13


 ——まぶたの裏が白くなって、目を開けるとルシウスがいた。

 天井で光の球が浮いている。

 半身を起こして辺りを見回すと部屋の前にいると分かった。

 

 私の前には、シャドウウルフとライトウルフの夫婦が座っている。

 二匹とも、なんだか神妙な面持ちに見える。私を見る目が変わった感じだ。

 

「ノインが起きるまで待ってくれてたみたいだよ」


「ちょうなんだ。ルチウちゅは?」


「僕は今起きたところ。ノインが外で寝てるから驚いたよ」


 風邪を引くといけないから、今度からは気をつけてね。

 そう言って、ルシウスは私の頭を撫でた。

 やだなに、この幸せ。ほっぺがぽっぽしてきちゃう。

 両手で頬を押さえずにはいられない。

 落ち着くのよ、アンコ。いえ、ノイン。


 深呼吸して、シャドウウルフたちに向き直る。

 すると二匹が伏せをした。なぜか、お礼をしていると分かった。


《ノイン、ありがとう。俺もこいつも、この通り元気になった》


《主人から話は聞きました。ありがとうございます》


《いいのよ。私たちも、ここに住まわせてほしくてやったようなもんだし》


 シャドウウルフが、かぶりを振る。


《それでも普通は追い出そうとするものだ。話を聞いてくれて感謝する》


《魔物と人は相容れない存在。そのように定められた中で、ノイン様のような方とお会いできて、本当に嬉しく思っているのです。これは、星の導きに違いありません》


《確かに、そうね。私はこの星、エルモアに導かれてここに来たから》


《なんと⁉ ノインは星の使者様だったのか⁉》


《やはり、奇跡だったのですね……!》


 二匹が大きく目を見開いて起き上がる。


《ノイン様、これまでの無礼を許してくれ。俺はアスラ。従者にしてもらいたい》


《わたくし、ディーヴァも、夫と共にお仕えさせてください。星の使者様の為に働けるなど、わたくしたちにとって幸せでしかありません。どうか、お願いいたします》


 星の使者というのが何なのか分からなかったけど、取り敢えず二匹を受け入れた。

 話はあとでもできるからね。


 早速、私の中にある住処に案内しようか。

 と思ったけど、二匹とも臭かったので、まずは洗うことにした。


 アスラが臭かった理由は、ディーヴァが怪我と毒で苦しんでいたからって分かると、臭いと言ったことを申し訳なく思った。奥さんの為に一生懸命だったのよね。


 素敵な夫婦じゃない。一緒に暮らせるのが嬉しいわ。


「ねぇ、ルチウちゅ、しぇっけんって持ってりゅ?」


「しぇっけん? ああ、石鹸ね。うん、持ってるよ」


「ちゅかわせて、もりゃってもいーい?」


「もちろん。ついでに僕たちも洗おう。洗濯もしたいからね」


 ルシウスの言葉通り、その後はみんなで泡だらけになった。

 洗うのが大変で、ハァハァしてる暇もなかったけど、この世界に来て初めて楽しめた。

 その日は、ルシウスと一緒に、アスラとディーバのモフモフした毛に包まれて眠った。

 微かに花の香りがして、とても幸せな気分だった。

 

 

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