第3話 カレンダ編 「ひとのためのぎじゅつ」

日本では、物に神様が宿ることがあると、カコが教えてくれた。

きっとあの時、フリッキーにも…心が宿っていたのだと…。

だからこそ、私達の技術の結晶であるLVシステムとマリーを…ヒナミを助けるために使いたい。

でも、それは不可能らしい。

私がヒナミの為にした選択は、破滅の「原因」になってしまうのだと、隊長は私に教えてくれた。

ゲネシスアークは、私達に試練を与えている。

この技術を、私達はどう使うのか。

この子達に、私はどう答えたらいいの…?フリッキー…。

私は、ボスにこの件を話した。

私達はどうすべきなのかと。

数学を音楽に取り入れたクセナキスの音楽は、「これは音楽ではない」と否定されてしまったのだ。

私はこの技術を、ヒナミを助けるために使うと決意した。

でも、私達の手で奏でたその音楽も…音楽とは言えない雑音ノイズだった。


そんな時私に1人のフレンズが話しかけてきてくれた。

名前をN・ハイランドワイルドドッグと言っていた。歌が大好きな…いつも心から溢れるメロディを歌で奏でているフレンズ。

私はこの子が隊長といつもいるところを見ていた。

私が顔を出すと隠れてしまう…少し人見知りなフレンズだったのを覚えている。

ハイランドワイルドドッグは、ナナ達の前で歌を歌うと言っていた。

人見知りなあの子が勇気を振り絞ってヒトの目の前で歌うことに…私は心を動かされてしまった。

だから私も、この技術をこの子に託そうと決意したのだ。

この音をメロディとして、歌として奏でて欲しい。

私があの子にそういったのは、この技術を絶対に人の為に役立てたいと思ったからだ。

きっと、クセナキスもこの技術が人の為に使われることを喜ぶはず。

LVシステムはヒナミを助けるための装置。

たった1人の、ジャパリパークに憧れた女の子を助けるための装置。

カコはリモートで対面したヒナミの動物の知識の多さに驚いていたと言う。

私の見たこともないような動物を知っていると…尊敬の意を込めて言っていた。

きっとジャパリパークに来るために生まれてきた子だとも言っていた。

でも…。

ヒナミはジャパリパークには来てくれなかったのだ。

ディザストロが起こした天災によって…あの子は波に飲まれ彷徨うことになってしまった。

私は酷く悲しんだ。

動物が大好きだったヒナミのことを、このまま失ってしまうのではないか。


でもそんな時、カコはヒナミと話すことができたと言っていた。

きっとこれは奇跡だと喜んでいた束の間だった。

あの子は、与那国島の海底地形付近にいると知った。

何故…そんなところから通信が来るの?だって、カコはヒナミがアニマルガールと一緒にいると言っていた。

これは、冥界からの通信なのではないかと…。

カコから生まれてきた女王系のセルリアン達は、輝きの再現という信じられない現象を起こす。

カコの願いは、失われた家族を取り戻すことだった。

カコの周りにはいつも絶滅してしまったアニマルガール達がそばにいた。

もう二度と…出会うことのできない動物がアニマルガールとして誕生して、このジャパリパークで幸せに暮らしている。

だったら、答えは一つしかない。

もしかしたら私達の手でヒナミを取り戻せるのではないか…?

そんな奇跡が起きてしまうこのジャパリパークなら、ヒナミの居場所を作ってあげられるのではないか…。

カコの想いは、きっと遠くの新与那国島にも届くはず。

私は、まだ諦めはしない。

この島のフレンズ達は、セルリアンと戦う勇気と覚悟を持っている。

そして今、一丸となってヒナミを取り戻そうとしているのだ。


マリーの技術をヒナミのための技術に役立てたいと思ったのは、この子にフリッキーの想いを込めているからだ。

ヒナミを助けるために作ったこのLVシステムで、フリッキーの想いを乗せたマリーがヒナミを救う。

私はヒトのためにこの技術を使いたい。

でも、その想いはセルリアンに利用されてしまう。

ヒナミを救うために使いたいと願ったこの技術は、パークを破滅に追い込む「原因」になってしまう。

それだけは絶対に避けなくてはいけない。

四神はパークの平和を願う守護けもの達。

だから、この技術を平和のために使うと約束しなくてはならない。

ヒナミを助ける覚悟があるものだけが、この技術を使うべきだと…。

私は改めてこの技術を、ドールに託したいと思う。

今あの子はヒナミを救うために探検隊達と頑張っている。

運命を背負って戦うドール達に託す。

四神に選ばれた、平和の為に戦う覚悟のあるフレンズを、私は信じる。

「でも、私は何故…この技術をジャパリ団に託そうと思ったの…?」

隊長の見た結末では、ジャパリ団をゲネシスアークに送り込んだ事が原因でパークの破滅が起こってしまうと言っていた。

私は、選択を誤りたくない。

ジャパリ団のフレンズ達も…ヒナミを助けたいと言っている。

四神に選ばれなかったあの子達も、ヒナミを助けるために私に協力してくれていた。

私はジャパリ団達に話した。

私はドールを信じて送り出したいと。

私達は四神には選ばれなかったけど…平和を願うために戦うドール達を信じると。

ジャパリ団は、ドールを応援するためにLVシステムで作られたメロディをオオサイチョウとツノサイチョウに託し、作曲を頼んだと言う。

サイチョウの2人はもちろん協力してくれると言ってくれた。

困難な時こそ、「協力クロスオーバー」するべきだと。

そして生まれたのが「✕時空超越論」という曲だ。

✕は「ばってん」と読むが、サイチョウの2人は「クロス」とも読むと言っていた。

私達の想いがクロスすればきっと、奇跡は起きるはずだと。

私達は、ドールを送り出す準備はできている。

絶対に、この技術をお互いの平和のために使うと約束する。

サーバルとジェネットは、セーバルとヒカリ達の事が心配で今すぐにゲネシスアークには行けないと言っていた。

2人共友達を心配させたくないと言っていた。

私達も、ヒナミのことをずっと心配している。

「任せたわよ、ジャパリ団」

私達は、とっくに覚悟を決めている。

「ああ…とっくに覚悟はできている」

この技術が人のため…平和の為に使われる覚悟を。

いってらっしゃい。ドール。

あなたに、パークの未来を託すと誓う。


ブラックバック編に続く。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る