第24話

カンさんもそうだが、在日韓国人の多くは三代前はどこで何をしていたのかよくわからない人たちだ。カンさんもSNSに親戚はおらず墓参りはしたことがないと書いていた。韓国に戻ればいいのに。日本人である私たちから憧れの仕事を奪うんじゃないよ。帰還した人たちがハンチョッパリと呼ばれる理由が少しわかった。二国間のどちらに本人がルールを見出しているのかよくわからない。そして日本に住んでいるのに日本の悪口ばかり言う。韓国に戻っても三世以降は国籍には復帰できない。つまり日本に身を寄せるしかない人たちだが、本人たちは特別永住資格にこだわるし、こだわる理由は過去の日本人たちが悪いのだと言う。

卑しい人たちだと感じた。そしてカンさんもその卑しさの一部であり、そう思うことで私は彼女を見下すことができた。それは翻訳学校というちいさなちいさなコミュニティの中で、講師や他の生徒たち、会社の社員たちから、化け物扱い、もっとも価値が低い人として扱われている自分が、同コミュニティで最も成功した例、講師から個人的に気に入られて翻訳者としてデビューもしていて、稼いでいるらしいカンさんに逆転できる一種のカタルシスであった。

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