第12話 上書き同盟
私、藤宮樺恋は冬夜太一さんに恋をしています。
冬夜さんとはまだ出会って4日目。
まだまだ知らないところも沢山あります。
でも分かっていることは、とても優しい人だという事です。
冬夜さんは、自分自身も危ない目に遭う可能性があったのに、強姦魔四人から私を助け出してくれました。
その後も傷ついた私を『上書き』という名目で癒してくれています。
その上、何処かに出掛ける時には必ずついて来て下さって、守られているなという実感があります。
こんな事をされて好きにならない方がおかしいと思います。
今まで私は男の人から告白されることはあっても、自分の方が好きになる事は一度もありませんでした。
高校二年生でなんて遅いかも知れませんが、初恋なんです。
そんな恋に疎い私は気持ちを真っ直ぐにぶつけることしか知らないので、冬夜さんに引かれてしまっている部分もあるかも知れません。
でもこの想いは抑える事ができません。
ただそんな私の言動で助かった部分もありました。
双葉ちゃんを牽制できた事です。
もし双葉ちゃんが私の想いを知らなかったら、二人は今頃付き合っていたかも知れません。
でも依然として私は不利な立場です。
何故なら前から冬夜さんが好きだったのは双葉ちゃんなんですから。
私がこれから双葉ちゃんに勝てる見込みは正直な所薄いと思います。
でも今は冬夜さんから離れたくないです。
これからも抱きしめて欲しいですし、エッチな事も沢山したいです。
冬夜さん、大好きです。
◇
私、柊双葉は太一に恋をしている。
もうすぐ二年になるだろうか。
太一とは違う小学校で、中学から一緒になったものの、同じクラスになったのは三年からだった。
私は二年の終わり頃から三年の夏前まで拒食症で学校に通えておらず、復帰した時にはクラスの中で女子のグループができ上がってしまっていた。
ただ、容姿がよかった私は、クラスの男子達にもてはやされた。
結果、私は女子から嫌がらせを受けるようになった。
そんな時に、嫌がらせをしていた女子を黙らせたのが同じ班の太一だった。
同い年の男子達が皆幼く見えていた私にとって、太一だけが特別に見えた。
それから卒業まで裏工作をして、班替えの時には必ず太一と同じ班にして貰っていた。
中学を卒業してからは同じ高校に通えるとは考えてなかったので、同じ高校に太一が進学すると知った時は舞い上がった。
ただ、一年の時は別のクラスになってしまって、恥ずかしさから私から声を掛けに行くこともできず、一年が過ぎてしまった。
そして、先週念願叶って太一と同じクラスになる事ができた。
親友の樺恋も一緒だ。
ただ、その樺恋が太一に片思いをしていると言い出し、あまつさえエッチまでしてしまっていると聞いて物凄くショックを受けた。
でもその後私は強姦魔に襲われて、それをきっかけに太一に想いを伝えてエッチをする流れになった。
その時太一も私の事が好きだったと言ってくれて嬉しかったけど、付き合おうという言葉は太一から出て来なかった。
たぶん太一はここ数日で樺恋の方に惹かれているんだろう。
樺恋は女の私から見ても本当に可愛いと思うし、性格もいい。
大好きな親友ではあるが、こんな強い恋敵を相手にしたくはなかった。
今私から太一に付き合って欲しいと言っても、断られる可能性は高いと思う。
太一が今離れていったら私は耐えられない。
樺恋と話をしないと……
◇
「えっと、今日はどっちが太一と寝る?」
双葉ちゃんナイス提案です。
私は心の中で拍手喝采しました。
「そうですね、昨日双葉ちゃんは冬夜さんと寝たので、できれば私に譲って頂きたい所ですが」
「でも樺恋はさっき上書きして貰ってたんでしょ? どうしようか、お風呂の中で話し合って決めない?」
「いいですね、そうしましょう」
「おい、俺の意見はどうなるんだ?」
冬夜さんには申し訳無いですが、ここは冬夜さんの意見は無視する事とします。
そして、食事を終えた私と双葉ちゃんは、一緒にお風呂に入りました。
「じゃあ早速どっちが今日太一と寝るかだけど、三人で一緒っていうのはどうかな? でも明日はできれば私に譲って欲しいかな。私、太一にまだ一度しか上書きして貰ってないし……」
「いいですね、三人で寝るの。明日は双葉ちゃんの番で構いませんよ」
「じゃあ今日は樺恋に使って貰う予定の両親の寝室で寝ようね。ちなみに太一にはリビングの横の和室を使って貰うつもり」
「分かりました」
私は冬夜さんの事も好きですが、双葉ちゃんの事も大好きなので三人で寝ると聞いて嬉しくなってしまいます。
「えっとあとね、樺恋とは決め事をしておきたいの」
「決め事ですか?」
「うん、もう改めて言う事じゃないと思うけど、私達二人とも太一の事が好きでしょ? でもどちらかが太一と付き合っちゃうと、上書きして貰ったり、守って貰ったりっていうのに偏りが出るというか、最悪太一次第ではどちらかになっちゃうよね?」
「はい、そうなるかも知れません」
「だから私達を襲った犯人達が捕まるまでは私達から告白はせずに、太一から告白されても保留するようにしない?」
「はい、私としてもその方が助かります」
内心私はこれですぐに冬夜さんから離れなくて済むと思い、胸を撫で下ろしました。
「じゃあ『上書き同盟』って事でよろしくね! 暫くは太一を二人で共有しましょ」
「はい、よろしくお願いします」
◇
「随分長い事話し合ってたんだな?」
「ええ、まぁちょっと色々ね。あと今日は三人で寝る事になったからよろしく」
「冬夜さん、まだまだ時間はありますし、楽しみましょうね」
連日藤宮さんや柊と寝ていて寝不足気味なのに、今日もゆっくり寝ることができなさそうだ。
明日からまた一週間学校が始まるのに俺の体力は持つだろうか。
「太一、早くお風呂入って綺麗にしてきて。ベッドで待ってる」
「冬夜さん、お待ちしています」
これはいわゆる3Pというものがこの後待っているんだろうか。
数日前に童貞卒業したばかりなのに、早過ぎだろう。
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