第3話 ハクトウワシ編 「わたしのじゃすてぃす」
『ゲネシスアークのフレンズ達が、理性を…?』
「フレンズ達が、理性を失ったビーストに…?そんな事…あり得るのかしら」
私は、カコからタスマニアデビルとカレンダの会話の音声データを託されていた。
このデータをセルリアンに奪われてはいけないと。
「私じゃ戦う力も無くて頼りないかもしれないけど…これまでいっぱいパークを旅してきたんだ。無事にアンインチホーまで送り届けるから、ハクトウワシを守るのが私の役目だよ」
「ハクトウワシ御一行ご案内〜!シマハイイロギツネさんの事も無事に縄張りにご案内いたしますわ」
「帰るまでが任務ですからね…!縦に一列に並んで私から離れないように歩いてくださいね!」
強力なセルリアンが生まれるかもしれないこのデータを守り、無事に探検隊まで送り届ける…。アンインチホーまでの帰り道で、たまたま通りかかったシマハイイロギツネとリョコウバト、そしてカルガモと私は行動を共にしていた。
「ありがとう…3人とも。またカレンダ達のせいでパークに迷惑をかけたくないもの、私の大切な仲間達の為にも…」
カレンダとジャパリ団は、一度パークのセルリウムを本土に持ち帰ろうと、CARSCのボスと協力していた。ボスは今後はパークには手を出さず、隊長の事を見守っていると言っていた。
でも、どうして…ボスはマリーとLVシステムを使ってヒナミを助けようとしたの…?パークの技術に頼らざるを得ない何かが本土で起こっている…?
外のセルリアンと何か関係があるのかしら…。
「やはり早く戻ってカレンダと一度話さなきゃ…!ボスは一体何を考えているの…!」
ふと考えていると、空からハシブトガラス、そしてヤタガラスの二人が降りてきた。
「ハクトウワシ、任務中すまないが…余はお前に伝えなければいけないことを、CARSCのボスから預かっている。一時的にパークのラッキービーストをハッキングして本土と通信をつなげている。一刻も早く…お前に伝えたいそうだ」
ボスが…私に…?一体何を…。
「ヤタガラス様が言っている、早く受け取れ」
ハシブトガラスからラッキービーストを預かり、本土にいるボスと通信を繋げた。
『やあ、こうやって話すのは…いつぶりかな』
ボスは落ち着いた声で私に話しかけてくれた。
「どうして…?もうパークには手を出さないんじゃ無かったの?…どうしてまたカレンダに接触を…!」
私は私の正義の為にも…、ボスの考えていることを聞き出さなければ…!
『何を言ってるんだ?私は"ジャパリパーク"には一切手を出さないと言ったんだ。ゲネシスアークというセルリウムの巨大原石を発見した今…。アニマルガール達に頼らずヒナミくんを助ける…それが私の選択だよ。ハクトウワシくん』
ゲネシスアークが…セルリウムの巨大原石…?
だってあれは、元々海底遺跡だったはずじゃ…!
「ボス…あの島にはヒナミだけじゃない。フレンズ達もいるの。ヒナミを助けるために…、他のフレンズ達が犠牲になってもいいと言うの?」
ヤタガラスは、それは違うと首を振った。
「余は、四神達の平和的選択には否定的なのだ。そのデータには、何が残されている?」
ゲネシスアークのフレンズ達が、ビーストに…。
「でも、彼女たちには危害を加える意思は無い。四神達が選んだ選択は、間違いだって言うの?」
平和のために選んだ選択が間違い…?そんなの…間違ってる…。
『そのアニマルガール達は私がヤタガラスくんに任せようと…四神達とは別行動で計画していた。理性を失いビーストへと変貌する…。件の女王と共に行動していた…あのセルリアンと同様に危険な存在だ。ヒナミくんを救出後、ヤタガラスくんによる高熱波で島全域を焼却する。そうするしか…この星の未来を救う方法は無いのだよ』
ヒナミたった1人を救うために、多くのフレンズ達が犠牲になる…。嫌よ…そんな事…。
ドールは、ゲネシスアークにいる3人のフレンズ達の話をずっと隊長と私達に話してくれていた。
『スマトラドールさんは、パークの技術を使って沢山の新しい技術を生み出したりする凄いフレンズなんですよ!アムールドールさんとテンシャンドールさんは私の事ドールお姉ちゃんって呼んでくれて…。私…いつか皆に会ってみたいです!皆と…フレンズになりたいです!』
私にできるのは…!たった一つ…!
「駄目よ、私は貴方達に協力できない。例え…ヤタガラスの協力があったとしても…。ドールの大事なフレンズ達を…傷つけたりしたくない、ドールを無事にゲネシスアークに送り届けるのが私の正義…私のジャスティスなの!」
私とカルガモとリョコウバトは、シマハイイロギツネを3人で抱え空へと舞い上がった。
「こら待て!ヤタガラス様に歯向かうというのか!」
ハシブトガラスが追ってくる。例え探検隊の仲間であっても、ヤタガラスの事になると周りが見えなくなる…。本当にどうしようもない子ね。
「カルガモ、リョコウバト…シマハイイロギツネを任せたわ、ハシブトガラス…貴女には教育が必要みたいね。このキャプテンハクトウワシが相手よ」
私の後を追おうとしたヤタガラスの前に、四神のスザクが現れた。
「ヤタガラス!お前…私達に黙って余計な事を…!平和的に話し合う事がそんなに面倒臭いか!」
スザクは、化身をヤタガラスにけしかけ奇襲を仕掛けた。
「パークを守るためだ、守護けものとして当然のことをするまでだ、それとも…四神の貴様が、パークを滅ぼすというのか。この楽園に…!災いを招くと言うのか!」
ヤタガラスは身体から高熱波を放ちスザクの化身を消滅させた。
「ったく、しょうがない。だったら見せてやるよ、我の真の姿を。」
スザクは印を唱えると、身体が火の球に飲まれ、新たな姿に生まれ変わった。
「我が名は真・朱雀!パークを照らす朱き炎帝なり!」
空が灼熱の太陽に照らされ明るくなる。
「ほう、真の姿を見せたか。朱雀」
ヤタガラスの身体が燃え上り、真っ黒だった姿が金色の炎に輝く。
「余の名はスサノオノシンシ。こちらも本気で行くぞ」
スサノオノシンシ…!この姿は…?
「ヤマタノオロチ、出番だ」
邪悪なオーラとともに現れたのはヤマタノオロチ。
「ジャハハ!さあ引き抜くが良い!真・クサナギノツルギ!」
ヤマタノオロチの胸元から剣を引き抜くと、刀身が黄金の炎に包まれる。
「ヤマタノオロチ、貴様はツチノコの元に行け、其奴はゲンブと共に行動している、朱雀は余が相手する」
「カァーッ!!」
朱雀とスサノオノシンシの戦いに目を向けていると、ハシブトガラスに奇襲をかけられた。
「何を余所見しているのですか、貴女の相手は私ですよ」
相変わらず汚い真似を…!
「ねえハシブトガラス、貴女なら分かってくれるはずでしょ?ドールの大事な友達を、簡単に傷つけていいと思っているの?」
しかしハシブトガラスは嘲笑うような表情を浮べ、私にこう言い放った。
「しかし、彼女らは我々のパークに害を脅かす害獣、セルリアンと同じ倒すべき相手です」
そんな…。
「逆に私は副隊長に失望しているのです。敵に肩入れするなど、片腹痛い!」
ハシブトガラスが手刀を向け突撃してくる。
私は手刀を力強く掴み、ハシブトガラスを睨みつけた。
「忘れたの?ドールはね、セーバルの友達よ。例えセルリアンだろうと、ビーストだろうと…あの子は何度でも友達になろうとするの。どんな結果になっても、私はドールを信じる!」
掴んだ腕を引き寄せ、ハシブトガラスを抱きしめる。
「お願い、戻ってきて。貴女の力が必要なの」
しかし、それはハシブトガラスの思惑通りだった。
「まんまと引っかかりましたね、わたしの狙いはそのデータです。」
ハシブトガラスは、私の懐から音声データを盗み取っていた。
「私のずる賢さを舐めてもらっては困ります。ほら、丁度セルリアンが湧いてきましたよ」
発生したのは寄りにもよってプロヴィデンティア…。
「それでは、ショーの始まりです」
ハシブトガラスは音声データを再生すると、プロヴィデンティアがこちらに向かってきた。
「やめて!」
ハシブトガラスが音声データをプロヴィデンティアに向かって放り投げる。
私は必死に腕を伸ばした。でも。
『ーーーーーーーーーーーーーーーー!』
プロヴィデンティアは音声データを取り込み、【悪魔マルコシアス】の姿を模してしまった。
「目標はジャパリ団のライブ会場。ドールをゲネシスアークに送ってはいけません」
阻止…できなかった。
私は気を失い落下してしまい、そこからの意識は途切れてしまった。
ーー。
「正義の味方が何へこたれてんのさ、簡単に倒れちゃダメだよ」
その声は、ライオン…。
「ライオン…それに、警備隊のフレンズ達も…」
そこには錚々たる警備隊のメンバーが揃っていた。
「私のプライドをここまで傷つけたボスを…警備隊は絶対許さねえ…!」
3話 ライオン編に続く。
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