第27話

それでも学校事務局の女性も内心では悪いと思っているのか「…さんには、来年の同じ授業を無料で受講してもらえるようにしようかと思っているんですよ…」と言ってきた。私はきっぱり断った。そもそも自分の顔を見ては「気持ち悪い」「きしょい」「死ね」と言ってくる講師と受講生のいる教室で、生きた心地もせず黙って座っていても、翻訳がうまくなるとは思えない。なんかそういう環境でも、途中で投げ出さないで通い続ける、課題を出し続ける根気くらいしか身についたものはない。来年度だってどうせ同じ講師と似たような連中でしょ。

来年、カンさんはやってくるのだろうかと思った。カンさんのSNSを意識しながら、私は相変わらずネトウヨチックな嫌韓書き込みを続けていて、しっかりものではあるが繊細な面があるカンさんの投稿回数は明らかに減った。そんなところで勝っても仕方がないのだが、現実世界で、容姿で競う女としての闘いも、スキルで競う職業人としての闘いでも敗北したので、民族ルーツでの闘いで勝った。そんなの虚しい勝利でしょうと言ってはいけない。人間はどういう手段を使っても、勝ちたい相手には勝とうとするものなのだ。たとえ差別主義者と言われても。

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