第8話

不本意ながら渋々入学した公立校はそのうち通わなくなった。学校のテストの成績はまずますだったので、担任教師は休学にしたらどうですかと勧めてきた。そのうち完全に通わなくなって、大学検定向けスクールに通い始めた。大学検定の概要を知って「高校に通学して卒業するより、大検合格の方が労力は1/100で済む」と知った。最初から高校に入学すべきではなかったかもしれない。

美術研究所には通わなくなっていった。その後、私が成人して10年以上経過したころ、市内にもいくつも公立や私学の美術系大学が設立ラッシュで、私が美術研究所に通っていた頃より、ずっと美術系進学は楽になっていた。でも、私はとっくに学校を終えて、派遣社員とはいえ社会人になっていたから、あえて学生に戻る気もなかった。私立美大の通信課程のパンフレットをもらったことはあるが、まず「学費」のページを開くと、すぐに無理だと分かった。というか、その学費を支払って、得られるであろう対価、経験するであろうことが想像がついた。十代のころは想像がつかなかったのだ。大学はどこへ進学しても同じだと、美術研究所時代の同窓生と会った時に言われた。彼女は東京の美大に進学していた。

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