第56話
ゆうちゃんの寝ている部屋に向かうと、そこには寝かせた時のままの姿のゆうちゃんがそこで待っていた。
まるでただ眠っているだけのような姿に淡い希望を抱かされる。
しかし、近づくとやはり息はしていない。
【快治】
俺はすぐさまゆうちゃんを回復した。
しかし、変化は無い。
と言うかゆうちゃんが綺麗すぎるのだ。
まるで死んでいないような姿だ。
ゆうちゃんが死んでしまってからもう何日も経っているはずなのに、生きている人間と変わらないほどの綺麗さを保っている。
もしかすると、ゆうちゃんが持っていたスキルの
ならばまだ時間がある。
その効果がいつまで続くか分からない以上、急がなければいけないのには変わりは無いのだがそれでも猶予が出来るという事はかなりありがたい。
とりあえず俺は家に帰ってまた箱を開ける作業に戻ろうと思うのだが、俺はもうこのまま箱を開け続けたとしてもゆうちゃんを生き返らせることは出来ないような気がしてきた。
何故なら、快治を使うと相手の傷などがどんな風に治っていくかなども分かるのだが、ゆうちゃんには
いくら快治と言えど無い傷を治す事など出来ない。
ここからゆうちゃんを生き返らせる為には多分もうワンステップ必要だと思うのだが、それがなんなのかさっぱり分からない。
このまま快治のレベルを上げるだけで生き返らせることができる可能性も無くはないと思うが、その可能性は低いと俺は考えている。
そこで手掛かりになると思うのが
陽夏が言うには俺は明らかに死んでいたらしいし、その状態から復活出来たのだったら、きっとゆうちゃんを生き返らせる方法だってあるはずだ。
俺が生き返ったのは確かばく? とか言うスキルのお陰らしいし、そのスキルでゆうちゃんを生き返らせる事だって出来るかもしれない。
とりあえず家に帰る前に1回コナーに会いに行って、鑑定してもらおう。
俺はゆうちゃんの頭を撫でた。
うん、やっぱり
少なくとも生きている人の体温じゃない。
ゆうちゃんの体はやけにひんやりしていて、俺の不安を掻き立てた。
もしこのままゆうちゃんが生き返らなかったら。
そんな思考で頭がいっぱいになる。
ダメだ、こんな事を考えたらそれが本当になってしまうかもしれない。
俺は思考を振り払うかのようにゆうちゃんにキスをした。
「また今度来るから、絶対に生き返らして見せるから、ちょっとだけ待っててね。」
俺はそう言い残すと部屋を出た。
まずはコナー探そう。
俺はまずはこの建物内でコナーを探すことにした。
コナーの部屋に行くためにまずはエントランスのような場所に出た。
…………それが間違いだった。
何故なら、そこには夥しい人数の強そうな人達が集まっていたのだ。
くっ、なんで俺はこんなに学習能力が無いんだ!
この前ここに来た時も同じような状況だっただろうが!
俺が踵を返して逃げようとした時、1人のおっさんが声を上げた。
「お! あの時の俺達を治してくれた奴じゃねぇか!」
おっさんがそう声を上げると、周りの人達も俺に気づいたらしく、ゾロゾロと集まってきた。
集まってきた人はみんな俺にお礼をしたりと友好的な態度だった。
…………だからと言って俺がその人達に慣れることは不可能だ。
俺は人馴れしていないペットくらい人見知りなのだ。
故に少し人が集まるだけでも俺レベルになれば余裕で死ねるのだよ。
そんな事をこの人達が知ってるわけもないので、みんな俺の事を揉みくちゃにしていく。
あっ、意識がとぶっ。
その時、救いの声が聞こえた。
「ストップストーップ! 晴輝君はあまり人馴れしてないんだからみんなあんまり集まらないでー!!」
コナーの声だ。
コナーはその小柄な体を活かして俺の元へ駆けつけ、俺の手を引いた。
ああっ、もう、カッコよすぎないか?
俺が男の事が好きな人だったら即堕ちだろう。
コナーはそのまま俺をコナーの部屋まで連れて行き、パタンと扉を閉めた。
「ふぁー、ありがとうコナー。助かったよ。」
「ふふっ、全然大丈夫だよ。急に外が騒がしくなったから何事かと思って見に行ったら君がもう本当に揉みくちゃにされてたものだから笑っちゃったよ。それで、僕にスキルの鑑定をして欲しいんだって?」
「あぁ。なんで知ってるんだ?」
「陽夏ちゃんが教えてくれたからね。」
あぁ、だからか。
いやぁ、本当に陽夏は気が利くな。
コナーは陽夏が言伝してくれたから俺の事を助けに来ることが出来たのだろう。
陽夏さまさまだな。
「実は俺が何かよく分からないスキルを使ったって陽夏が言っていたんだ。そのスキルを使った時に俺が
「…………そっか。分かった。実はこの前鑑定した時もささっと鑑定しただけでじっくり見れてなかったからまた今度じっくり鑑定したいなって思っていたところなんだ。そういう事なら任せて!」
コナーは目を光らせてそう言った。
少し不穏な空気は感じたが、気の所為ということにして鑑定をしてもらう事にした。
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