第3話 ミーアキャット編「たくさんのはなまる」
これはまだ、外からのセルリアンの襲撃がまだ来なかった頃の話ですの。
「学校に…行きたい、ですの?」
ドールがわたくしに突然そう話しかけてきましたの。
「…はい、サーバルさんも通っていた学校に、私も行ってみたいんです」
ドールの話によると、憧れのサーバルが通っていた学校でたくさんのフレンズと触れ合い、一緒に成長して行きたい。そう話していましたの。
ジャパリ女学園は、日本政府の協力のおかげでアニマルガールへの教育カリキュラムを徹底的にヒトの学生と大差無いレベルまで上げることができましたの。
ですが、私たちアニマルガールへの理解はまだ得られず、パークが政府直属の施設ということもあってこその協力…。
私たちが分かり合うには、まだ時間がかかりますの。
元々在学する予定でしたが、探検隊の任務を優先し学校には在籍しないつもりだったのですが…
「でも…探検隊の任務はどうするんですの?隊長さんもまだ忙しいですし、副隊長のドールが抜けるわけには…」
「じゃあじゃあ、わたしがドールの代わりにふくたいちょー頑張る!わたし、お姉ちゃんよりも強いから!」
「ふっふっふ…ここはアライ先輩副隊長にお任せなのだ!」
その話を聴いていたホワイトサーバルとアライグマが、副隊長になりたいと名乗りを上げてきましたの。
「フェネックもいっしょにふくたいちょーやらない?」
「なあ、フェネックも副隊長やらないか?」
二人の副隊長に呼ばれたフェネックは大きな耳を澄ませながら、
「いやー、私はパスするよ。それに、副隊長が3人いても人手が多すぎて困るだけだしね〜」
それもそうなのだ…と、アライグマとホワイトサーバルはしょんぼりしてしまいましたの。
「ふくたいちょー…」
「…!いや!ここで諦めては駄目なのだ!ホワイトサーバル!アライ先輩が副隊長にはなれずとも、ホワイトサーバルがアライ先輩の意志を引き継いで副隊長になればいいのだ!」
なんかズレてる気がするんですの…。
「いや、そこはドールの意志を引き継ぐ…ではないですの…?」
ドールはホワイトサーバルを見つめると、その自信に満ち溢れた瞳を見て、ホワイトサーバルの頭を撫でてあげましたの。
「じゃあ、ホワイトサーバルさん。私が居ない間、副隊長をお任せします。隊長さんにはもう相談してあるので、このまま任務を引き継いでもらう形になります。私は入学準備の書類を書く手続きがあるので、先に失礼しますね」
ドールは一足先に拠点を後にしましたの。
「うん、わかった!ドール!がっこー、頑張ってね!お姉ちゃんより頼りになるか分かんないけど、わたしすっごい頑張るから!任せて!」
そしてわたくしは、ホワイトサーバルを副隊長として、教育することになりましたの。
「おうおう、ホワ公。元気にやってるじゃねえか」
【女王の巣作戦】に参加し、経験を積んだホワイトサーバルでしたが、まだセルリアンとの戦闘ではまだ全力を出し切れていないと判断しましたの。
そこで特別講師に、キンシコウさんの師匠であるソンゴクウさんを呼んで、セルリアンとの戦い方を徹底的に指導しましたの。
「セルリアンを叩く時はな、あんま力入れちゃダメだ。勢いに任せて…こうだ!」
ソンゴクウさんは武器を持たず拳でセルリアンを勢いに任せて叩きましたの。
「あんま力むと破壊した時に散らばるサンドスターが目に入って痛えんだ、これで何度も目をやられたからな」
ホワイトサーバルは、ぽかーんとしながらソンゴクウさんの事を見ていましたの。
「ふみゃ…す、すっごい…!かっこいい!」
そして、ホワイトサーバルは緊張しながらセルリアンの前に立ちましたの。セルリアンは大人しく待っていて、攻撃してくる様子はありませんが…すぐにでも襲いかかってくるかもしれませんの。
「ちからをいれずに…、いきおいにまかせて…せいやー!」
しかし、セルリアンは拳を避けホワイトサーバルはよろめきながら地面に倒れてしまいましたの。
「ふみゃー!」
ずどーん、という効果音と共に倒れ込んだホワイトサーバルは、泣きながら立ち上がりましたの。
「うぐっ、セルリアン…よけないで…!」
もう一回と、大人しく漂うセルリアンに向かってもう一度拳を振り下ろしましたが、セルリアンは身軽な動きでホワイトサーバルの拳を軽々と避けていきますの。
「このセルリアン、すばしっこいですわね。ここはわたくしとソンゴクウさんで連携してセルリアンを叩きますの」
「ホワ公、セルリアンとの戦いでは連携も必要なんだ。まあ、大人しく見てろ」
そしてわたくしはソンゴクウさんと連携し、見事セルリアンを倒しましたの。
「セルリアン…たおせなかった」
ホワイトサーバルは、しょんぼりと落ち込んでしまいましたの。
「…ホワ公、よくやった。オレっちから最初のはなまるだ」
ソンゴクウさんは、落ち込んでいるホワイトサーバルの頭をそっと、優しく撫でてあげましたの。
「ふみゃ…、おこらないの?」
わたくしも…ソンゴクウさんと同じように頭をそっと撫でて、
「今日のところは合格ですの、よくやりました。はなまるですわ」
「セルリアンに臆する事なく立ち向かった、その勇気だけでも…。ホワ公は立派なフレンズだ」
ホワイトサーバルは涙を浮かべた目を擦り、にっこりと笑顔を浮かべましたの。
「はなまる、ふたつ!うれしい!」
それから、ホワイトサーバルは幾度となく特訓を重ね、はじめは小さなセルリアンも倒せない程でしたが、危険度が上の黒いセルリアンまで倒せるようになり、ようやく副隊長として任務に向かうことになりましたの。
「アンインチホーで巨大セルリアンが…拠点とかなり近いね…」
今回の任務には、サーバルさんとセーバルさんも一緒に同行する事になっていますの。
「今回確認された巨大セルリアンは、アンインチホーでは滅多に発見されないトリケラガオーン型の黒い個体、フレンズには目もくれず森林の樹木を喰らい尽くしてるらしい…オアシスのがぶのみセルリアンとは食性も異なる。どんな技を使ってくるかわからない、慎重に行こう」
サンカイチホーの砂漠の一件が終わった後、わたくしたち探検隊は砂漠化したパークの復旧作業を行っていましたの。
気候と地形が変わり、縄張りに住めなくなってしまったフレンズ達の救助や、壊れてしまった建物の修理…。
アンインチホーは砂漠化をもう少しのところで免れ、拠点も無事でしたが…。
今回のような強力なセルリアンが現れ、樹木が食い荒らされてしまう事態になってしまいましたの。
いずれはこの拠点も食い尽くされるかもしれませんの。それだけは…、なんとしても避けなくては…。
「ねーねーサーバル、このセルリアンはなんて名前つけるの?」
マイルカに尋ねられサーバルは声を唸らせ、しばらく黙った後…手をポンと叩いて、こう言いましたの。
「ばきむしゃセルリアンなんてどうかな!木をばきばきむしゃむしゃ食べてるから!」
「じゃぱまんのほうが…オイシイ…はむ」
じゃぱまんを口いっぱいに頬張っているセーバル。どうやら食いしん坊のばきむしゃセルリアンの事が気に入らないみたいですの…。
「おねえちゃん!わたし、とっくんしてすっごくつよくなったよ!ばきむしゃセルリアンなんてパッカーン!しちゃうんだから!」
自信満々にサーバルにアピールするホワイトサーバル。本当に頼もしくなりましたの。
でも、どこか少し怯えている気がしますの。
無理もありません。副隊長として初めての大型セルリアンとの戦闘…怖がらないわけがありませんの。
「よし、早速現場に向かおう。ホワイトサーバル、副隊長としての任務…一緒に頑張ろう。大丈夫、みんながついてる」
隊長は僅かに震えるホワイトサーバルの手を取り、みんなで円陣を組もうと言い出しましたの。
「そだね〜、たまには悪くないかもね〜」
「後輩!アライ先輩の本気を見せてやるのだ!」
「探検隊のみんなと気合い入れるの、はじめてかも!」
「セーバル、あのセルリアンにじゃぱまんのおいしさを味合わせる」
「わっふーい!って感じで楽しそう!やるやる!」
みんなで輪になり手を合わせ、目を合わせて…。
「それでは…掛け声はわたくしがいたしますの。たんけんたーい!ファイトー…」
「おー!」
拠点の外に出ると、拠点の周りには砂漠化によって水分が枯れ果ててしまった草木や花が残っていましたの。
スタッフカーで拠点を抜けると、フレンズ達が住んでいたはずの縄張りや建物が崩れ果ててしまった光景が見えてきましたの。
避難したフレンズ達はセントラルの研究施設に保護され、守護けものの施した結界によって守られていますが…。
「いつ僕達の拠点もこうなるかわからない…そろそろ、退去したほうがいいのかもしれない…」
わたくしもそう思いますの…実際、ハクトウワシとライオン…そしてハシブトガラスは既に拠点を離れ警備隊に合流、ヤタガラスと共に行動を再開しましたの。
もうパークにはわたくしたちの住める場所は、セントラルしか残ってませんの。
「でも、ドールが守ってくれたこの場所を…絶対に守り抜かなければなりませんの。」
この拠点を守り抜いたドールの意志を継いで…、絶対にセルリアンを倒さなければいけませんの。
「みんな、着いたよ。アンインチホーで今も輝きが残っている唯一の場所…そして、今回セルリアンの被害に遭っている場所…」
この巨大セルリアンは、残されたアンインチホーの輝きに惹かれて、この地域に生えている樹木を食い尽くそうとしていましたの。
「フレンズ達が居なくなったら…今度はパークの樹木を狙うなんて…どこまで僕たちの居場所を奪えば気が済むんだ…セルリアン…!」
そこには、アンインチホーの輝きを食い尽くし
さらに巨大化した黒いセルリアンがいましたの。
「行くよ、ホワイトサーバル…!とっくんの成果…あいつに見せてやろう」
「う…うん、さ…さくせんかいし!」
隊長がホイッスルを鳴らし、スタッフカーを降りたわたくし達はセルリアンに向かって散開し始めましたの。
しかし、突然セルリアンは地団駄を始め地面を踏み鳴らし…、地面から巨大な柱を出現させましたの。
それはセルリアンを囲むように円状に並び、私達はセルリアンに手も足も出せない状況になってしまいましたの。
「見て!ばきむしゃセルリアン、柱をどんどん登っていくよ!」
その巨体に見合わぬ速度で昇っていき、巨大セルリアンは遥か高くまで行ってしまいましたの。
「きのぼりならまかせて!おねえちゃんにだってまけないんだから!ふみゃみゃみゃみゃみゃー!」
ホワイトサーバルは勢いよく柱を駆け上っていき巨大セルリアンの登った場所まで到達してしまいましたの。
「ホワイトサーバル!むちゃなのだ!一人じゃ危険なのだ!」
「ありゃ〜もう見えなくなってしまったねえ」
それから、ホワイトサーバルの姿は見えなくなってしまいましたの。
その時、疾風が巻き起こり現れたのは…四神のビャッコでしたの。
「おや、お困りのようだね。どうやら我の出番かな」
ビャッコは柱めがけて飛び上がりながら印を唱え…白銀の塊に包まれながら姿を変えましたの。
「我の名は真・白虎!パークの大地に煌めく
白虎が姿を変えると、突然足元から銀の柱が伸び、私達は一気にホワイトサーバルの元まで登っていきましたの。
「ホワイトサーバル!君には仲間がいる!一人で抱え込んでも強くなれないぞ!」
「ふみゃ…。ごめん…みんな…。一緒にいくよ…!」
そして私達は白虎と共に連携し、見事巨大セルリアンを退治しましたの。
セルリアンの伸ばした柱は徐々に縮んでいき、白虎が伸ばした柱も少しずつ地面へと降りていきましたの。
「よくやったなホワイトサーバル、だがまだはなまるはあげられないぞ。」
白虎は、まだ元の姿に戻って無いみたいですの。
「最後の特訓…その試練は、我を超えることだ!」
「ふみゃ…。うん、がんばる!」
ホワイトサーバルは覚悟を持った眼差しで白虎に頷きましたの。
そして、ホワイトサーバルは白虎との試練に向かい…。外からセルリアンが現れたあとも拠点に戻ってきていませんの。
その後はサーバルが副隊長代理として拠点を守ることになりましたの。
「ホワイトサーバル…、いつか戻ってくると信じてますの」
いつか大きくなった背中を見せてくれることを…、わたくしは信じていますの。
4話 四神編に続く。
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