第57話

「えっと、君のスキルは…………相変わらずとんでもないね。」


「出来ればその、スキルとかを紙とかに書いてくれないか? 多分俺が思っているよりも成長してるスキルとかもあると思うから確認しておきたいんだ。」


「ははっ、そんな事頼んでくるのは君くらいだよ

。他の人だったら多くても5個6個くらいしかスキルを獲得出来ないからね。」



そう言われるとなんだか自尊心がくすぐられるな。


自分が恵まれた存在だという事を再確認させられる。


それでもまだ足りない。


ゆうちゃんを生き返らせるのにはまだまだ力が足りていない。



俺はコナーに書いてもらった俺のスキルを確認した。



その紙を見ると、俺が思っていたよりも完全再生と快治のレベルが高く、そして俺知らないのスキルである夢食ばくという物があった。


しかも、そのスキルはレベルが2になっており、どこかでレベルアップまでした事になる。


「コナーは夢食ばくって言うスキル知ってるか?」


「うぅん、聞いた事がないね。そのスキルは夢を食うものらしいんだけど、よく分からないんだよね。」


「陽夏が言うには、さっきの火の玉を打つ女の人の事をこのスキルを使って吸収してたらしいんだ。」


「吸収…………。」



コナーは少し考える様子を見せた。



「いや、やっぱり分からない。ごめんね、力になれなくて。」


「あぁ、全然大丈夫だ。俺に夢食ばくと言うスキルがあるって事を教えてくれただけでも十分だ。」



まぁ、そのスキルがあるという事が分かったところで使えなかったら意味が無いのだが、それでもゆうちゃんを助けられる手掛かりが少しでも増えてくれたらそれだけでもいいのだ。



俺がお礼を伝え、部屋から出ようとしているとコナーが慌てて止めて来た。



「ちょっと待って! そういえば帰る前に陽夏が声をかけてって言ってたからちょっと陽夏に声を掛けてから帰ってくれなかい? 陽夏はさっき君達がいたあたりで瓦礫の撤去と怪我人とかが居ないかどうか探してるから、探してあげて!」


「あぁ、分かった。」



陽夏が俺に用か。


他の人なら迷わず家に直行なのだが、陽夏なら話は別だ。


俺は陽夏を探すことにした。


別に下心があるとかそういうのは一切無いのだが、ただ、善意には善意で返したいのだ。



「うん。これで伝えたい事はもう無いかな。じゃあ、頑張ってね。」


「あぁ。」



コナーはニコッと笑い、俺を送ってくれた。


俺は友達がいたらこんな感じだったのかなと思いながら外に出た。



外に出たらまたすぐそこにパワー系の人達がいっぱいいたので、エントランスとは反対方向にダッシュして裏口から外に出た。


流石にまた揉みくちゃにされるのはキツイからな。


外に出た俺は何故かその場に立ち尽くしていた陽夏に声を掛けた。



「…………何やってんだ?」


「ん? 晴輝?」



声を掛けられ振り返った陽夏の額には汗がついており、良く見たら体も小刻みに震えていた。


そして、手に陽夏の方なが握られており、かなり異様だった。



「いや、なんかさっきからこの刀がおかしいのよ。なんか動くの!」


「動く?」



陽夏が持っている刀を見ると、確かに陽夏の力とは逆の方向に力が掛かっているように見える。



「私もわかんないんだけどっ、なんかどんどん強くなってるの!」



そう言っているうちに陽夏は刀の力によってズルズルと引きずられだした。



「あー、とりあえず刀が向かってる方向に言ってみるか?」


「けど、まだ瓦礫の撤去とかも終わってないんだけど…………。」


「その状態ならどうせ何も出来ないだろ。それにその刀の向かう方向にお宝とかでもあるかも知れないだろ?」


「確かに…………。じゃあ、行くわ!」



そう言うと陽夏は勢いよく走り出した。


何処に行っているのかは分からないが、刀は一直線にどこかへ向かっていっている。


すると、どんどんと見慣れたクレーターが増えてきた。


これは火の玉によるクレーターだ。


陽夏は勢いよく進んで行ったが、ある所でクレーターに足を引っ掛けてしまっていた。



「きゃっ!」



よし、ここはカッコ良く助けよう。


俺は今まで出したことが無いような速さで陽夏の前に出て、陽夏を抱きとめた。


うん、かっこいいんじゃないか?



「陽夏、大丈夫か?」


「うっ、うん。」



よし、決まったな。やっぱりこう言う事をすると何だか俺の男の子の部分が刺激されて中々にいい気分だ。



ズルズル



何故か嫌な予感がする。


ん? あれ? なんか俺の体引きずられてない?


そう思ったのもつかの間、刀の力は更に増し、俺と陽夏を同時に引きずるほどまでの力となった。



ま、まずい! このままだと俺も陽夏もどっちも怪我をしてしまう!


まぁ、快治もあるし別に怪我くらい良いんだが、しないのが1番だろう。


くっ!? どうすれば!


俺と陽夏が必死に刀を止めようとしていると、刀は急停止し、地面へと突き刺さった。



「えっ。」



俺は予想外の事に受け身も取れずに、地面に叩きつけられた。



…………と思ったが痛みが無い。



「大丈夫!?」



陽夏の顔が近い。


どうやら陽夏が俺の頭が地面に着く前に頭と地面の間に手を入れていてくれたようだ。


俺は床ドンされているような体制のまま固まってしまった。



…………陽夏、カッコよすぎん?



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