第22話

私は次にカンさんが登録しているSNSサービスの無料版のアカウントを作成した。そして彼女と同じ「英語・翻訳」というカテゴリに登録した。こうすれば、私が新しい投稿をすれば、同じコミュニティの「新着記事」にタイトルと要約が表示されるから、カンさんも目にするはずだった。

北朝鮮がミサイルを発射したとか、Jアラートがうるさいと文句を言うインフルエンサーとか、日韓トップ会談が流れたとか、外国人生活保護を廃止してほしいというネット右翼と反差別団体の衝突だとか、川崎ヘイト条例だとか、在日に関係がありそうな記事は、SNSコミュニティ内にもたくさんあった。

だから、カンさんが嫌がりそうな記事を見つけては、その記事に対してコメントして、ちょっと大げさな見出しを自分でつけて新しい投稿を繰り返した。

カンさんは、もともとネットに政治的なことを書きこむタイプではなく(彼女の投稿はファッションや、お料理といった女性らしい華やかな画像が多かった)そうした題材での投稿はほとんどなかったが、長いSNS生活の間に何回か自分の民族的ルーツの話も書いていた。

私のアカウントは匿名だったので、隔週で学校で顔を合わせている私の存在に気づかれることもないだろうと思った。

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