第7話 最後の死闘
俺はシーリィから託された魔法剣の強度を信じる。この剣を渡された時、彼女は自分の持っている武器で一番出来のいいものだと言っていた。剣に魔法を宿らせる事で様々な戦い方が出来、それによって無限の可能性があるのだとも――。
俺は魔王を見定め、ヤツに有効だと思う魔法を次々に付与していく。この手の剣はひとつかふたつ程度しか魔法を乗せられないものが多い。だけど、シーリィの魔法剣は彼女の術式が編み込まれているためにその制限がないのだ。
炎、石化、光、重力、雷、混乱、眠り、毒……俺の魔法を剣は貪欲に取り込んでいく。もし魔王を倒すのに特別な剣が必要だったとしても、この魔法剣がその代わりにも成り得るはずだ。ありとあらゆる魔法の効果を得た魔法剣の鈍く光る刃を見た俺は、そう確信した。
この作業に俺は数分を費やす。不気味なのは、この間全く隙だらけだと言うのに魔王が全く動かない事だった。
「いつまで待てばいいのだ?」
「魔王の癖に律儀なんだな」
「我は最高の戦いがしたのだ。そのための準備ならいくらでも待ってやる。最高の状態を叩き潰すからいいのだよ」
「悪趣味なやつめ。前言を撤回するぜ」
ありったけの魔法を取り込み、現時点での最強の魔法剣が完成する。俺はすぐに剣を構え、魔王との間合いを計った。柄を握る手に汗が滲む。
「やっと攻撃に移るか。待ちかねたぞ!」
「テメエの軽口もここまでだ! 行くぞ、魔法剣剣技、ステルスフラッシュ!」
俺はこれまでの戦いで編み出した必殺の剣技を御見舞する。簡単に言うと、ものすごい速さで動いて敵を切り刻むと言うものだ。今までこのステルスフラッシュを食らって生き延びたモンスターはいない。
だから今回も同じ結果が待っていると、俺は強く信じていた。
「これで終わりだァーッ!」
俺が自慢の剣技で迫っていると言うのに、魔王は不敵な笑みを浮かべたまま。全く動じてはいない。どうしてそこまで余裕をかませるのか不思議に思うほどだ。
その笑みの理由を、俺はすぐに知る事となる。
「うがっ!」
様々な魔法で強化した剣が魔王の体を貫けなかったのだ。切り刻むために薙ぎ払った剣が、魔王の体に接触した瞬間に呆気なく砕け散ってしまった。魔法でむちゃくちゃ強化していたのにも関わらず。
振り抜いた後に刃の部分がなくなった魔法剣を見た俺は、すぐには現実を受け入れられなかった。
「あーっはっはっはっは! 我の体は神の祝福を受けたものでなければ傷ひとつつかぬのだ! お前もよく頑張ったな!」
「なん、だと……?」
「健闘の褒美に、痛みを感じさせずに殺してやろう」
「ちょ、ま」
それが俺の最後の言葉になった。魔王は俺を切り刻むと魔法の炎で焼却。後には何も残らなかった。ここまで来て、魔王を倒す武器を持っていなかったと言うだけで終わってしまうだなんて――。
魔王城に臨む前に、もっと魔王の事を調べておくべきだった。ああ……。
魔王に倒されてしまったエンド
あとがき
https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330649434801415
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます