今使っている馬車は現役を退けた馬をリズリー商会は引き取っている。

看取るまで最後まで運動を毎日させてる事がある。


「老馬は何時亡くなってもおかしくはない。だからこそ・・・現役よりは衰えてもあの商会は責任をもって看取るんだ」

「由緒正しい商家なんですね」

「あぁ」


さて、休むか


「取り敢えずキミも腰を落ち着かせておきな」

「ヒヒ~ン♪」


道から少し外れて火の用心をする事にした。


「本当に一晩だけでいいのですか?」

「あぁ、パーティーメンバーを増やせれば火の用心は交代交代で出来る。だが、君はおろか老馬である彼も戦闘能力は乏しい。魔力だって有限だから限りがある」


勇者パーティーで行動していた時はこんなに時間が長かった記憶はないな・・・


「(さて、あの国王はどこの魔族と手を組んでいるのやら・・・)」


魔族は魔族でも幾つか集落を作っていたと記憶している。


「(そのうちの一つが国王と手を組んで国中を支配しようとしてたんだよな・・・)」


今はまだ上書き程度だが違法奴隷の件も追加で片づけておかねば・・・


「・・・ん?【不眠不休】?いつの間にか新しいスキル手に入れたのか俺」


そいやぁ~この世界に来る前に言ってたな


『魔王討伐の後に暇でしたら、旅の片手間に特殊スキル取得をしてみて下さいね』


【不眠不休】はその一つらしい。


夜が明けてきた。


「おはようございます」

「あぁ、おはよう。ご飯も作ったから食べときな」


老馬も起きていたので人参やスープをあげる。

俺も食事を始めて地図を見て確認を取る。


「昨日から動いたからここら辺だな・・・距離はこれぐらいか?」

「確かそうですね」


さっさと動く事にしよう


「ミュー、少し急ぎで動く事にする。これらの片付けの手伝いを頼む」

「分かりました!」


片付けをして荷物をしまい込んで、焚火の跡を消してさっさと馬車に乗って動く。


「うっし、少し頑張れるか?」

「ヒヒーンッ!」


結構な距離を走ると――――町が見えた


「地図に載ってない・・・アダムズとの中間にある領村か?」

「さぁ・・・?」


早速その町に入ると――――色んな出店が出店していた。

青果店らしきお店にて働いている店員に声を掛ける。


「あのー、すいません。この町って最近出来たばかりですか?」

「えぇ、アダムズ一族のご親族の方がこちらに町を作ると言う事で造りましてね。ローザ町と命名されました。領主は女性の方ですね」


そう言えば、アダムズの古き一族は3つあるのを聞いた事があったな


ゲムテ公爵本家がアダムズ初代国王の出自になってた筈・・・

後はグルミア辺境伯分家とローザ子爵分家の二つ。


「ローザの領主・・・もしかしてエミル子爵様のご子女様で?」

「おや、エルザ様をご存じで?あの方は三兄妹の末の長女らしいですよ」


聞けば、アダムズの現国王は領主の弟にあたるらしい。


「歴代のアダムズ家は大家族でしたが・・・子孫を残し、大半の大人が戦争の犠牲に・・・残された方々は勇者御一行の魔王討伐のお陰で戦争も終結したんです」

「成程、そうでしたか」


すると、一台の馬車が通ってきた。

その馬車は今いる青果店に停まる。


「お兄さん、果物を買いに来ましたの。今夜は王家のお茶会でフルーツを食べる事になりましてね?」

「分かりました。どれか一つお取りします。どれがよろしいでしょうか?エルザ様」


二人の会話を傍で見ながらミューが話しかけてきた。


「あの女性が?」

「あぁ、もう一つの分家の娘さんでエルザ・アダムズ・ローザ、今じゃエルザ・ローザって呼ばれてるかな?」


そして、後からメイドが馬車から下りてきた。


「エルザ様、私がお持ちします」

「お願いして良いかしら?」


メイドが振り向いた瞬間――――


「・・・!ジーク様?!」

「やぁ、モルガナとエルザ」

「ジーク様?!」


二人は俺を見て驚く。

暫くしてミューと共に中に入れて貰った。


今までの事を説明し―――


「そんな事が・・・それではエデンへは彼女に会いに?」

「あぁ、予定の日より早めに着きそうで良かったよ」


アダムズでは書物が豊富にあり、アダムズの現国王は賢王とも言われている。

王宮内では書庫があるらしいが・・・国王に認められた者のみが入れる場所になる。


「そうですか・・・であれば私が都合を付けて調整をしますね。それまでは我が屋敷にお越しくださいませ」

「・・・そうだ、お嬢様。折角ですからバーデア陛下の元へお連れしましょう」


モルガナの提案にエルザは目を輝かせ


「良いわね!それ!」

「決まりだな」

「(王族の力、スゴイ・・・?!)」


こうしてアダムズの現国王であるバーデア・アダムズ・ゲムズ国王陛下へ会う事になった。

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