第7話鉢合わせ

そんな、話をしていると突然自分のスマホが鳴り出した。


これは、SNSを更新した時にみんなからくる反応だ。


「また勝手に…」


「ドッペルゲンガーか?」


ルキトとリンクも俺のスマホを覗き込む。


俺は焦ってサイトを開くと驚愕した。


中に写っている写真は、俺の自宅のもので、オムライスを作ったと俺の使っているお皿とテーブルの写真が上がっていた。


「こいつ、俺の家で…」


俺は衝動のまま走り出していた。


「李弥!」


ルキトの声も、今の俺には届かなかった。


ドッペルゲンガーが勝手に俺の家に上がり込んで料理をするなんて、あり得ないことだ。


許せない。


俺は、確かに自分に自信ないけど、でも、それは俺が自分で自信をつける。実力を積んで、ついてくるものなんだ。



作り物のヤツが、自然と手に入れた俺の理想を我が物顔で振る舞っていいものじゃない。


俺が部屋につくと、そこは何も変わらない部屋があった。


さっき、SNSにアップされた皿も元の場所に戻されていた。


見間違いだったのだろうか?


ふと、キッチンの三角コーナーをみてみると、それが、紛れもなく現実だったことを物語っていた。


「卵の殻…」


「気づいたんだぁ、残念」


俺の声なのに、不気味に俺に響いてくる。


一気に嫌悪と悪寒が一緒に身体中を駆け巡る。

俺は恐る恐る振り返ると、これは夢なのかってくらい、同じ服を着て怪しげに微笑む自分と目を合わせた。


それも、紅い瞳をした俺と…


「まあ、薄々きづいてるなとは感じていたよ」


「なんで…お前は一体何者なんだ…」


「そう焦るなって、俺はお前だし、なんなら理想通りの自分だよ。共演者とも仲良くて、自信があるからこの写真、お前がトイレ行ってる間に撮ってもらった写真が表紙」


そう言って、出してきたのは、今日発売の週刊誌の表紙を飾る初めての大切な一冊になるはずの雑誌だった。


「それ…、おまえなのか…」


初めて雑誌の表紙を飾るから、緊張しっぱなしで、表情がほぐれるまで時間がかかった。


休憩明けは上手く撮れてると思っていた。

カメラマンの方にも褒めてもらえたから…

それは、俺に向けられたものじゃなかったのか?


絶望が支配していく。


なんで、理想を口にしたのがこんな軽々具現化して、俺の努力を報うより、偽物が本物に勝つのか?


荒んでいく、荒んでいく…


「俺が上手く立ち回ってやるよ。あんたと会ったのはまだ一回目だ、まだ喰わないでやる。そのうち、お前から懇願してくるよ。俺が欲しいってな」


「自分を持つんだ、李弥!」


玄関のほうから、ルキトの声がした。

俺はその声にハッとして我に返った。


顔を上げると、ルキトの姿があった。


「ドルガーか…ここは退散するとしますか」


「まてよ!」


ドッペルゲンガーは、瞬間移動でもするように、気付けばベランダへ逃げていた。


「また、会いにくるよ。李弥」


そう言って、薄気味悪い笑みを浮かべて消えていった。


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