第13話 もう一人の味方
「備品管理課? ああ、地下の備品室にいる人?」
カッコつけて管理課なんて言ってみたけど ばれてる。「はい、」
「自分が菅原です。どんなお話しでしょうか?」
「はい、あのー、実は8月にあった橘の……」ここまで言うと菅原さんは
「中で伺いましょう。どうぞ、」と、監視カメラのモニターがずらりと並んだ部屋に
招き入れてくれた。
「自分、あなたがあの備品室の担当になられた時、何だか非常に違和感を覚えましてね。なぜあなたの様な若い方があそこにと… そして、8月の橘さんの飛び降り自殺の時 遺体のそばで座り込んで泣いておられた方だと思い、その事となにか関係があるのかと、なぜかとても気になっておりました。」
「菅原さん……」 俺のこと 気にしてくれていた人がいたんだ。じわっと体の中から何かがこみあげてきて、うかつにも涙ぐんでしまった。
「どうされました?斉藤さん、」
「いえ、私の事気にしてくれていた人がいたなんて 思いもよらなかったから……」
「自分は以前、刑事だったんですよ。警察でちょっといろいろありまして 退職したんですが、その頃の刑事の勘みたいなものを感じましてね。 橘さんの自殺について
調べていらっしゃるんですか?」
「はい、あの時、警察に提出された屋上のカメラの映像を 私にも見せて頂けないかと思いまして。」
「いいですけど、何も映っていませんでしたよ。」
「屋上には いくつのカメラがついているんですか?」
「出入口に一つだけですが、」
「そうなんですか、じゃあ橘が落ちたところの映像はないんですね。」
「そうなりますね。ただ、出入口は一つだけですし、他の所から屋上に行く事はできません。彼女が屋上に行った所は映っていますよ、他には何も……」
「………あのー、それと4日前の朝8時頃の映像も見せて頂けませんか?」
「4日前?」
「はい、12月2日の朝です。」
「なぜ?」
「私が屋上に行ったんです。橘が飛び降りた所がどんな感じの所か知りたくて…
屋上に行った事がなかったんですよ。屋上のフェンスはちょっと低いですよね。」
「あなたまさか・・誰かに落とされたと思っているんですか?」
菅原さんは険しい顔で俺を見た。
「はい、もっと早く調べれば良かった。もう4か月も経っている。今さら証拠なんて
見つからないとは思うんですが 始めは私も自殺なんだろうと思っていたもので…」
「それなのにどうして他殺を疑うようになったんですか?」
「最近知ったのですが、橘は母ひとり子ひとりの家庭で そのお母さんに遺書を残していないのはおかしい、それにある人から私に対しての圧力が凄くて そのおかげで
地下に追いやられたんです。私を排除したいようなんです。」
「ある人とは?」
「いや、それはまだ…」
「この人ですか?」
菅原さんは 俺が今朝あちこちの通路に貼って歩いた写真のコピーを広げて見せた。
「あっ、これ…」
「これ貼ったのあなたでしょ…」
「あっ…はい…」
「今朝、社員の方々が騒いでいたので 全て回収しておきました。」
「私、監視カメラに映っていましたか?」
「いえ、通路のカメラはダミーです。各部署の出入り口にはちゃんと本物がついていますよ。私も先ほどまでは誰がやったのか分かりませんでしたが 今のお話を伺ってあなただと思いました。」
「そうなんだ…」
「あなたが他殺で犯人を突き止めたいとお考えなら、自分も協力しますよ。これ、警察に提出した8月2日のデーターです。4日前の物は無理です、私用には出せません。
これも早めに返して下さいね。でも、難しいですよ。証拠を見つけるのは…焦らないで下さいね。」
「出入口の映像を自分の時と比べて見たかったんですが、ダメですか… それと、
ここに侵入してモニターの映像に細工するなんて事は出来ますか?」
「今の監視カメラは難しいと思いますよ。よほど機械に精通している人なら出来るのかなあ…」
「じゃあ、短時間では無理ですね。8月2日の画像をしっかり見てみます。協力して下さって本当にありがとうございました。感謝します。」
二人目の協力者が出来た。以前の俺は何もせず、どうせダメだと思っていたのに行動に移せば道は開けるものだと 今は思える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます