第26話

翻訳学校は4月に開始し10月に終わる予定で、夏の終わりには授業に参加すると体調が崩れるようになっていった。夏の暑い盛りだった。授業に出るたびに、途中から集中してせき込むようになっていった。すいませんと席を立って、学校の建物の階段の横でせきが止まるまで待った。理由はわかりきったことなので心身症みたいなもんだろう。それでも途中で放り出さないで通学できたのは、ひとえに隔週だったからだ。毎日だったら完全に退学していたかもしれない。

学校事務局から連絡があって、講師によるマンツーマンのカウンセリングを実施するとあった。受講生全員が受けることになっているもので、翻訳学校のコースのパッケージ料金に入っていた。でも私は事務局にメールを書いて、このカウンセリングを放棄したいと伝えた。私の顔を見るたびに「気持ち悪い」と言ってくるような講師と膝を突き合わせてふたりで何を話すというのか。無理。

そうしたら事務局から、講座担当の職員が代わりに話を聞くという提案をしてきた。だからいいですよと言って、土曜日にちょっと早く学校へ行った。若い女性の職員だったが、対応は柔らかだったが、絶対に講師の暴言の事実を認めないし、生徒の通学中の暴言についても謝罪はしないという鉄壁の否認の対応だった。

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