第10話 そこにあったエレベーター
マイには悪いけど、まずは自分の身の安全を優先しよう。さっきは彼女がさらわれたと判断したけど、もしかしたら1人で先に脱出したのかも知れない。それに……考えたくはないけど、助けに行ったところでもう手遅れかも知れないしな。
取り敢えず、俺はこの謎だらけの建物を探索を再開する事にした。1人で脱出するにしても、このビルを調べ尽くさない事には何も始まらない。
「しかし、いつどこで何に襲われるか分からんと言うのはやっぱ怖いな……」
ビル内はとても静かだ。夕暮れ時で淋しい雰囲気が強調される。1階にあるそれぞれの部屋は、入れたりそうでなかったりしている。部屋に入れても、そこには全く人の気配がない。一体これはどう言う事なのだろう。
探す中で武器的なものでも手に入ればと思ったものの、普通のオフィスにそんな物があるはずもない。
「ゲームだったらナイフとか弾薬が何故かあったりするんだけどな……」
俺は現実とゲームとの違いを実感しながら室内を巡る。武器になりそうなものと言えば、ボールペンとかだろうか。訓練された達人ならコレで人を殺せると何かで読んだ気がする。
ただ、それは人間相手の場合だ。ゾンビだとかそう言う化け物ではうまくいかないだろう。さっき俺を襲ったのがそう言う化け物とは限らないけれど。
「銃は無理でも剣的な、バットでもいいんだけどなー」
新しい部屋に入る度に長い棒的なものを探すものの、そんな都合よく見つかるはずもなかった。脱出と言えば、窓からの脱出と言う手も考える。けれど、何故かどの窓も開ける事が出来なかった。
手動で窓を開けられないと言う謎仕様。つまり、このビルは普通のビルではないと言う事だ。そこから考えられる結論は、ビル内で何かが起こった時に中のものを絶対に外には出さないぞと言う強い意志。
「このビルのどこかでやばい実験をしている……?」
それが、このビルの一階を粗方巡って導き出した俺の結論だ。多分外れていたとしても当たらずとも遠からずだと思う。ああ、どうしてこんな怪しいビルに入ってしまったんだ。
今更になって過去の自分の選択を悔やみながら、1階エリアの探索は終わる。こうなると、次は別の階へ移動するしかない。既にその移動手段は探索中に発見している。エレベーターと階段だ。どっちがいいだろう。
階段は移動するだけで体力が削られるし、やはりここはエレベーターだろうな。そう決めた俺が方向転換をして動き始めたその時だ。突然向こう側からゾンビとは違う化け物が現れた。
体全体は濃い緑色っぽい感じで、全身が焼けただれているように見える。背の高さは俺よりちょっと高いくらい。180センチくらいだろうか? 目はうつろで口は大きく裂けている。服は何も着ていない。下腹部は膨れていて今にも爆発しそうだ。なんだこいつー!
「シャウワー!」
「わああああ!」
その化け物はいきなり大きく口を開けて威嚇したかと思うと、いきなり俺に向かって走ってくる。このままだと襲われると本能的に感じ取った俺は、すぐにこの場から離脱した。武器も何も持っていないのだから逃げるしかないよな。
体力の限界すら無視して、全力以上のパワーで俺は廊下を走っていく。
「ヒィィィィ!」
無我夢中で走っていると、前方にエレベーターが見えてきた。階数表示が光っているので、どうやらここはまだ電源が生きているらしい。俺は何も考えずにエレベーターの扉を開ける。この階で待機していたので、扉はすぐに開いた。ラッキー!
エレベーターに入った俺はすぐに扉を閉じる。化け物も迫ってきていたものの、何とか入り込まれずに済んでいた。間一髪で助かって、俺はほっと胸を撫で下ろす。
改めてエレベーターを見ると、上にも下にも行けるようだ。この場合、どこに移動するのが正解なのだろう? 俺は顎に手を当てて次の行き先を考える。
上に登る
https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330649105248527
下に降りる
https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330649105312709
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます