第2話
住んでいた街は比較的大きな街で、中心部の周辺をいくつもの大きなバイパスが囲んでいた。今運転しているのもそのバイパスの一つで、街の東側と南側を結ぶ片側三車線の道だった。昼間は車通りが多くてあまり通りたくないこの道は、深夜になると誰かひとりだけが走るために用意されたような雰囲気になる。薄闇のお立ち台。どちらの車線も通行量はほとんどなくて、街頭がほんのりと周りを照らしていた。
さっきの誤発進を誰かに見られただろうか。見られたとて、と思いつつも気になって仕方がない。しかし確認するすべもない。どうしようもない。焦燥は少しずつため息に溶けて、夜と同化していった。
少し走ったところで、道沿いのコンビニが目に入った。買いたいものあったっけ。ウィンカーが点滅する。ハンドルが左へ、ゆっくりと流れてゆく。習慣の力か。店舗前の縁石を確認してブレーキを緩めていく。また無駄遣いか。でもせっかくだから何か買おうか、と財布だけ持って車をでる。そうだ、保湿剤。眼鏡拭きも買おうか。カギをかけるのを忘れてしまった。コンビニの窓ガラス一面が結露している。ガラスとサッシの境目のパーツに無造作に引かれた蜘蛛の巣があった。濁った水滴が糸に張り付いて鈍い光を放っている。
店内でサイダーを手に持って、今日一日を振り返っていた。朝起きて、排泄、食事、通勤して、食事、排泄、仕事して、排泄、休憩して、仕事仕事、食事して、飲んだ。排泄の前後には多少のオナニーが含まれていた。午後の気だるさの中、ビルの別の階のトイレに行ってそっと性器を触っていた。
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