第3話 猫になったのかぁ~
見覚えのあるブルーのプラスチックの円柱型。 しかし、確かにでかいゴミ箱ではあったが 俺がスッポリ収まり、しかもまだ周りは広い。
「どうなっているんだ?・・・あ!猫はどうした?上手く落ちて逃げたか?」
その時、変な事に気が付いた。俺、両手両足をついて立っている。どういう状況なんだかよくわからない。とにかくゴミ箱の中から出よう。手を伸ばしてゴミ箱の縁に手をかけようとするが手が伸びない、プラスチックの壁で手が滑る、それに手が変だ。
「どうしたらここから出られるんだ?体に痛みがないから思いっきりジャンプしてみるか、」
足元はゴミだから足で上手く蹴ることが出来るか?とにかくやるしかない。俺は結構
ジャンプ力には自信があるんだ。体を縮めて足で蹴る。思いのほか上に上がった。
そして、ゴミ箱の縁に両手両足で立った? それからストンと着地した。
何かスーパーマンになった様な感じだ。周りが良く見えるようになって来た。イルミネーションのせいだろう、 俺は歩き出した両手両足を使って、この猫の足の様なものは俺の手なのか?走ってみた両手両足を使って猫のように。
繫華街は明るい 一体俺はどんな姿をしているのか 想像がつかないので出来るだけ
目立たない様に歩道の端っこをそっと歩いた。
コンビニが見えた。「あそこのガラスに全身が写るかも」そう思って急いでむかった
コンビニのガラスの壁に猫が写った。
「これが俺かぁ?噓だろう?」前足を動かしてみる、ガラスに写る猫も前足が動いた
頭を右に動かすと やはり同じように動く。
この猫は恐らく屋上から俺と一緒に飛び降りる事になってしまったあの猫だ。
俺は完全に猫になってしまったのか?
声を出してみる「どうなっているんだぁ~」と、しかし「ニャー」としか声がでない
じゃあ、俺の人間の体はどうなったんだ? もう一度さっきのビルの間に入って自分の身体を探したが見当たらない。
しばらくの間 状況を把握する事が出来ず呆然としていた。
どのくらいの時間が過ぎただろうか、 こうなった以上現実を受け入れるしかない。
涼子の所へ行こう。 彼女は動物好きだから俺のこと飼ってくれるかも知れない。
彼女のアパートは ここから3駅先だ。 まさか電車に乗せてはくれないだろうから
歩くしかないか。 猫になって歩くと軽い 早歩きも軽快だ 走るとやたら速い
身体能力半端ないな。
自分でも意外だが この状況をもうすでに受け入れている。 まあ、死ぬ気だったんだから猫になって生きていけるのは悪くないかもしれないと 思い始めている。
30分くらいで いつも見慣れた涼子の住むアパートが見えてきた。
言葉を話すことが出来ないので どうやって部屋に入れてもらうかが問題だ。
ドアの前に座って思いっきり「ニャーニャー」と鳴いてみた。 反応がない。
もう一度「ニャーニャー」と声を出した。すると、隣の部屋のドアが開きおばさんが
出て来て「こらー!あっちへ行け!シッシッ!」追い払われた。
少し離れたところから改めて涼子の部屋を見ると風呂場に明かりがついている。
「風呂に入っていたのか、上がるまで待つか・・・」しばらくすると風呂場の明かりが消えた。
もう一度 涼子の部屋のドアの前に立った。少し爪を出してドアをカリカリ引っ搔いてみた。必死にカリカリするが反応がない。 人間ならノックすれば良いのだが・・
何か良い方法はないか・・やはり猫は不便だ。 思いっきり体当たりしてみるか、
1メートル位後退りして勢いをつけ、ジャンプしてドアに体当たりすると、ドン!と
なかなかの音がした。 すると、部屋の中から「誰?」と涼子の声がした。
俺は前足でドアをカリカリした。 ドアが少しだけチェーンを付けた状態で開いた。
今の俺にはそれだけで充分だった。
「誰ですか?」と涼子、俺はもう部屋の中だ。「ニャー (俺だよ涼子)」
「え!猫?君が今ドンってやったの?」 「ニャー (そうだよ)」
「困るなあ、このアパートはペット禁止なのよ。出て行ってくれないかなあ」
「ニャーニャー(俺だよ、優だよ、)」俺は涼子の足に体をスリスリした。
「もう仕方がないなあ、今夜だけだよ。明日は出て行ってよ、大家さんに𠮟られるから、」 「ニャー(助けてくれよ 涼子・・・)」
「ちょっと君、体が汚れてるよ。洗ってあげるからおいで、」
「ニャー(ちょうど風呂に入りたかったんだ)」
涼子は俺にシャワーをかけてボディソープで洗ってくれた。
「君、野良なのに嫌がらないね、気持ちのいい?」 「ニャー(気持ちのいいよ)」
きれいになるとタオルで拭いてくれ、ドライヤーをかけて乾かしてくれた。
「ニャー(ありがとう)」 「洗うと毛がフワフワだね、可愛い」
俺は涼子の手をペロペロと舐めた。
「お腹が空いてるの?困ったなあ 猫が食べる様な物あったっけ?」
台所に行って何か探している。
「おかかご飯 食べる?」 「ニャー(俺、好きだよ)」
残りご飯におかかを混ぜて小さな皿に入れて 俺の前に置いてくれた。
「ニャー(旨いよ、ちょっとだけ醬油かけてくれたら最高なんだけどなあ)」
「いい食べっぷりね、誰かさんに似てる。」 「ニャー(それ俺のこと?)」
「はい、お水」涼子は小鉢に水を入れて出してくれた。
ペロペロ舐めるが なかなか上手く飲めない。
「私、もう眠いから寝るね。」涼子はベッドに入った。つかさず俺もベッドに行く
「え――っ、一緒にねるつもりなの? なんか図々しい猫ね。私、一人じゃないと
熟睡出来ないんだけどなあ」
「ニャー(噓つくな、いつも俺と一緒に寝てるじゃないか)」
俺は布団に潜り込み 涼子の左腕にピッタリくっついて丸くなった。
「やー可愛い、どうしよう 情が移るなあ」
涼子は右手で俺の頭や背中を撫でてくれた。猫の暮らしも悪くないかもなんて思ってしまった。今日はいろいろ衝撃的な事が起こって随分疲れた。もう、瞼が重い。
明日は会社に行かないからゆっくり寝よう。涼子の体温を感じながら眠りについた。
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