第15話

古いビルの1階の会議室のような部屋で、座席に向かい合うように座って、授業を行ったが、私は実務経験が乏しいので自信も乏しく、翻訳者としてやっていけそうかどうかもさだかではなく、教室ではだれともつるまず、じっと口を閉じて、耐えているだけだった。


中年以降の引きこもりの人たちは、どうやって地域社会の中に居場所を見つけているのだろう?引きこもりになる理由はいろいろだが、他人の目が気になるとか、容姿がダメで他人に悪く言われがちな人、実際にいやがらせを受けたが、だれもかばってくれず、ずっと言われっぱなしの人…。


講師がいじめの犬笛を吹くタイプの男だったので、すぐに一部の生徒は教室で顔を合わせるたびに「キモイ」とか「ブス」と言ってくるようになった。といっても、私にとってはそうしたいやがらせは毎度のことだし、そういう被害を学校側に訴えても、こちらの話を握りつぶされるか、被害を訴えた私が学校から追い出されるか、いずれかしかなかった。ICレコーダーを数台持ち込んで、目のつくところに並べてみた。でも、同じクラスの生徒たちは、そんなことをいちいち気にするようなタイプでもなかった。授業が終了して、学校から出て歩いていたら、後ろから「キモイー-」」と笑いながらバカにされた。

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