人類の夢

――Kai――

 どうしよう。出発のときからずっとあり続けた気持ちだった。


「さて。では、カイ君」


「…………うす」


 大工場の駐車場で、緊張した面持ちのカイが小さく頷いた。後部座席、リィラの隣で。


 同じ問で、ずうっと止まっていた。


 道徳倫理というものを教えられず、生まれた時からファイマンとして正規軍への忠誠を誓っている兵士。アマべという親友を喪ってなお、その忠誠を揺らがさなかった者を、どう説得すればいいのか。


 ひとつ希望があるとすれば、カイと戦いたくないと言っていたことだった。もしアマべのことで死というものを理解して、好きな人を殺したくないという感情が育ったのであれば、もしかしたら真摯に語り続ければ……。


 ……本当だろうか。それで、いいのだろうか。ミィにとって、ファイマンは生きる意味なのだ。


 ミィを捨ててファイマンとして生きることは、たぶんできる。そうなるように育てられたのだから。


 だが、逆はできないだろう。


「……生きる中での喜びをひとつ捨てられても、ひとつの喜びだけで生きていくことなんかできない……っすよね」


 そう呟くと、リィラは首を傾げ、オークラーは言葉の続きを待ったが、ニコは微笑んだ。


「ファイマンという人生を捨て、ミィとしてだけ生きていくことができるかどうか、かね」


「そうっす」


「それならできるはずだろう。人は元々、ひとつの物事のためだけに生きるものではない。生きるうち、目標が代わり、生きる意味が変わっていくのだろう」


「でも、そう簡単に変えられるものじゃないですよね」


 彼女は頷いた。


 問題は、その瞬間だ。それはニコでも理解できるようだった。


 だが、と言葉を発したのは、腕巻きサリペックガジェットのモニターで腕を組むオークラーだった。


[お前のおかげで、色々と変わったこともある。そこのバカに、きっちりと正当な文句を言えるようになったりな]


「なにおう?」


 臨戦態勢になったニコの肩を掴んで止めるが、カイはまだ不安の顔をしていた。だがオークラーは、いつもの頼もしい笑顔でいた。


[そう、しおらしい顔をするな。信じてくれないのか?]


 すると、途端にカイの表情が引き締まった。


「信じるっすよ。隊長」


[ふふ。お前を部下に持った覚えはないぞ?]


 リィラだけが、なにも言えずに寂しそうな表情をしていた。


 それだけで、たまらなく嬉しかった。


「なんか言ってくれようとしてる?」


「し、してねーし」


「わかってんだぞ〜お兄ちゃんは〜」


 リィラの頭を撫でてみる。妹は思い切り顔をそらすものの、撫でられてくれた。


「ミィとはまぁ? 恋愛的なアレだけど、リィラの前でイチャつかないから安心しろ〜?」


「当たり前だろバカ。……ったく。そーゆーバカみたいなのしてっからバカなんだよ」


「残念。する前からバカですよ〜」


 そう言うとリィラは撫でている手を弾いて、カイの胸ぐらを掴んだ。


「なーにが恋だ。アタシのが先に友だちだったんだから、アイツばっかりに構うなよコラ。アタシのついでにアイツだからな! 妹なんだろっ!?」


「ぐふ……うん」


「笑うなコラ!」


 妹が可愛すぎて困ってしまうカイだった。ミィとふたりで構え攻撃をされたらどうなってしまうのか……。


 困るねぇ。カイはすでにウザったらしい微笑みをたたえていた。


「――っしゃ! 行ってきます! 確実に告白にいける所までいって、次のデートで結ばれますんで!」


「内戦を終わらせる作戦ってことを念頭に置きたまえよ?」


 ドアを開け放し、勢いよく飛び出して、両手で思い切り伸びをした。


 この国の命運を変えるデート作戦だが、不思議ともう緊張していなかった。初の恋人になるであろうミィが、死ぬほど可愛いという点以外に怖いところはない。


 そうして大工場へ向け、数歩。


「――カイ君ッ!」


 ニコに呼ばれて振り返った。


 嫌な予感がして、自分が盗聴器の類を付けていないことを思い出した。


 それから、尋常ではない呼び声がなんだったのかという疑問がまた、汗のように嫌な予感として滲み出てきた。


「あぁ。すみません。盗聴器……」


「ファイマンは……ミィは来ない」


「え……どういうことっすか?」


 様々な予感が渦巻いていく。ファイマンに何かがあったんじゃないか。別の作戦を命じられてしまったのではないか。


 その中には、事故か何かで死んだんじゃないかなんて、そんな予感もした。


「……いったん、戻ってきたまえ」


 いやいや、と首を振って予感を打ち消してから、引き返して、今度は助手席に座った。


「あの、来ないってクロウディアさんが?」


「……それに近い。その……」


 彼女は手に、サリペックではなくスマホを持っている。クロウディアに渡されたという秘匿通信機だろう。


 ふとリィラやサリペックのオークラー見ると、彼女たちも訳が分からないようだった。


「動画が……ちょうど来たのだ」


「はぁ……」


 口が日常を保とうとする。頭が現実を攻撃し始める。


 なんだ、その言い回し。


 ――やめろ。


「まず、安心してほしいんだが、ミィは生きている」


 彼女は眉を潜めたまま、動画を見つめていた。画面に触れ、再生バーをいじって、悲痛な顔で嗚咽を漏らした。


「……生きていることが・・・問題なのだ・・・・・


「ど……どいうことすか? 意味が分かんないっすよ?」


 彼女はオークラーの[お、おい]という困惑の声さえ聞こえてないかのように、まるで、取り憑かれたように画面を眺めていた。


「……約十四分五デシもいらないはずだよ。再生時間で、覚悟を決めておくべきだった。キミたちは、なにが起こったとしても冷静にいるんだよ。オークラー君も……」


 ニコはメーターのところへ通信機を立てかけた。通信機の画面中心には、この世界での一時停止を示すであろうマークがあり、その向こうにコンクリートの床と、真っ黒な服のズボンと靴が映り込んでいる。


 オークラーにも見えるようにとサリペックを構えてカメラを向け、彼女は画面を人差し指で叩いた。


 動き出す動画。目前の、まるで精神病院に設置される窓付きの頑丈な扉を下から舐め上げるように映し、窓を覗き込んだ。


 画面いっぱいいっぱいに、驚いたミィの顔が映し出されている。


 その瞬間に、カイは画面を指でついて停止した。


「……ウソだ」


「カイ君……」


「これは……あっ、AI生成っすよ。ほらさ、だって……」


 言葉が出てこなかった。リィラとニコの視線に耐えかねて、もう一度画面をつく。


 するとニコが画面を止め、再生バーを指さした。


「……キミが予感している通りだ。ミィは例の爆弾で爆破され、粉々になった。文字通りにね」


「――――っ」


 あまりにもあっさりと言うので、カイは言葉を受け止め損ねていた。


「だが問題は、その次だ。……件の瞬間は飛ばす」


 彼女がトンとゲージの途中を押すと、Pp色に光る塊が見えた。


 形状は、泥をかぶった岩のようなのに、人間の肌の色が見えていた。


 ……三十二部隊も、こんな感じ……だったな。


 グシャグシャになった人間を見る経験があるせいか、現実として、あれがミィであるとハッキリと認識できていた。


「……ぉ……え」


 後ろでリィラがえずくのが聞こえた。


「リィラ君は目をそらしておきたまえ。これが、爆発してから少し。そして……こう、だ」


 ニコはさらに先に進めた。


 塊が、大きくなった。うごめいている。


 ――――生きている。内側から、爆発したはずなのに。


「何が問題なのか――――分かるね?」



――Phiman――

 感覚があった。痛みだ。他には何もない。


 光、音、匂い、重力、味、思考。なにひとつ。


 まず、光があった。だがそれを受け取るものがなかった。


 次に頭と外の境目が戻った。それから痛みを感受し始め、痛みを解釈する思考がやっと再生した。


 ――痛い――なんだこれ――――。


 想像を絶する痛みだった。どんな訓練でも受けたことのないような。


 身体の中と外が混ざっていた。自分が、小さかった。それが一箇所へと集まっていくのが感じられた。


 それがだんだんと、自分としての大きさに戻っていき、痛みもまた、大きくなっていった。


 ――たすけて――アマべ――。


 ――――カイ――――。


 ふと『撃たれるのは嫌じゃん』と心配してくれたカイの表情が思い浮かんだ。


 ……あぁ……デート。


 ……間に合うかな……。


 突然にあらゆる感覚が戻る。


 薄暗い中に、一糸まとわぬ自分がいた。髪が、驚くほどに伸びている。


 地毛のロング、か。つやつやしてて、あのウィッグよりも毛質がいい。カイは喜んでくれるかな。まだ自分に起こったことを認識しきれていないファイマンが、そんなことをぼうっと思った。


「……戻ったわね」


 扉の向こうから、クロウディアの声。そうだ。こいつに閉じ込められて、なにか爆発したんだ。部屋の中に爆弾らしいものは無かったから……。


「ボク、か? 爆発したのは」


「……えぇ。でも……重要なのはそっちじゃないわ」


 ファイマンは少し考えて、立ち上がった。


 窓の向こうでは、クロウディアが右手で携帯を構え、こちらへと向けていた。


「どういうことだ? 他に何がある。人類の夢とやら、とかか?」


 首を傾げるファイマンに対し、クロウディアはうつむいて、左手で長い黒髪をいじり始める。


「……そう。人類の夢」


 彼女は顔と、伏せたまつ毛を上げた。


 大きな黒い目が、じっと、見つめてきていた。


「……完全な不老不死・・・・よ」


「ふろうふし? なんだそれ」


「……あなたは、死ななくなったの。どんなことをしても」


「………………え?」


 ファイマンもまた、目を大きくした。


 死なないのであれば――。


 ――死んでもまた会おうという約束はどうなる――――。


「だって……じゃあ、アマべはどうなるんだ!」


「…………」


「死んだらまた会えるからって約束したんだぞ! 死ななくなったってどういうことだよっ!」


 クロウディアはなにも答えなかった。


 ただ携帯をこちらへと向けるばかりだ。


「やだ――いやだ! アマべに会うんだ! 会えなくなるなんていやだ! 戻せよッ!」


 扉を叩く。硬く、重厚であり、ビクともしない。


「……任務が終わり次第、戻すわ」


「終わり次第って……」


「……カイを殺すことが元々の任務。……そうでしょう?」


 またあの笑顔が、ふと思考を占領する。カイと、アマべとが、交互に。


「待てよ。だってカイは……」


 好きと言ってくれた。自分もカイが好きだった。


 殺したくなくなったのは、アマべを思い出すからだった。撃つ瞬間はなんともなかったのだ。それが後から後から、あの瞬間を思い出しては嫌な気持ちになってしまっていた。


 戦いたくなくなったのは、カイがそう言ったからだった。無理に戦って殺せば、死んだ先で嫌われるかもしれない。


 殺さなくちゃいけない任務の対象を殺したくなくなるなんて、ダメだって分かっていた。でも。


 また会えたって、それじゃ意味ないだろ――。


「……なら〝死〟を返さないわ」


「だって……じゃあ、他のことをする。なんだってするから!」


「…………」


「お願いだから……。あ……ボクはもうやめる。ほらもう、いいだろ。もう殺してくれよ……」


 彼女は黙ったままだ。


「なんで……こんなこと……」


「……時間がないわ。……時限爆弾がじきに、爆発し始めるころなの。……国会が・・・燃え尽きる・・・・・前には、あのノイズを――カイを殺して」


 彼女は扉を開いた。


「……計画にずれは許されない。……良い子だったら、こんなことしなかったのに」


 彼女はまだ、撮影の手を下ろさなかった。


「やだよ……」


 死を奪われた者はただ、うずくまって泣き続けていた。



――Nico――

 動画を止め、中に燻る熱をどうにか制御した。


「……ふ、不老不死を完成させるだと?」


 ニコがようやく言えた言葉だった。とはいえ、信じざるを得ないこともある。


 クロウディアがやった。少なくともニコの中では、たったそれだけのことが不可能を可能にする証拠であった。


 ふと横を見た。ニコでさえ、彼の周りにどす黒いものが見えている気がした。きっとカイも同じ熱を持っているのだろう。


「なぁカイ――」


 言葉の途中で、目に見えないほどの速さでカイの肘が動き、助手席のガラスを粉々に砕いた。


「……カイ……くん」


 自分の喉から泣きそうな声が出てきて、自分でもビックリしてしまった。


 ……あのとき、クロウディアに感じたものと同じだ。得体の知れない……。


 カイは少しも動かず、通信機の画面をじっと、見つめていた。


[落ち着け、カイ。自分を見失うな]


 震えた声が聞こえた。彼女はこの闇を、よく知っているのだろうか。


「カイっ!」


 後部座席から飛び出し、ドン、とカイの後ろからリィラが乗って、しがみついた。


「……リィラ」


 カイがようやく、呟いた。


「クソッタレなんだろ、気持ち。わかるよ。ずっとアタシもそうだったし……その」


 回された幼い腕が、きゅっと胸を抱き締めてきた。


「そうやって、自分に噛み付いてんじゃねえよ。もっとクソッタレになるだけだよ……」


 その手をカイは、包むように握った。


 それだけで不思議と、暗く見えていた彼の表情が和らいでいく。


「……ごめん」


「謝ってんじゃねえの。……じゃあ、アタシのヤなとことか言えよ。あるだろ」


「リィラに噛み付けねえしさ……」


 カイはどうにか、いつも通りの笑顔をたたえていた。


「……リィラだったらイヤなとこも、可愛いとこだぜ」


「ば……キモいこと言うなバカっ」


 少女はカイの胸を、優しく叩いた。


 それを見て、ニコもオークラーも同じ顔で胸をなでおろす。


 こうも次から次へと……。


 最後まで持つのか、カイの心は。


「…………すんません。八つ当たりで落ち着くとか最低ですよね……」


「バカいうな、人間の機能だ。それより、いいかね、考えるべきことがまた増えた。いまは考えるべき時間だ。大急ぎでな」


 ニコはエンジンをかけ、車を出発させた。


 大急ぎ。その言葉をオークラーは、眉をひそめた顔で受け取った。


[国会が燃え尽きる……か?]


「そうだ。クロウディアはすでに、正規軍へとあの爆弾を撒いていると考えていい。リードを握っている飼い主を始末する気だ」


[く……なんて奴だ。それをあえて教えたということは……]


「正規軍を壊滅させるのは〝第一波〟でしかないということだ。次にはファイマンが襲いかかり、第二波として我々か、あるいは……」


[……国民を人質に、か?]


 T.A.S.はあくまでも、この国の住民を守る準軍機関だ。であれば、他人の思考を鑑みないクロウディアでさえ、誰が人質になりえるかは簡単に分かるはず。そうニコは考えていた。


[だ、だが、そのあたりの通行人ならまだしも、どうやって我々に爆弾を仕込むんだ?]


 そう。それもまた、謎なのだ。


 爆弾を作り、撒いているのはクロウディアである。


 爆弾の火力を押し上げているのは燃料化を促進する添加剤である。


 人の笑顔を認識して点火する発火装置がある。


 このうち検証して真実であると判明したものは、ひとつもないのだ。ひとつも。


「全く分からん! オークラー、ヌコマタ博士は到着したか確認してきたまえ」


 少しの間のあと、サリペックからため息が聞こえた。


[まだ来ていないらしい]


「渋滞にでもハマったか……いまはそれどこじゃないのだがね」


 だが、あくまでヌコマタは保険だ。可能性のひとつを潰すに過ぎない。


 根本的な解決を目指すのであれば……。


「……我々も国会に向かうべきではないか」


 リィラが後部座席から顔を出す。


「ちょ、ちょっと待ってよ。もうすぐ爆発すんでしょ? だって」


「が、爆弾を手に入れられるチャンスでもある。抜本的に解決するならば、いいか、敵の添加剤と発火装置を手に入れ、解析するべきなのだ」


 まず、爆弾を解除するすべが存在することは確定だ。人質を爆弾に変えておいて、こちらが降伏したのちに爆発するのでは人質の意味が無い。


 であれば、その術を見つけ、こちらで作ってしまえばいい。


[……少しいいか]


 オークラーが、なにかもどかしげな表情をしていた。


「どうした」


[さっきの動画、爆発してから少し後の状況を見せてくれ。ガラスに、撮影者の――クロウディアの顔が映っていたように見えてな。それどころではないと分かっているが……どこかで見たような……]


「どこかで見たようなも何も、姉妹なのだから似た顔なのは当然だろう?」


 車はインターチェンジから高速へと登っていく。


 ニコは携帯を取り、少し迷って後ろへ差し出した。


「リィラ君。頼めるかね」


「えっと……あ、ホントだ映ってる!」


 ニコの首の横を通って、サリペックにずいと差し出される。


[だがこれで、せめて戦う相手の姿を――あぁ!?]


「ど、どうしたのかね」


[思い出した! 任務で見たぞ、この顔!]


「なんだと!?」


 ハンドルを取り誤り、高速のレーンへ躍り出て、高速への合流で来ていたホバーがクラクションを鳴らしながら避けていった。


[クレイの家族を迎えに行ったときに、野次馬にまぎれて立っていた。お前に似てたからよく覚えてる]


「――避難民には埋め込み済みということか! いますぐテレビの類を切るように指示しろ! わたしの顔を見せるな!」


[了解ッ!]


 オークラーは急いで向かった。これでひとまずは……。


 ……待てよ。もう埋め込み済みであるとすると……。


 あれだけニュースで騒がれて、いまのいままで一度もニコの顔を見なかった、ということだろうか。確率はあるだろうが、果たして本当にそうだろうか?


 おかしいように思える。同時に、疑いの域を出ないのも確かだ。


 どこまでを真実とすればいい? 仮定ひとつにつき真実ひとつを導き出せる状況ではない。


 ――従うべき直感なのか――?


 ――疑心暗鬼になっているのか――?


「……アハハ」


 思わず笑うと、リィラがうめいたような声をあげた。


「なんで笑ってんの……?」


「いや、ね。いままで出会ってきた研究者はみな、見れば分かる自明な事象に対して頭を抱えていたのだ。で、わたしの所へ駆け込んでくるなり言うのだよ、自分が正しいのか分からない、って」


 これが未知の領域で迷った凡骨研究者どもの見る景色か。


 これが、巨人の渡れぬ深淵か。


「ようやっと、その気持ちが分かったよ。回避できぬ問題に、立ち向かい続けなければならない、この瞬間にね」


 ハイウェイの外の景色を、T.A.S.が守る対象としてきた街並みを眺める。住民はみな、増加した犯罪に不安を抱え、ヒーロー・カイの登場に心踊らせ、水面下で起こっている内戦に気付くことなどなかった。


 これから軍が壊滅し、この国が混乱に陥れられるであろうこのときにさえ、いつもの表情で輝いていた。


 ふと隣を見る。


 カイはまだ、目前だけを見て、沸き起こる熱と戦っていた。

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