今は昔。ー2ー



 その竹の中に、もとひかる竹なん一筋ありける。あやしがりて、よりて見るに、

 筒の中光りたり。その中を見れば三寸ばかりなる人、いとうつくしうていたり。



「歴史的仮名使いねぇ…」

 隣の席で嘆く声がした。みてみれば教科書すら開いていない。

 竹取かぐや。隣の席の住人。どうやら国語が苦手らしく、国語の時間だけは僕を頼ってくれる。

「竹取さん、ちゃんと教科書を開く!ページは確か…118!」

 元気よく言う。彼女には笑顔になってほしいから。休むのだってもったいない。あれ?

「竹取さん?」

「ああ、118ページね。」

「うん。」

 何か考えてる彼女も可愛いなあ。




 勘のいい方はお気づきだろう。僕はかぐやのことが好きだ。




 ん、なんか笑ってる?

「竹取さん?どうしたの?」

「ううん。何でも。」

 心の中だとかぐやって呼んでるのバレたか?ヤバい。それだとまずい。

「おい、そこ。何はなしてんだ!」

「「すみません!」」

 僕は彼女のこういう、たまに気が合うのも好きだ。でも、それを口に出せば彼女は僕を振るだろう。ただでさえ、文武両道の名家に生まれてしまった以上多少怖がられるのも仕方ない。そして、怖がられるのにはもう慣れた。でも、かぐやには怖がられたくない。だから、僕は彼女と一緒に笑ってしまう。この時間がもう少し続けば良いのに。なんて思ってしまう。



 なんて言えば、怖がられる事無く、彼女と付き合えるだろうか。うーん…



 教科書に目がいく。そこには「いとうつくしう」の文字。「いと」とはとてもという意味で、「うつくしう」はかわいいという意味。

 




 …これだ。いや、おかしくないか?…いや、これしかない!

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