第4話
ルーティンがあった。大きなクレームがあった日はホットコーヒーを飲んで一息ついてから、誰もいないフロアのトイレに行く。個室にはいって、履いているものを脱ぐ。半端な状態は気に食わなかった。便器に座る。正面からではない。どこか落ち着かないから。水タンクの方を向いて、またがるようにする。空想の視線を背中に受けながら、心臓を高鳴らせる。存在しない視線でも、見られることは心地よく罰されることのように思えた。タンク上に水が流れるタイプの便器は嫌いだった。携帯で動画を見ながら行為を一通り終えて、少しの感慨に浸りながら目を閉じて水を流した結果、携帯電話に水がかかって故障してしまったことがあったからだ。すべて自業自得であまりにしょうもない出来事だったため、その時は思わず笑った。ただ、そのタイプの便器に対しての静かな怨嗟は今でも続いている。
すべての階の清掃時間を正確に把握してるのはわたしだけかもしれない。それを考慮してそういう日のスケジュールを組み立てているのも。周りに流されて転職したコールセンターを仕切る仕事は楽しくもあり憂鬱でもあった。クレームで精神的なダメージを受ければ受けるほどに、トイレで過ごす時間が楽しみになった。
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