第4話「その男、鍛え始める」

「魔王討伐からそれ程に時は経ってないのに、なんか早く感じるなぁ・・・ステータス確認しないと」


グラーさんから紹介状を受け取った俺はさっさと動き始めた。道中で勇者パーティーで使っていた装備一式は防具以外使えないだろうから無限インベントリバックの中に詰め込んで王都内の門から出て来た。


「どれどれ・・・・」


ステータス画面を開いて確認する。


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[ステータス一覧]

名前:ジーク/進藤 充シンドウテツ

性別:男

職業:遊び人(1/30)

所持スキル:遊び人の心得(0/5)


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成程、支援魔法は別の表示か。

後で確認するとして・・・


「スキルがこれだけか・・・となると他は支援魔法で頑張るしかないか?そうとなると・・・この近くの村辺りにある依頼を熟すか」


今いる王都から出た俺は暫く歩き続けて、そのまま道なりに進む。


それと・・・今の俺は王都ジェステのギルドでF等級ランクを卒業したばかりだ。


ギルドではS等級ランクからE等級まであり、F等級は含まれないが一応仮免許扱いになる。


「さてと・・・ん?」


道中で魔物に襲われている行商の馬車を見つけた。


「グレーウルフか、よぉし!」


念のために買った短剣を使い、スキル【支援魔法】の【武器強化】と【身体能力上昇】を使い、細くて長い紐を持ち手の穴に通してからそのまま魔物に投げつける。


「キャインッ!?」

「バゥンッ!!!」


俺の攻撃で一体がやられて他の複数体のグレーウルフが俺の方に向き直した。


「おう、掛かってこい!駄犬!」

「グルルル・・・」


そのまま紐を自分の方へ戻すタイミングで紐を巧みに扱う。


自分や襲撃を受けた行商に当たらない様に紐を掴みながら大きく振り回す。


「よっし、これで依頼完了!」

「旅の御方!!!」


行商人が馬車から降りて来てお礼を言いに来た。


「本当にありがとうございます。貴方のような御方が来なければ危ない状態になっていました」

「いえ・・・それより、あの魔物に関してはお知り合いやギルドに話を通した方がよろしいですよ」

「と、言いますと?」


馬車に乗せて貰い行商人の隣に座らせて貰った。


馬車は動き始め、村に着くまでに話を進めた。


「実は俺、異界から来た者でして。故郷では仕事先が無く、運よく神様に拾われたんです」

「異界から・・・?!もしや勇者様の所の・・・?」

「えぇ、今は理由があって話せませんが元勇者メンバーです」


行商人がおもちゃを買って貰えた子供の様に目を輝かせていた。


俺は元の話に戻す。


「あの魔物、本来であれば森林内に居る筈の魔物ですよね?」

「えぇ、私も昔の若い頃に冒険者をやっていましたがあの魔物が来るとは思っていも居ませんでした」

「多分あれ、人為的なやり方で襲わせた可能性が高いかと」


そう、本来であれば獣型の魔物は自分の住処に出来やすい場所でもある森林の中でなければ意味が無い。


だが、俺が倒したその魔物は魔石が額に埋め込まれていたのだ。


「となりますと・・・魔石から召喚された魔物・・・!?」

「えぇ、魔石は本来の用途では武器や防具の強化に役立てれる事は知っていますよね?その魔石の中から魔物を呼び出すとなると、出来るのは魔族・・・いやあるいは魔人かもしれない」

「・・・?!」


魔物を呼び出して尚且つ行商人を襲わせたとなると・・・


「商会の所属はどちらに?」

「私ですか?私はリズリー大商会の行商担当員ですよ」


リズリー大商会って事は・・・

アイツのか


「アンナは元気で?」

「アナスタシアンお嬢様はお元気ですよ」


勇者メンバーの時にお世話になった大商会、それがリズリー大商会。

一度、商業絡みの件でアナスタシアン・リズリーを助けた事が切っ掛け買い物が楽になった事がある。


「今回は・・・お嬢さんかもしくはご当主の命を狙っている意味を込めて手を組んで居る数々の商業会メンバーを襲撃しているのかと思います。私が助ける以前に何度か思い当たる節はありますか?」

「・・・あっ、あります。前にライバルだった商会の者が雇われたと思われる野盗に襲撃を受けて商品を駄目にされたとか」


他国ではあるらしいが、その国の騎士団に助けて貰い、その野盗は壊滅したんだとか。


「その野盗の雇い先がアブルス商会・・・カッツマン・アブルス大公のご子息だとか」

「成程・・・カッツマン閣下はこの件に関しては?」


俺がそう聞くと、随分と前に実の息子に部下を使って追い出されたらしい旨の話を聞いた。


メイドはその時、人質として地下牢に閉じ込めているんだとか。


「何人か新入りらしき騎士達に制圧されて執事達も捕まっている状態だとか」

「成程・・・確かアブルス屋敷はアブルス領付近にあったな・・・それじゃあアイテムを幾つか買い漁っても?」

「どうぞ!私を助けてくれたお礼です」


おっ、手持ちの武器より良さげなヤツがある!

アイテムも色々あって良いな・・・


「・・・ん?あの、これ」

「それですか?それはお嬢様が『とある御方に渡しそびれた武器です。出会ったら是非』と」

「(うん、明らかに俺が冗談で言ったつもりだったんだが・・・本当に完成するとはな)」


装備品に関して他にないか聞いてみた。


「でしたら・・・こちらの防具も外套や靴なんかも」

「(これら一式、俺があの時冗談で頼んだ奴じゃねーか!しかも鑑定したらどれもS等級の魔物素材の!!!)」


俺は少し黙り、そして口に出す。


「全く、してやられたな・・・流石、名家のお嬢様だ」

「おや?それではもしかして――――」


俺は頷く。


あのお嬢は俺が通る道や寄って行きそうな場所も含めて完璧に計算したと言う事だ。

俺は装備一式に関して伝えると――――


「成程、だからお嬢様は私に・・・」

「二人してまんまと引っかかってお嬢さんに組まされたと言う訳ですね」


仕方ない。

商会の件に関して俺が片付けておくか。

丁度さっきの魔物で妙に多くの経験値を貰ったしな


「それじゃ、商会の方までお願いします(さて、ギルドに一度立ち寄らないと)」

「分かりました。行きましょう」


一方で――――


「ねっ、ねぇユウキ様?なんか魔物強くないですか?」

「・・・あぁ、確かに、なっ!」

「このままじゃ魔力が底を尽きそうです~っ!!!」


彼が抜けた後の勇者メンバーは魔物討伐に苦戦を強いられていた。

だが、勇者メンバーの一人である勇者ユウキはこうなる事を既に知っていた。


「(全く・・・、アイツに任せろと言ってからこうなるとはな)無理強いはしない!身の危険を感じたら逃げるぞ!」

「「はいっ!」」


やっと最後の魔物一体を倒した後は直ぐにドロップしたアイテムを三人で回収し始めた。

因みに二人の聖女に関しては仕事の依頼が殺到している為、彼女達の分の穴埋めも三人だけで頑張っていた。


「これじゃレベル上げも困難だな・・・そうだ、ギルドに行こう」

「ギルド・・・そう言えばジークさんもギルド所属になったそうですね?」

「ギルドに所属するぐらいであれば国王も許してくれますよね・・・?」


『国王が怪しい』と冒険途中でジークから情報をその時に得たユウキはその言葉を信じ、宰相や騎士団の団長に面会し、話をした。


『分かった。私も情報を伏せて周辺を調べる。君達も陛下に怪しまれない様に動いてくれないか?』

『私の方もジーク殿の話していた件には速やかに調べておくよ』

『ありがとうございます』


宰相に冒険者ギルドに所属して魔物を討伐する事を伝えた。


「分かった。君達も十分に気を付けなさい」

「よろしくお願いします。」


こうして、彼らは国王の許可の元で冒険者として活動をする事になった。


「(勇者パーティーとして動いた時はアイツが居た時は楽だったが・・・冒険者として動いている今、アイツがパーティーを抜ける前と同様に楽だったな)」


謎のステータス減少に関して勇者ユウキは少しずつ真意に近づくのであった。

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