遊覽二首 其一

髙會時不娯,羈客難為心。 髙會して時に娯しまず、羈客は難し心を為すを。

殷懐從中發,悲感激清音。 殷み懐ふこと中從り發し、悲しく感ずること清音を激しくす。

投觴罷歡坐,逍遥歩長林。 觴を投げて歡坐するを罷め,逍遥して長林を歩く。

肅肅山谷風,黯黯天路隂。 肅肅山谷の風、黯黯天路の隂。

惆悵忘旋反,歔欷涕沾襟。 惆悵し旋しに反するを忘れ、歔欷し涕は襟を沾らす。


宴会を開いてもその時には楽しまず、旅人は心を楽しませることが難しい。

感傷が心の中から発せられて、悲しい思いに澄んだ声色を張り上げる。

さかずきを投げて楽しく宴席に座ることをやめ、ふらふらと長い林の中を歩く。

ひゅうひゅうと山谷の風は吹き、くらぐらと天に続く道は陰っている。

さめざめと宴のもてなしに反することも忘れて、しくしくと涙で襟を濡らしてむせび泣く。


☆「肅肅(しょうしょう)」、「黯黯(あんあん)」、「惆悵(ちゅうちょう)」、「歔欷(きょき)」

双声語(声母、いわゆる子音が同じ熟語)を四句連続させる遊戯性は勿論のこと、心情の切迫をオノマトペで読み手に伝えている。

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