第3話 ドール編 「わくわくのだいぼうけん」
「この度学校を卒業するジャパリパーク保安調査隊副隊長 ドールさんから、皆さんにメッセージがあります。ドールちゃん、前に出て」
ナナさんに呼ばれ、私はフレンズ達の前に立った。
私は手紙を広げ、みんなの前でメッセージを読んだ。
「親愛なる、私たちのお友達へ 探検隊副隊長 ドール 」
外から来たセルリアンの一件が発生する前、私は学校での課程を修了し、無事卒業することが出来ました。
「私はこの度この学校を卒業します。隊長さんと出会ってからパークで沢山の冒険をして、沢山のフレンズと出会いました。時に辛いこともありましたが……私が一時的に記憶を無くした後も、みんな私の周りに居てくれて、とっても嬉しかったです。私を探検隊の副隊長にしてくれて、ありがとうございます」
この手紙も、この学校で学んだ"漢字"を使って書きました。
私がこの学校でこれまで頑張ってきた証です。
「みんなが居てくれたから私はここにいます。
みんなが居なければ、私はここに立っていません。本当に、感謝してもしきれません」
涙が溢れてくる。ずっと、支えて貰えていたんだと、みんなの顔を見る度に思い出す。
「私はこれからも、ジャパリパークの探検隊です。隊長さん達との冒険はまだまだこれからも続きます。終わりじゃありません、また会える日を楽しみにしてます。ドールより」
フレンズ達の拍手が教室に鳴り響く。
卒業証書を受け取り、私は教室の扉を開け廊下に出ました。
「卒業おめでとう。キミも立派な副隊長に成長したね、わらわもとっても嬉しいよ」
麒麟さんがスーツ姿で私にお祝いの言葉をくれました。
「麒麟さん……あれ、そういえば隊長さんは」
教室にはリモート用のタブレットがあり、隊長さんは遠くからドールの事を見守っていると言っていました。
「隊長は今も忙しいみたいだよ、何でも……外からセルリアンみたいな化け物が現れたって……まぁ、副隊長の君なら知ってるか」
この時は、まだ外来特殊生物という名前すらついていなかった頃です。
カコさんが化け物の目撃情報をフレンズ達から集めたところ、パークには生息していないセルリアンである事が判明した段階でした。
「隊長さん、このところずっと忙しくて……私も学校があって中々隊長さんと会うことが無くて……」
学校卒業の準備で忙しかった私は、副隊長を外れてサーバルさんが代わりに副隊長をやってくれていました。
輝きを奪われてしまったあの頃とは比べ物にならないくらい、頼りになる憧れのフレンズです。
「今日、隊長に会ってみたらどうかな。きっと喜ぶと思うよ。……折角だしわらわも会いに行ってもいいかな?」
いつもなら牙を剥いて威嚇する所でしたが、麒麟さんにはこの卒業式の準備を手伝ってくれたお礼もあるし、仕方ないので2人で会ってみることにしました。
隊長さんとサーバルさん達は、オデッセイ近隣のオアシスで見たこともないセルリアンを発見したという報告を受け、サンカイチホーへと向かっていると聞いていました。
拠点に戻ってみると、ジェネットちゃんとヒカリちゃん、オジロスナギツネちゃんとカニクイアライグマさんがお留守番を頼まれているようで、サーバルさんから一つ伝言を頼まれていたようです。
『ドールへ 卒業おめでとう!今日からドールがまた副隊長に戻るから、居なかった間の事を少し話すね。私には、もう1人カラカルとセーバル達よりも前に出会った友達が居たの。私が動物だった頃に私と一緒に立ち向かって行った、私を助けてくれた友達。やんちゃサーバルのことは聞いてる?のんほいパークからやってきた、もう1人のサーバルキャット。その子がその友達に助けられたみたいで、私も会って話をしたいなって思ってたんだけど…その友達が…ブラックサーバルが外から来たセルリアンの報告を受けてから様子がおかしいみたいで…良かったら、ドールも会って話してみないかな。様子がおかしいって言うのは、いつもと様子が違うって意味で…。1人でいることが多かったのに、何故かフレンズにちからくらべを挑んでいって…その時の戦い方が容赦無かったって、確か…ラーテルがそう言ってた。勝った後も執拗に追いかけては戦いを挑んできたって、なんかおかしいよね…そんな子じゃ無かったはずなのに。
私達は今隊長とオデッセイのフレンズ達をブラックサーバルから守るために向かったんだ。ブラックサーバルも私の友達だから、きっと何か理由があるんだよ…!話し合えばきっと…。ドールも、身の回りには気をつけてね。最近セルリアンも強くなって来たから、慎重にね。
副隊長代理 サーバルより』
手紙を読み終え、私はブラックサーバルさんと言うサーバルさんの友達の事を麒麟さんに聞きました。
「ブラックサーバル…。あの子は…一度仲間を守れなかったショックで、あまりフレンズ達と関わらなくなってしまったんだ。1人でいるのを、何度も見たことがある」
女王やセルリアンが発生する前の話…パークでは、一度フレンズ達が大量に消滅してしまった事件が起こったと言います。その中で1人、取り残されたのがブラックサーバルさん。
「でも、おかしいな。女王事変が起きた頃、ブラックサーバルはサーバルと同じ動物病院には居なかったはず。あの子は助けられなかったショックで、女王に立ち向かえなかったって…どうしてサーバルに一緒にいた記憶があるんだ…?考えられるのは…。まさか…!」
麒麟さんは、懐から四神玉を取り出して、青龍さん、赤龍さん、黒龍さん、白龍さんを呼び出しました。
「…これは、何者かによる歴史の改変が原因に違いないわね。そんなことが出来るのは、この地下にある迷宮に眠るお守り…。でも、どうやって…」
青龍さんは目を瞑り、神通力で迷宮の中を探り始めました。
「青龍、あんまり無茶するんじゃないんだぞ」
白龍さんは青龍さんのことを心配しています。
「ボクは別の可能性を考えてました、例えば…」
赤龍さんは、深く考え込み始めました。
「例えば、近頃パークを騒がせている、外から来たと言うセルリアンが原因かもしれませんね」
黒龍さんは、外の様子について心当たりがあるようでした。
「未知のセルリアンであれば、過去を自在に改変する事もできるかもしれない…そう言いたいのね、黒龍姉さん」
すると、私の脳内から、誰かの声が聞こえました。
「…っ!」
『デスペラティオ…空間を歪ませ、時を超える力を持つラフム、いや…君の世界ではセルリアンと呼ぶべきか』
「デスペラティオ…?ラフム…?今、誰が私にそう話してくれたような…」
しかし、麒麟さんや青龍さん達には何も聴こえていないようでした。
私達が話し合っているうちに、ヒカリちゃん達は自分たちの住む小屋に戻り、隊長さんとサーバルさん達が戻って来ました。
オデッセイでの任務では、特にセルリアンやブラックサーバルさんの襲撃は無く、オアシスに現れたセルリアンも過去に倒したセルリアンの同種だったのですぐに駆除できたそうです。
外から来たセルリアンというものは現れなかったと隊長さんから報告を受けました。
安心した私は、皆が寝静まった頃に隊長さんを外に呼び出し…久しぶりに話すことにしました。
「…隊長さん、こうやって2人で話すのも…なんだか久しぶりで…」
隊長さんは、私をじっと見つめて…。にっこりと笑ってくれました。
「でも、すっかり見ないうちに成長したね。また明日から副隊長に戻っても問題ないと思う」
頭を撫でられ、私は赤くなってしまいました。
「麒麟さんには会ったんですか?」
隊長さんは頷いた。
「これからも探検隊のみんなを頼んだよって、そう言われた。サーバルからの伝言、僕も読んだけど…セントラルにある報告書とは確かに内容に齟齬を感じる、何者かによる改変があってもおかしく無い。もしかしたら、ラフムとかいうセルリアンの…」
隊長さんからも、私の脳内に聞こえた言葉を聞いてしまいました。
「隊長さんも、聴いたんですか。頭に響く声…ラフムってなんなんでしょう。セルリアンとは違うのかな」
隊長さんは、考えても仕方ないので戻ろう、と部屋に私と戻っていきました。
翌日。
アイスキャニオンに、大きく抉れた痕跡が残っていると報告を受け、私と隊長さんだけで調査に向かいました。他の隊員は、昨日の任務で大きく消耗し拠点で控えていました。そこには、カコさんとミライさんもいました。
「痕跡にはセルリウムの反応があるけど…どのセルリアンとも違う。特異な性質を持っている…」
カコさんはミライさんのメガネで痕跡を分析していましたが、やはりパークに生息するどのセルリアンの反応とも違うと言っていました。
「やはり、これらは外のセルリアン…いえ、外来特殊生物と言うべきでしょうか」
…外来特殊生物。今私たちの前で、パークを脅かしている外敵の名前が定められました。
「このセルリウムの特性をもう少し調べるわ。もしかしたら、パーク内のセルリウムと異なる性質を持っているかも」
カコさんはメガネの出力を最大限にし、更に分析を始めた。
「隊長さん、みなさん!逃げてください!」
すると、空からジェット音と強風が吹き荒れ、アイスキャニオンに何かが衝突しました。
爆風の中現れたのは、見たことのない生物。これが…ラフム…外来特殊生物…?
「隊長さん、ここは私に任せてください!疾風のワイルドハント!」
私はけものミラクルで対抗しましたが、敵には傷一つついていません。
「…っ!硬い…!でも!」
私の爪では敵にダメージは与えられない。セルリウム反応があるなら、セルリアンと同じ様に倒せるはずなのに…!
私は何度も爪で攻撃しましたが、相手を削ることはできず…苦戦していた…その時でした。
「これいじょう…みんなをきずつけさせない!」
赤黒い光を放った…あれは…!
「もしかして…ブラックサーバルさん…?」
赤黒い爪によって抉られた外敵は、一瞬で消滅してしまいました。
「助けてくれたんですね…ありがとうございま…っ!何するんですか!カコさん!」
カコさんは私がブラックサーバルさんに近づこうとするのを必死に抑え始めました。
「僅かだけど、ブラックサーバルからも同じ反応がするの。近づくのは危険よ」
まさか…セルリアンに操られて…!
「また…かりができたな」
しかし…身体から放たれていた赤黒い光は消え、ブラックサーバルさんは私たちの元から去っていきました。
そしてそのあとは、カコさんの報告書にある通り…あの外敵を特異級セルリアンと認定し、最初に目撃された個体をデストラクティオと命名しました。
封印されていたSSデバイスは、使わない事を条件に探検隊の所有物として預かる事になりました。
カレンダさん達の協力で開発されたLVシステムの機能で、3人のゲネシスアークのフレンズと話しました。
私とそっくりな見た目をしていて、私の事をお姉ちゃんの様に慕ってくれています。
今日はジャパリ団のライブ当日、私のために作ってくれたと言う曲をプレゼントしてもらいます。
「ようやく、会いに行けるんですね」
私は、ヒナミさんを助けることはできるんでしょうか…。
「こうなったら…あれを使うしか…」
拠点の倉庫からSSデバイスを持ち出し、私は、ライブ会場に足を運んだのでした。
「絶対に助け出します…!ヒナミさん!みんな!」
ブラックバック編に続く。
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