第3話「その男、やがて異世界で勇者と別れる」
「準備が出来た所で・・・一つ、君にプレゼントをあげよう」
「プレゼントですか?」
アスター様からとある物を受け取った。
「これは?」
「これは全能の魔導書。君が勇者パーティーとして活動し、魔王を倒すまでの期間の間にだけ扱える支援魔法の全てを保存してあるんだ。稀に魔王を倒した後でも支援魔法を扱えたりすることがあるらしいけど念のためにと思ってね」
「成程、有難く受け取っておきます」
その全能の魔導書に触れると―――淡い光となって俺の体の中に入る。
すると――――
「おっ?おおおお????なんだコレいきなり全部発動する方法や魔力のコストが頭の中に一気に入って――――おっふ、全部憶えてしまった・・・!」
「いきなり覚えるのは凄いな・・・本来、覚える為にはその魔法のスキルを解放するためのコストや手順や魔力が必須になるんだ」
成程、そうじゃなければ巷で言う"チーター"として扱われてしまうやつなのか
全部憶えたとしてもやらなければいけない事があるはずだからそこから正規の手順をやらないと・・・!
「下界に降りた後は国に転移召喚とやらに呼ばれるので?」
「おっ、早速か。あぁ、そうなるよ。ただ・・・君が呼ばれる国の王族は・・・王様がちょっと信用したら駄目な人でね」
「成程、あっ、そうだ。最後に一つ宜しいですか?」
この力を持つ間は必ず仲間の一人に伝えたい。
それの許可貰っておかないと・・・
「あぁ、それなら問題ないさ。君と同じ場所から転移召喚されている人が居てね、彼が代表の勇者になる」
「成程、分かりました。その彼にだけ自分の全てを教えたいと思います。皆さん、お世話になりました!」
深々とお辞儀をし、そのまま転移をする。
一人の男が転移しに行った後――――
「ウィーナ、彼の居る所の教会に在籍している聖女とコンタクトを取ってくれないか?」
「畏まりました。準備が出来次第に、聖女に憑依して彼らを陰ながらサポートします」
大天使の一人、ウィーナは大天使の座を降りてそのまま聖殿の門へ行った。
「さて、君には期待しているよ。進藤テツ君」
賑やかな街並みの王都、そこには多くの人々や多岐に渉る職を持つ者達が在籍していた。
――異世界「アストロダム」、ジェステ王国の謁見の間――
「ここは・・・どこだ?」
「どっ、どうしよ、美咲っ!よくわからない所に居るんだけど?!」
「由衣、落ち着いて。先ずは辺りを見て状況把握をするのが大事よ」
ふむ、ここが転移召喚先の――――
ふと、男の方を見ると・・・よく見た事のあるゲームの格好になっていた。
その男も俺を見て少し驚いた表情になる。
「陛下!召喚に成功しました!」
「うむ、ご苦労」
これが、俺にとっての初めての異世界での冒険の始まりだった――――――
魔王を討伐する旅に出て暫く経ち、念願だった魔王の討伐を果たした。
「テツ、パーティーを抜けてくれないか?」
「・・・あぁ、分かった」
一人の勇者メンバーの目線のアイコンタクトを取り俺は荷物を持って出る。
「――――――」ボソッ
「・・・・・・」コクン
そして、今日から俺は――――転移者ではなく転生者としての姿に変えて活動することにした。
「・・・!ジークさん!?」
「やっ、受付のおねーさん」
久しぶりに冒険者ギルドに入り、受付に一直線で向かう。
「ギルマスの顔を貸して貰いたい。あと、転職を頼む」
「わっ、分かりました!今準備してきます!」
周囲に気付かれないように小声で話し、受付の奥の部屋に入る。
「やぁ、グラーさん。連絡は?」
「上から既に届いてるよ。しかし・・・本当に勇者パーティーを抜けるとはな」
俺は苦笑いをし
「事情が事情だからね」
そう答える。
受付の人が出て行った後に来たのは―――ジェステ王国の冒険者ギルドの責任者であるギルドマスターのグラー・カッツさんである。
彼とは勇者パーティーで装備を整えた時にギルドにたまたま入って冒険者の資格を得た事から知り合った。
「――――って事で、俺が頼んでパーティーを抜いてもらったんだ」
「成程な、表向きは支援魔法でサポートしつつ弱々しい戦闘を熟す、と。・・・今のお前さんじゃすっかり印象が違うな」
まぁね、これでも調整を極限までやったからね
「それに・・・この国の宰相様はしっかりと国王の指示がなくともアイツ等をサポートしてくれるさ。アイツもわかっているし」
「そうか・・・それじゃ、転職をするんだったな?ついて来い」
「お手柔らかに」
グラーさんの後をついて行き、転職の間に入る。
「アマネさん・・・いや、ウィーナ様、お待たせしました」
「丁度来ましたね。こちらにお座り下さい」
「そんじゃ、俺は別の業務があるから転職を終えたら俺の所に先に来な」
「分かった。そうする」
「では、始めましょう」
グラーさんが出て行った後にウィーナ様がいつもの格好に戻る。
『アマネ、いつもありがとうね』
「いえ、これもお二人の協力の元ですから」
二人と知り合ったのは偶然にも魔王を討伐する為の選定として聖女を迎えに行った時だ。
聖女アマネと聖女リリスの二人を向かい入れた。
二人の聖女は姉妹でアマネは双子の姉にあたる。
「しかし、テツさん。貴方が行動した通りの結果になりましたね?」
「だろ?これも弱い自分を演じるのに苦労したよ」
「ふふっ、アスター様から受けた加護が強すぎて私もサポートするのに必死でしたからね」
因みに双子の聖女は二人共勇者と俺とちょっとした協力関係にあたる。
ジェステの宰相様は裏方として国王には内密に協力している。
「さて、転職が終わりました。職業カードをご拝見下さい」
「あぁ、有難う」
さてさて、パーティーを抜けたのは良いけど・・・この世界に来る前に一度聞いたとおり何故か俺が扱う支援魔法の殆どは異例。
向こうのアスター様の所で話を聞いたとおり、その支援魔法全種は何故か失っていなかった。
代りに攻撃魔法のみ全てリセットされたようだけど・・・
「えーっと、職業は【遊び人】と。その先の職に上がるには先にLV30程になる必要があるそうです」
「初心に返って鍛えまくるさ。さて、それじゃあもう行くよ」
世話になった二人に礼を言い、ギルマスの所へ戻る。
今回の目標は――――
「ん?次の国に?」
「あぁ、領村を跨ぎつつ行こうかと。グラーさんの知り合いってその先に居る?」
俺がそう聞くとグラーさんは頷き
「国境も跨ぐ事になる。隣国の名は【迷宮都市王国アダムズ】だ。大昔に存在していた史上最強のハンターと呼ばれる冒険者アダムズ氏が攻略を満期したとされるダンジョンが多く点在する国で・・・一応、ギルドの長に加えて領主をしているヤツが居てな。ちと紹介状用意してくから待ってろ」
「分かった。その前にあるのは確かメデッサ領だよな?そこの依頼をアダムズのギルドで報告は?」
「領主から直接受けた依頼をギルドへの報告も可能です。領主への連絡もして確認がとり次第ですが」
ギルマスの傍に居た秘書長のミュナーさんがそう言う。
彼女はグラーさんの姪にあたる人で結構優秀な人だ。
「確か、一度入国した事ありますよね?」
「勇者パーティーの時に一度ね。でもそこのギルドは行かずに武器とか防具の装備品を調整する為に寄った記憶があるかな?確か」
そう、俺がまだ行ってすらない国はまだいくつかある。一つの国境に着きいくつかの領村に行ったりも少ない。
だからこそ、今日から行ってない所も含めて流浪をしたいと決めた今日この頃。
「そうですか。確かアイテムを作ったりもしましたよね?」
「うん、ポーション系は全部アイツに持たせたからね」
イチから始めて頑張らないと
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