3話 2つの島を繋ぐ物語

第3話 隊長編 「たいちょうのしめい」

僕は夢を見た。

僕達が選んではいけない選択を。

みんなのジャパリパークが滅びる、終末の日を。

外から四つ足のセルリアンが沢山やってきて、ジャパリパークの輝きが奪われてしまう光景を。

「あれは…マリー…?」

カレンダさんは、泣いていた。

自分のせいで、ジャパリパークの輝きが奪われてしまうと…私が、全ての「原因」であると。

ノアの方舟に、私達は乗り込んでは行けなかったと。


外から来たセルリアン、ジャパリパークは特異級セルリアンと呼んでいる。

「プロヴィデンティア…」

輝きを捕食するという性質は、パークに生息するどのセルリアンよりも凶悪で、何より強大だった。

僕に一度傷を負わせたハンターセルなんかよりも、敵わない相手だった。

そんなプロヴィデンティアに、パークで運用されている、「マリー」の輝きが奪われてしまったという夢だ。

LVシステムは四神達によって凍結され、ドール達はゲネシスアークには行けなくなってしまった。

そしてカレンダはLVシステムを再構築し、ブラックバック達をゲネシスアークに送り込むと言い出した。

そして…この惨劇が起こってしまった。


でもこれは夢だ、現実じゃない。

きっと目覚めればドール達がいて…カレンダさんも…ジャパリ団のみんなも変わらず過ごしている。

早く目覚めなきゃ、こんな光景…二度と見たくない…!

だが、マリーの輝きを奪ったセルリアン達に…ジャパリパークは壊滅させられ、僕達は…ジャパリパークの撤退を余儀なくされた。


そこで僕は目が覚めた。

「…っ!はぁ…夢か…」

目覚めると、いつもの拠点で目が覚めた。

「夢じゃない、起こりうる現実だ」

起き上がると、顔の目の前にとても柔らかい感触があった。

「んぐ…。っはあ…!びっくりした…。あれ…マカミさん?」

でも、少し見た目が違う。パークに来てからこういう事はもう慣れてしまった。ドールに見つかればこちらに牙を向けてくる。絶対にバレたくない。

「…私はイヌガンサマだ。お前にこの島の運命を伝えに来た」

イヌガンサマ…?この島の運命…?

やっぱり…今の夢は…。

「それは絶対に起こりうる現実。是が非でも間違えてはいけない、さもなければ」

イヌガンサマは僕から身体をどけて、こう言い放った。

「この島の輝きが、言葉が消えてしまう」

言葉が…消える…?

イヌガンサマは、イソバさんというヒトに沢山愛されていたと僕に伝えてくれた。

でも、新与那国島のすぐ側にある与那国島からは言葉が消えている。

ドゥナン語という独自の言語を話す与那国島のヒト達は、与那国島から絶滅する恐れがあると僕に教えてくれた。

「だから私は、輝きが消えようとしているこの島の運命を変えにパークにやってきた。あんな光景…もう二度とみたくない」

イヌガンサマは、酷く落ち込んでいた。

「…でも、僕にはどうすることもできない…」

そう、僕にはカレンダさんを止める権利はない。

僕の夢の話によれば、CARSCのボスさんはヒナミちゃんを助けに行くためにLVシステムを使おうとしている。

ドールは、そんな僕のことを絶対に信じない。

だってドールはヒナミちゃんの事を助けようと必死に手段を探している。

四神に封印されている試作用SSデバイスを真っ先に使おうとしたのはドールだ。あの子の覚悟は、本物だ。

だから…僕にはドールの選択を止める権利なんて…。

「たーいちょうさ…あなたマカミさんですよね…!隊長さんの前で何やってるんですか!」

ドールに見つかってしまった。

イヌガンサマは、いつの間にかどこかに行ってしまった。


それから僕達は2人でしっかりと話し合った。

「それが…ドール。僕、夢を見たんだ…この島の運命を」

ここで諦める訳にはいかない。

ドールの事を、僕自身が信じなくてどうする…!

「私は信じますよ、隊長さんの事」

ドールは、勇気を振り絞って話してくれた僕のことを信じてくれた。

「だって…パッと聴いて信じられないようなことを口にするのって、凄く勇気がいると思うんです。でも私はずっと隊長さんと一緒に過ごしてきたんですから、信じない訳ありません」

ドールは、協力してくれると言ってくれた。


マイルカとミーアキャットが戻ってきた。

「たーいちょー!マリーをカレンダさんが貸して欲しいって!」

まずい…!もう来たのか!マリーを急いで隠さないと…!

「マイルカさん、カレンダさんが欲しがってるのはマリーさんじゃなくて…マリーさんの資料…ですわ」

ミーアキャットによれば、カレンダはマリーそのものを明け渡すつもりはないらしい。

代わりに、マリーの事を詳細に書いた技術書を、CARSCのボスさんに提供しようとしている。

「でもそんなもの何処にあるんだろう、私達見たことないよ、カレンダさんにマリーを見せたら、そのぎじゅつしょ?ってものも作れるんじゃないかな」

マイルカは、マリーを連れてカレンダのところに行くと言いだした。まずい、このままじゃ…。

「…僕がマリーをカレンダさんに渡すから、僕にマリーを預けてくれないかな」

そう言うと、マイルカは素直にマリーを渡してくれた。

「ふう…。これで助かった…」

と、思わず口に出してしまった。

「何が助かったんですの?隊長さん」

ミーアキャットに聞かれてしまった。

「べ、別に何も隠してなんか…」

このままじゃ…。危ない…!

「ミーア先生!隊長さん!待ってください!」

ドールが、咄嗟に声に出した。

そう、何も運命を知っているのは僕だけじゃない。ドールと僕で力を合わせれば…。

「みんなで、協力しましょう」

こうして、探検隊達はこの問題をどうするべきなのかを話し合った。

プロヴィデンティアの発生は、まだ確認はされていない。

僕達は、沢山の困難をフレンズ達と乗り越えてきた。

だから、今回だって…きっと…。

「マリーさんは、どうなんですの?ヒナミさんを助けたいボスの気持ちに、答えられるのでは…?」

僕も、マリーの技術があればヒナミちゃんを助けられると思う。

僕達じゃ新与那国島には行けない。

カレンダさんの技術と合わせて、ヒナミちゃんを助けられれば、きっと…!

時空の歪みに阻まれている以上、助けることは…。

「一度カレンダさんと話してみる。僕は絶対にこの選択を間違えたくない」

僕達はマリーを守り、カレンダさんやボスと話すことにした。

これは僕達探検隊の使命だと。

「だったらなおさら、マリーの情報が欲しい。私達も、ヒナミを助けたい気持ちは同じなの」

カレンダさんは、ボスの気持ちに答えたいと言っている。

話を信じてはくれたが、それでもヒナミちゃんを助けたいと思うボスの気持ちに答えたいと言っていた。

「だから私はこのLVシステムを生み出した。カコの大切な後輩を、失いたくないもの…」

カレンダさんは、フリッキーという大切な家族を一度ではなく二度も失っている。

カコさんも家族を失ってからこのパークにやってきたらしいが、カレンダさんには家族の事は話してくれなかったらしい。

「パークのみんなは家族なの。たとえもしそれが新与那国島を生み出した原因だったとしても…誰一人欠けてはいけないの、このLVシステムのように」

カコさんは、新与那国島の発生の原因について調べていた。

カコさんは一度意識不明の状態になり、この島にセルリアンの女王が現れた。

だとすると、新与那国島の発生の原因はヒナミなのではないか?と推測していた。

ヒナミからゲネシスアークが生まれて、新与那国島の発生…そして、外からセルリアンが現れた。

「外来特殊生物…通称特異級のセルリアン達は皆、大王系の性質を持っていると…カコは話していた」

セルリアンの女王の発生の原因となったカコさんは、ヒナミがゲネシスアークの王かもしれないとカレンダに話していたのだ。

「もしそれが本当だったら…新与那国島に居るダイオウを倒せば…ヒナミちゃんは助かる…!」

答えが、見つかった。

でも、本当にいるかもわからないダイオウを、これからどうやって倒せば…。

「パークのみんなを、もう一度ここに集めよう」

僕達なら、ジャパリパークのみんななら乗り越えられる!

この困難を…。この星の運命から…!


こうして、僕達はヒナミちゃんを助けるためにもう一度集まった。

アオツラカツオドリちゃんには、あの島がとても輝いて見えると言っていた。

セーバルも、あの島にはトモダチになれるかもしれない子がいると言っている。

みんな、ヒナミちゃんのためにもう一度戦ってくれると約束してくれた。

カニクイアライグマとオジロスナギツネ、そしてジェネットとヒカリちゃんも捜索に協力してくれていた。

「ジェネット、ヒカリが何か言いたそうにしてるのさ」

四神に選ばれたジェネットには、ヒカリちゃんの心の声が聞こえる。

「あそこにいるみんなは…自分にできることを頑張ってるって、そう言ってる」

自分にできることを…。

「絶対に助けよう、だって僕達は」

ジャパリパークの…けものフレンズだから。


2話 ドール編に続く。






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