第13話
日本人なら、もっと周囲の嫉妬を招かないような態度を心がけたかもしれない。しかし、カンさんは良く言えば天然、悪くいえばやや子供っぽい。負けず嫌いの一番病だった。
生育家庭は貧しく、在日2世の母は暴力ばかりふるう父と離婚して、子供3人を苦労して育てた。だからカンさんは高校しか出ていなかった。彼女は最初に入社した会社で、英語を自在につかって仕事をする先輩を見て、自分も英語を学ぼうと決意。わずか数年で英語を体得して、翻訳業界にデビューし、すでに数年経過していた。フリーランスの翻訳者として最初に登録したのが、この翻訳学校を多角経営している翻訳会社だった。
彼女のプロフは翻訳学校のパンフにも掲載されていたし、SNSの彼女のアカウントにも記事があった。読んでみて、私は自分の半生と比較せずにはいられなかった。もしかしたらカンさんのようなスムーズ人生の方が多数派なのかもしれなかった。私のように40歳過ぎるまで回り道というか引きこもりというか、挫折の多い人生を送って屈折する人のほうが少数派なのかもしれない。
翻訳学校は翻訳会社(というか、技術系のパンフレットを作成している企業の一部署)の持つ古いビルの中にあった。
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