第3話

数学はじめ理系科目が壊滅的にできないことは、国公立入試に不利であったし、文系科目は何とかイケるのだから、私学に早くチェンジすればよかった。しかし、知能指数を知らないがゆえの若さで、努力をすれば受験レベルの数学も何とかなるはずだと思い込んでしまった。低すぎる偏差値を目にしても、考えが変わることはなかった。こういう柔軟性のなさがその後の人生において、同様の融通のきかなさを引き起こすだろうとは見る人が見ればわかったはずである。

そんなわけで、本試験も予想にたがわず、文系科目だけは圧倒的にできて、理系科目はどれも点数は無いに等しく、それでも傾斜配点のおかげでそこそこの地方の大学に滑り込むことになった。

そもそも私は絵を描くのが好きで、美術大学に進学したかった。高校1年の時に1年間だけ夜間の美術研究所に通っていたことがある。美大入試専用の研究所だが、そこでも植え付けられたのは周囲の高校生たちに対する根強いコンプレックスだった。それまでの人生、小学校、中学校では私は圧倒的に絵がうまかった。でも、その研究所に入ってから、画力最下位に落ちてしまったのだ。ベビーブームの頃で、かなりレベルの高い高校生が集まってきていたのだと今になって思う。

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