第6話「その男、大公領主から感謝される」

そのまま玄関から入り、目的地へ赴く。


「さてと、魔族発見」

「ひっ?!」


設置してある罠にその魔族が逃げて――――


「ぎゃっ?!」

「あ~らら」


罠に引っかかった魔族に近づく


「・・・ひっ!?」

「(思考力が駄目な魔族は抵抗するかプライドで相手を罵倒するかだが・・・)」


何故かその魔族だけはただただ怯えていた。


「・・・そうか、そこの伸びている金髪の坊ちゃんに無理矢理やらされていたのか」


傍にいた大公閣下達に向き直し


「どうも、閣下のお知り合いの頼みにより――――このアホウを捕縛とあなた方の安全確保をしに来ました。私の知り合いがのちに棟梁達を此方の住まいの修繕による派遣をしてくれるよう手配しますので」

「あっ、ありがとう。君は一体――――」

「私ですか?私は―――――ジーク、魔王を討伐した勇者パーティーの元メンバーの一人です」


会釈をし、大公閣下と閣下の娘さんの縄と目隠しを外す。


「ありがとう。私の事は聞いていると思うが、挨拶を。私がカッツマン・アブルス。隣にいるのが娘のミュレッタ・アブルスだ」

「ミュレッタです。親子共々よろしくお願いしますね」

「よろしくお願いします。さて、早速ですが・・・ご子息、ラルツ・アブルスは知り合いの大商会に拘束するよう伝えておきます。念の為にアダムズの国王に保護してもらうよう手続きを。このアホウに関しては私がアダムズ国王に話を着けますので」


これでアズリー大商会は安全になった。

確執はお互いの商会の顔合わせの時に話をして貰う事は決定となっている。


「さて、早速ですが急いで移動しましょう」

「分かった。ミュレッタ、動けるか?」

「大丈夫です。念の為に彼らの保護も国に届出を出しましょう。お父様」


大公閣下親子の使用人達は殆どが怪我をしていた。


「今、国の方でも問題になってるんで暫く生活が大変になると思いますが・・・大丈夫なので?」

「問題ありません。私はアダムズ王から信頼を寄せて貰っている。爵位は名目上で預かりにはなってしまうが・・・娘は学園卒の後に冒険者として送り出すさ」


アブルス家御用達の行商の御者の元へ戻り、犯罪者集団と気絶しているラルツを纏めて縛り上げた状態で荷台に乗った。


「先に頼む。私は他の者達を後で集めて待っておく」

「分かりました。先に動きます」


行こうとするが――――魔族の女の子が怯えつつ近寄って来た。


「・・・一緒に来るか?」

「・・・!はいっ!」


外套を深く被せる。


「先に商会に顔を出したい。報告する事が色々とある」

「畏まりました」


馬車は動き始めた。


彼が魔族を連れて御者と共に行った後――――――


「お父様」

「ん?何だ?」

「彼―――――」


ミュレッタ・アブルスは微笑み


「神々が遣わした使者かもしれません」

「・・・それは本当かい?」


彼女は頷く。


ミュレッタ・アブルスは人一倍以上に商会の人間としての才能がある。

他の商会員より天才令嬢と呼ばれる所以である。


そんな彼女はとあるスキルを持っていた―――――


そう、【鑑定眼】の神上位である【商神の眼】と言う商売に関して相手を見定めるスキルである。


「私の持つスキルを捻じ伏せられました」

「ほう・・・!もしや、彼は・・・・」


カッツマン大公は感心する。

彼にはそれなりの商人としての対応をせねばと――――


「カッツマン様、王都エデン行きの馬車が来ました。後ろに荷台用の入れ物を用意してありますが・・・彼らを乗せますか?」

「あぁ、よろしく頼む。アダムズ王に手紙は送ってあるな?」

「今ですともう騎士団の手に渡っているかと。ご子息に関しては後であの者の知り合いであるあの商会が送り届けるかと」


アブルス商会ではなく―――アブルス大公邸の面々は次々に馬車に乗り、全員居る事を確認して出発した。


「・・・そうだ、オルガンさん」

「何でしょうか?ミュレッタお嬢様」


御者の隣に座っている執事が聞き返す。


「私、アダムズの方で勉強をしてみたいの。お父様も良いですよね?」

「あぁ、構わんさ。あそこはスキルが使えない者でも同レベルの授業を受けれるからな」

「私もその方が宜しいかと存じ上げます」


こうして、アブルス大公家の一件は無事に解決したのだった。

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