第2話 シング編2 「うたのないせかい」
…ウタが、キコエナイ。
ドウシテ…。
ドウシテ ウタわないの?
私のココロに、あのセルリアンが語りかけてきた。
アナタはウタえるのに、ワタシはウタえない…。
ナノに、ドウシテ?
私は、歌が大好きな気持ちをみんなに伝えているだけ…。
何も悪いことしてない!
イイナ ウタエテイイナ
アナタのコエ
何…?絶対に渡さない。
この声は私のもの…!アナタなんかに渡さない!
チョウダイ
「…っ!」
夢だ…。
「また、あの夢だ」
寝ぼけた瞼を擦って、目を開く。
チョウダイ
…っ!
目の前に、私そっくりのセルリアンがいた。
そのセルリアンは、私の首元を掴もうとしてくる。
私は必死にもがいた。
「…っ…!やめ…っ!」
でもそのセルリアンは執拗に私の首…いや、喉元を狙っている。
アナタだけにウタわせない
このコエはワタシのモノ
「…っ!…やめ…」
すると、そのセルリアンの頭に強烈なキックがお見舞いされた。
「シング!大丈夫か!」
リッジバックちゃん…!
私のために、力を振るってくれたのだ。
ワカッタ
ワタシのウタ…
コエがダセなくても…
…ワタシにはサヨのカシがある
サヨの歌詞…?
「一体何を…!私の歌でなにするつもり…?」
サイゲン…サヨのウタ…
セルリアンはサイゲンスル
サヨのウタを…"セルハーモニー"で。
声にならない叫びを、そのセルリアンはあげた。
でも、私のココロには聞こえてくる。
私は…声を失った時、歌えなくなったあの時…
最期に歌詞を書いた。
その歌詞には歌のない世界が描かれていた。
私の歌に対する執念が書かれていた。
タイトルは…。
「Lost Song…」
上空から、見たことのないセルリアンの群れが現れた。
「歌を失った…サヨの歌…。」
ヒナミちゃんに言われて、私は歌えなくなったあとも歌詞を書き続けた。
あの歌は呪われてる。
ヒナミちゃんに歌を奪われてからも、私はこの歌をココロで奏でていた。
このパークが、悪夢で包まれてしまった。
私達は博物館の地下に行きガグンラーズを手に取り、セルリアンに立ち向かおうとした。
バセンジーちゃんはお腹を抱え、うずくまっている。
リッジバックちゃんや他のフレンズ達は、ガグンラーズを持たずにセルリアンに立ち向かおうとしているが、アムールちゃんとテンシャンちゃんが阻止しようとしている。
テガミちゃんは、ヒナミちゃんを安全な所に避難させ、ガグンラーズを持ってセルリアンに立ち向っていった。
「セルリアン!早急に絶滅させる!」
スマトラドールちゃんは一人、ガグンラーズを手に取りセルリアンに立ち向かっている。
開発者のスマトラドールちゃんは、全てのガグンラーズを扱える。
「これで…数は減ったが…」
スマトラドールちゃんのお陰でセルリアンの数は減ったが、依然として上空にはセルリアンが現れている。
「私の歌で…みんなが…!」
私のセルリアンは、今も歌い続けている。
私は、また自分の歌で居場所を壊そうとしているのか。
「この呪いは、一生消えないのかな…」
いや、私は…呪われてなんかない。
ヒナミちゃんに、いっぱい助けてもらったんだ。
『戦おう。このままじゃ、パークから歌が消えちゃう!』
あの時の、ヒナミちゃんの言葉を思い出した。
私は避難したヒナミちゃんのもとに向かった。
「ヒナミちゃん!私は、まだジャパリパークでヒナミちゃんと夢を叶えてない!」
そしてヒナミちゃんは、私の目を見てしっかりこう言った。
「一緒に歌おう。このパークから、歌が消えないように」
私はヒナミちゃんの手を握って、一緒に口ずさんだ。
『うたうよセレナーデ 奇跡を願うんだ』
きっと…ジャパリパークの3人のフレンズ達が、助けに来てくれることを願って…!
『歌を繋げよう 僕らのこの想いを』
でも…。
歌は響いても…何も、起こらなかった。
…奇跡は起こらなかった。
「まだ、歌い続けなきゃ…パークに歌が届くまで!」
私達は歌い続けた。
セルリアンのセルハーモニーをかき消すように、不協和音に音を足して新たなハーモニーを奏でるように。
ウレシイ イッショにウタえた…
これでココにもタクサンウタがアフれる…
セルリアンが、私の歌に応えてくれた。
ココロが、共鳴した。
セルハーモニーは止んで、セルリアンはどこかに消え去ってしまった。
私達は外に出ると、そこには見たこともない景色が広がっていた。
まるで私達が願っていた念願の、ジャパリパークのような光景が広がっていた。
真っ暗だった空は晴れて、太陽の光が降り注いでる。
「これが、私達の楽園…」
ここはジャパリパークじゃないけど…
私達の大好きな気持ちがいっぱい詰まってる。
ここは…
後に、新与那国島と名付けられる島だ。
4話シング編に続く。
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