第17話
そもそもなぜ40歳を過ぎるまで、自分にこれだけ合った働き方を見つけることができなかったのか、カンさんの若さを目にして痛感したのはそこだった。家の中でできて通勤の必要がない、完全在宅ワーク、好きな英語が活かせる、文章を書くのも好きなら翻訳は適職かもしれない、機械翻訳の代替が著しいと言っても、もうしばらくはフリーランスで稼げるだろう…と考えると、私は二十代、三十代を無にしてしまったのだと悔やまれた。
学校で同じ机で学んでいる半数以上の生徒は、私よりずっと若い娘たちだったし、彼女たちはそのうちライバルになるのかもしれなかったが、それより自分が彼女たちの年齢であった時に、将来とか職業について何を考えていたのだろうか?目の前の病気の苦しさから逃げようとするだけで、何もしていなかった。それはそれで仕方なかったのかもしれない。普通の若者が経験しないような病気という苦労があったから、現在の私が存在しているのだから、比較して落ち込んでも意味がない。
自分を納得させようとしたが、カンさんのように、自分より10歳以上若いのだろうに、結構稼いでいて、人気者…という女性を見ると比較せずにはいられなかった。
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