第23話
「ふわぁ、あれ? ここはどこ?」
「お、起きたか。」
箱を開け始めて1時間ほど経ったところでコナーは目覚めた。剣術はLV9になっていた。
「ここは俺の家だ。どうだ? 状況は把握出来たか?」
「え?」
やっぱりまだ状況が把握出来ていないようだ。
俺は冷蔵庫からペットボトル水を取り出しコナーに投げ渡した。
冷たかったのか「ひゃっ」と言う声を上げながら受け取ったコナーは頭にはてなマークを浮かべながらちびちびと水を飲み始めた。小動物みたいだ。
「はっ! そうだ! 僕は箱を開けに…………っ!?」
「大丈夫か!?」
コナーは頭を押さえだした。
まさかまだ痛むのか!?
「だ、大丈夫。ちょっとズキっとしただけだよ。けど、それのお陰でかなり頭が冴えたよ。」
「そうか。良かった。だが、一応治癒だけ掛けさせてくれ。」
そう言って俺はコナーの頭に手を当てて治癒をかけた。
「あっ、取っちゃったんだね。ごめんよ。僕のせいで要らないスキルを取らせてしまって。この償いは必ず…………。」
「いいよ、そこまで要らないものでもないし。それに、マスターであるコナーに恩が売れたってだけで俺には得だ。だから、今の所は償いとかは大丈夫だ。」
「そうか。ありがとう。」
俺はやはりいい人にはなれない。だから俺の利益にならないことはできない。
こう言っておくだけで少なくともコナーは俺に恩義を感じるだろう。それでいい。
俺だっていい人じゃないだけで悪い人にはなりたい訳じゃない。印象は良くしておかないとね。
「それで、何があったんだ?」
これが本題だ。何があったのか。コナーが持病だったとかなら俺には被害は来ないが、この部屋のせいだったりしたら俺にも被害が来るかもしれない。
「あぁ。視ちゃったんだ。いや、視れてはいない。表面を一瞬頭に入れただけだ。なのにこの情報量。異常だよ。」
「何を見たんだ?」
「それだよ。」
コナーは俺の手を指さしてそう呟いた。俺の手の中にあるもの。そう。謎の箱だ。
「それの情報量は明らかにおかしい。この世にあることの出来るものの範疇を越えている。」
「どういう事だ?」
「例えるなら、その箱には無限の力があるって感じかな? それ以上は僕には上手く表せられない。」
まって、全然話が分からない。
「そもそもお前は何をしたんだ? 俺はそこから知りたいのだが。」
「あぁ、そうだ言ってなかったね。僕はね、スキル《鬼眼》を持ってるんだ。このスキルは凄いよ。色んなことが出来る。例えば物の鑑定。君の能力値を視たのもこの能力だ。そして相手の眼の操作も出来る。」
「この前のゴブリン達の眼を閉じさせた奴みたいなものか?」
「ご名答。」
とんでも無く有能なスキルを持ってるな。さすがマスターと言ったところか。
「僕はその箱を鑑定したんだ。本当に一瞬の時だった。多分僕が知覚できるよりも少ない時間だったのだけど、それでもあんな感じになってしまった。脳が処理しきれなかったんだ。情報量が無限なんだと思う。一瞬で意識が無くなったからその情報が頭に入ってこなくて僕は生き延びたと言った感じかな。」
うん。難しいな。よく分からない。だが、俺に大切なのはこの箱が危険なのか安全なのかだ。取り敢えずそれが知りたい。
この箱の力で今の俺は力を得ている。それが危険なんだったら怖い。
最早聞きたくないほど怖いが覚悟を決めて聞くことにした。
「コナー。この箱は危険なのか? それとも安全なのか?」
「んー。分からない。情報量が無限にあるって事くらいしか分からないな。」
「そうか…………。」
とても不安だ。だが、もう俺はこの箱が無くてはだめだ。この箱を持っているだけで俺は最強になれる。だから俺は危険と言われても箱を開け続けただろう。
「美味い話には裏があるってよく言うからね。気をつけてね。」
「分かった。」
不安は残るが、一旦は忘れる事にした。
「ふわぁ。んー、今何時だい? 何も考えずに飛び出してきちゃったけどさ。僕ってほら、マスターだから。居なくなっちゃうとちょっと困るんだよね。」
「帰るか?」
「んー、危ないしなー。チラチラッ」
コナーは猫撫で声でそう呟きながら察して欲しそうな眼差しでこっちをチラチラと見た。
あざといな。だが、ここにコナーを泊めたとしても特に出来ることもない。送って行ってあげるか。
「分かった分かった。送って行ってやるよ。」
「やったー! ふふふ、君ならそう言ってくれると信じていたよ! さぁ、紳士君! 2人で夜の街に繰り出そうか!」
コナーはハイテンションでそう言ったが、笑顔が少し引き攣っている。やはりキツイのだろうか。
【治癒】
俺はコナーの全身に治癒をかける。これで少しでも良くなってくれたら良いだろう。流石に少し可哀想だからな。
「あっ…………ふふ、優しいね、晴輝君は。」
コナーは俺に向かって優しく微笑んだ。
「いや、俺は優しくなんか…………。」
「あー、もうそろそろ出なくちゃね。行こっか!」
「…………あぁ。」
俺たちは家から出る。
夜の冷たい風が俺達2人に吹いた。
夜道を人と歩くなんて久しぶりの経験だ。
いや、経験なんて無かったかもしれない。
俺は静かな夜の雰囲気に身を任せホテル街へと歩いていくのであった。
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