第10話 上書きの約束
昨夜は安心させるため、柊を抱きしめながら眠りについた。
朝起きた時柊はいつも通りの様子に戻っていたが、さすがに1日で立ち直ることはできないだろう。
俺が心配しないよう、元気に振る舞ってくれているに違いない。
そう考えると、藤宮さんも俺を気遣って俺の前では元気に振る舞ってくれていたんだろうか。
いや、そうだろう。
もし俺が女性で同じ立場なら、立ち直れない程ダメージを受けているはずだ。
そう言う意味で二人とも本当に強い女性だと思う。
そんなことを考えつつ、俺は藤宮さんの家に向かっていた。
藤宮さんには昨日通話で大体の概要は話していて、13時に家に行くと伝えていた。
三人で共同生活を始めることを了承してくれたのだ。
藤宮さんの家の前に着き、インターフォンを押す。
が、藤宮さんは出て来ない。
そういえばインターフォンが壊れていたんだった。
ドアをトントンとノックすると、こちらに駆けて来る足音が聞こえる。
「冬夜さん、お帰りなさい。どうぞ入って下さい」
「ああ、それじゃお邪魔します」
1日振りに藤宮さんの家に帰って来たはずだが、この前この家に居たのが凄く前のことのように感じられる。
それだけこの24時間が自分にとって濃密だったのだろう。
「冬夜さん、改めてお疲れ様でした。双葉ちゃんの様子はどうですか?」
「昨日家を訪ねた直後はかなりショックを受けてたみたいだけど、今朝はいつも通りの柊に戻ってたよ。俺を心配させないようにそう振る舞ってるだけかも知れないけど」
「いえ、実際に冬夜さんのお陰で元気になれたんだと思いますよ。えっと、泊まってきて双葉ちゃんがその様子ってことは上書きしましたよね?」
俺が好きなのが柊だと見破ったこともそうだし、藤宮さんどうしてこんなに勘がいいんだろう。
女の子は皆そういうものなんだろうか。
「藤宮さんにはバレバレだな。ご推察の通りだよ」
「やはりそうでしたか。付き合う事になったりはしなかったんですか?」
「いや、そういう話にはならなかったな」
確かに俺が告白していたら上手く行っていただろうし、柊から告白される可能性だってあったはずだ。
ただ、実際俺は告白しなかったし、告白されてもそれを受けていたかどうかは自信が無い。
こう考えてしまう原因は間違いなく目の前に居る藤宮さんのせいだろう。
「そうなんですね。まだ私にもチャンスが残っていてよかったです。あとこれは私の興味なんですけど、どんな上書きをしたんですか?」
「えっと、話さないと駄目か?」
「話してくれないと、嫉妬でどうにかなっちゃうかも知れません」
内容を話すと余計に嫉妬されるんじゃないかと思いつつも、俺は話すことにする。
「えっと抱きしめてキスして、その後は口でシて貰ったりとかだ……」
「私冬夜さんとキスまだした事ありません。双葉ちゃんに先を越されてしまいました。それに口でするなんて双葉ちゃん大胆です♡」
藤宮さんは嫉妬するかと思ったが、目をキラキラと輝かせていた。
昨日の夜も一人でシていたようだし、エッチなことが結構好きなのだろうか。
藤宮さんは強姦された嫌な記憶を消すためにエッチをしているのか、純粋にエッチがしたくてエッチをしているのかどちらなのだろう。
「確認なんだけど、藤宮さんが俺とエッチするのは上書きが目的なんだよな?」
「はい、もちろんそれもあります。一回目の上書きは本当に嫌な記憶を消して貰う為だったんですけど、二回目の時は冬夜さんの事が好きになっていたので、純粋に冬夜さんとエッチがしたいという思いもありました」
「そっか。この前に後三回はして欲しいって言ってたと思うから、あと二回になると思うと思うんだけど、その辺はどう?」
「冬夜さんが嫌じゃなければ回数制限はなくして欲しいです。冬夜さんは双葉ちゃんとシたいかも知れないですけど……」
「分かった。俺の上書きであの記憶が少しでも消せるなら、これからもシよう」
そうは言ったものの、もし柊と付き合うことになれば、その時はさすがに断らないといけないだろう。
ただ、それを言うことは止めておいた。
今俺の中で柊か藤宮さんか選べない状態だからだ。
「冬夜さん、こんな話をしていて早速で申し訳無いんですけど、今から上書きして貰えませんか? 双葉ちゃんの家に行ったらやりずらくなるかも知れませんし……」
「分かった。とりあえず、荷物纏めてからにしないか?」
「私は午前中にやっていたので大体終わってるんですが、冬夜さんはまだ時間掛かりますよね? 私お風呂入ったり色々してるので、冬夜さんの荷造りが終わったらこちらの部屋にまた来て頂けますか?」
「分かった。じゃあまた後で来るよ」
藤宮さんに一旦別れを告げて、隣の自分の部屋に戻る。
そして、荷造りをしつつ、ここ連日とびきりの美少女達とエッチをしている現実を改めて思い出し、夢じゃないのかと放心していた。
それにこの荷造りが終われば隣の部屋で藤宮さんとエッチだ。
エッチの約束をするなんて初めてだったが、何てワクワクするんだろう。
早くもアソコが膨張してくる。
俺は早く藤宮さんのところに行きたい一心で、手早く荷造りを済ませた。
部屋を出て隣の部屋のドアをノックすると、またこちらに駆けて来る足音が聞こえてくる。
そして、ドアが開かれると、そこには裸に透けた黒のキャミソールだけを着た藤宮さんが少し赤い顔をして立っていた。
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