諫何進召外兵

「易経」に「鹿を追うのに勢子がいない」という句があり、ことわざにも『目を掩って雀を捕える」と申して、いずれも猪突猛進することをいましめています。

そもそも、どんな小さな物でもだまして手に入れてはいけません。

兵権を掌握し、竜が天翔け虎が地を行く勢いで、すべてが思いのままになっています。

将軍の力で宦官誅殺をおこなうのは、大きな炉で髪の毛を焼くのと変わりません。

ただし疾風迅雷のごとく臨機に断行すべきであります。

常法によらずも、道理にかなっておれば、天も人も味方してくれるものです。

それなのに、将軍は臨機断行という利器を捨てて、他人から力を借りようとなさっています。

他人の大軍勢が都に集まると、そのうちの強い者が頭になってしまいます。

これはいわゆる『矛を逆さにもって、柄のほうを相手に握らせる』ようなもので、けっして成功しないでしょう。

ただ動乱の引き金となるだけです。


林田愼之助『三国志と乱世の詩人』(2009年、講談社)より

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