第2話

「俺達に人間を殺す能力はないよ。ただ見守るだけ」

そう言って、死神と名乗る男性は近くの椅子に腰掛けた。

「高いところから落ちても、俺は死ねないのか」

「いや、オレの助けがなきゃお前は死んでたぞ。なんであんな事したんだ」

「……死にたかったから」

毎日、死ぬ事ばかり考えていた。

どうしたら苦しまずに死ねるか、いや、苦しんで死んだ方が……と、頭の中を2つの意見が行き来していた。

「死にたかった、か。どうだ?親友の姿を見て、少しは落ち着いたか」

「……少し、は」

「そうか」

「……もう、疲れた」

「疲れたなら、休むんじゃないのか?人間は」

「冬夜の異変に気づけていれば、きっと救えたんだ。なのに、なのに俺は……」

ぽろぽろと涙をこぼして泣く朱雀を見て、死神は無表情のまま返した。

「人間がどう足掻こうと、死という結果は変わらん。死ぬ時間や場所は決まっている事だからな」

 その言葉に朱雀は死神を睨みつけるが、すぐに諦めたような表情になる。

「冬夜は、あの時死ぬ定めだったのか」

「いや、違う。彼は、まだ死ぬはずじゃなかった」

「……え、?」

「彼の寿命は、まだ残っている」

 死神から発せられた言葉に、朱雀は数秒間固まる。

その様子を見た死神は、少し面倒そうに頭をかいた。

「あ〜。ちょっと説明長くなるが、聞いてくれるか?」

「あ、ああ……」

「まず何から話そうか……そうだな、お前の元にオレが来た理由から話すか。お前、親友だった神前冬夜かんざきとうやってヤツを亡くしてるだろ?」

「……ああ」

「冬夜は、天界の名簿では事件で殉職した……と、書かれていた。ただ、不可解な出来事が起きた。冬夜の余命と、名簿に書いてある死んだ日が合わない」

「それって、どう言う」

「本来なら、人間は寿命を全うするのが基本だ。アンタら刑事が追ってる事件とかで死んだ被害者も、寿命だから死んだ。偶然殺された、とかじゃなく、そこで本来死ぬはずだから、事件が起きた」

「……」

「だが、朱雀の親友さんは寿命を全うしないまま亡くなった。それはあってはならない事だ。人間の命はみんな平等なんだよ。だから、そんな事許されない」

「……ただ、オレの同僚や上司に聞いても、その日が死ぬ日だったんだ、と言っている。……推測だが、天界のお偉いさんが口封じか寿命を弄ったかしたんだろう」

 もし、目の前の男が言っていることが本当なのであれば。

自分の親友は、まだ、隣にいてくれたのかもしれない、と言うことなのだろうか。

「本当なら、まだ、生きてたって、こと、なのか……?冬夜が」

「ああ。……だから、それを調べる為に、お前の元に来たんだ。何か聞けるかなと思って」

「何かって言われても、普通に過ごしてたが」

「まぁ、とりあえず。協力してくれないか?もしかしたら、朱雀の親友さんが生き返るかもしれない」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

刑事と死神 如月雪人 @Kisaragiyukito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る