第6話

昼間は高校、夜間は美術研究所へ通って2時間、背筋を伸ばして絵を描く…という生活は想像以上に厳しくて、私はすぐにネをあげた。もともと体力がなく、すぐに体力負けする人間だった。そんな普通の人間でもハードな二重生活が続くわけがなかった。

でも、美術研究所で会う中高一貫私立の女子高生たちは、私の目から見て特別な人間だった。なぜ彼女たちがきらきらして見えるのか、そのころの私にはよくわからなかった。わからなかったけど、一緒にいてきらきらした何かが伝わってきた。私は、劣等感のかたまりのようになっていた。わたしの父母や祖父母、親戚には絵を描く人間はいなかった。休日に美術館に行く人間すらほとんどいなかったと思う。そんな中で、入試があるとはいえほとんど「普通」の印象しかない公立校ではなく、公立校よりは入試難易度が高い中高一貫私立に通っている彼女たちは、お金持ちの子女で、頭がよく、特に美術研究所に通ってきている娘たちは造形センスがあって、話していても面白かった。なぜお受験とかいって最初から私学に行きたがる人たちがいるのか、いまならよくわかる。私にとって彼女たちが魅力的に見えるということは、彼女たちにとって私は鈍くて退屈だった。

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